本屋しゃんのほーむぺーじ

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\本で楽しむ「生命の庭」展−山口啓介『後むきに前に歩く』(BlueSheap)/

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展覧会を楽しんだ後に、ミュージアムショップで図録やアーティストの関連書を買って、さらにお家で楽しむ! という方も多いのでは?

本屋しゃんもそのひとり。
展覧会会場にいる際は、全身で作品を感じ取ることと、自分がその作品から何を考えるのか、を大切にするようにしています。そこで、湧いた疑問や好奇心、この作品の時代背景をもっと知りたい、アーティストのことをもっと知りたいという気持ちが自然と沸き起こり、さらに自然とミュージアムショップに足が向き、図録やら、関連書やらを購入し、帰路の電車の中で早速読みはじめ、展覧会の空気をまとったままお家に帰るのです。お家でも買った本を読み読み、展覧会会場にいる時とは違う角度から、展覧会そのものや、作品、アーティストに想いを巡らせます。

本屋しゃんがカセットプラントの制作アシスタントを務めた「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」展も、作家さんの関連書籍が販売されていました。今回の展覧会は、どの作家さんの作品からも美しい言葉が聞こえてくるかのようで、ますます展示を楽しんだ後には、それぞれの作家さんの言葉に実際に触れてみたいという気持ちになりました。

山口啓介さんの『後ろむきに前に歩く』(BlueSheap)

2019年6月8日〜9月4日に広島現代美術館で開催された山口啓介さんの個展「後ろむきに前に歩く」の公式図録として刊行された一冊です。

展覧会の図録というと大きくて、ちょっと重たいイメージを持っている方も多いかもしれません。展覧会の感動と学びを持ち帰るならこれくらいの重さはなんのその!なのですが、本書はハンディサイズでソフトカバーという仕様。
中を開くと、図版に加えて、山口さんの言葉やインタビュー、さらにアトリエの写真が掲載されています。どれも主張しすぎず、美しく調和され、なんてあったかい本だろうと思いました。「あ、この本。そばに置いておきたい」という気持ちになりました。

本書の楽しみ方

本書は、展覧会図録として出品作品の写真や情報を掲載するだけでなく、山口啓介自身の文章や言葉を凝縮して収録し、アトリエの様子を写真で紹介するなど、行きつ戻りつ想像と思索を広げるための構成としています。いつも傍に置いて、何気なく手に取って、気になるところから見(読み)始めるような、自由な楽しみ方を見つけていただければ幸いです。

『後むきに前に歩く』より

展覧会図録であり、エッセイであり、言葉集であり、哲学書のようでもあり、写真集のようでもある。まさに、本書の楽しみ方は無限大。山口さんの幼少期からのお話や、代表作制作の舞台裏も書かれていて、作品というものは、ある時間一点を切り取ってできているものではない、アーティストのこれまでの人生、生命活動が重なり合って、それこそ行きつ戻りつ、生まれていることがよくわかる。

そして、アトリエの写真が息をのむほど透きとおっていて、色っぽい。撮影したのは、東欧の少女のポートレートなどで注目される写真家の山元彩香さん。なかなかアーティストのアトリエを見ることはできないから、除くことができるだけでもドキドキしてしまうのに、山本さんの写真からはアトリエに漂う制作現場のピリッとした空気、作品が生み出される熱量、山口さんの気配までも感じ取ることができる。

今日はどのページを読もうかな。
今夜はどの作品と対峙しようかな。

本屋しゃんは、この本は本棚にしまわないで、机の上にぽんっと置いて、パラパラっとめくって楽しんでいます。

「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」展に出品されている「花の心臓」、「原植物」シリーズや「震災後ノート」のきっかけにも触れることができるので、本展をより深く楽しむためにも良い伴走者となると思う。

作品制作をお手伝いさせていただいている間も、山口さんは「震災後ノート」を毎日毎日書いていた。展示作業で連日帰りは遅いしお疲れなのに、すごいなあと思っていたのだけれど、本書の中に、そのすごさの土台になる言葉に出会えた気がする。

現実の世界には自分自身も含めて静止しているものはほとんどなく、世界はふつう、絶え間ない運動のなかにある。絵を描くというのは、その動いている世界のある一断面を切り取って、世界を“止めてしまう”、実は自然に反して、かなり過激な行為だ(「絵を見ること、いのちを考える、粒子と稜線」2005年より)。

『後むきに前に歩く』(BlueSheap)98頁より

さらに、山口さんはこうお話しされています。

芸術家に何ができるのかという問題を問われると、明快な答えは出せないのですが、少なくともやってきたことを自分の中で忘れずに記憶し、それによって自分が身を投じている文化は何なのかということを考えていきたいと、ずっと思っています。

(中略)

残すということが次の時代の人にプラスの影響を与えるだろうということを信じたいと思います。なぜなら過去から残されてきたものを見ていて、これがもし残っていなかったらどうなっていただろう、と思うことが自分自身に起こっているからです。やはり残すことには必要性があるのではないかという気がします。

『後むきに前に歩く』(BlueSheap) 「山口啓介インタビュー/2019年2月」196頁より

絶え間なく運動を続けるこの世界を記憶して刻んでいくこと、残すこと。ヒューマンスケールで残すこと。ここに山口さんが作品を製作し続ける根っこがあるんだなと。だって、わたしたちはいつだって過去しか見ることができない。「後むき」にしか歩くことができない。だけど、山口さんの作品に対峙すると「後ろむきに前に歩く」ことができる。

展覧会情報

生命の庭 −8人の現代作家が見つけた小宇宙
2020/10/17(土)– 2021/1/12(火)
処:東京都庭園美術館

https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/201017-210112_GardenOfLife.html

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