BLOG RECCOMEND 展覧会

全方位に詩を感じる:「詩のありかに触れるささやかな試み」@日本近代文学館~2020年2月22日

投稿日:2020-02-01 更新日:

ふと、リビングにいけていたチューリップに目をむけると、ぱらぱらと花びらが落ちてきた。昨日まで、元気だったのに。
はかなさを感じながら、むしゃむしゃといつも通りバナナを頬張る。
むしゃむしゃと、である。この咀嚼は生きている証ね。

今日も、下北沢に行く。間借りして「本屋しゃんの本屋さん」を開いている、BOOK SHOP TRAVELLERに納品に行くため。「本屋しゃんの本屋さん」は一箱大の小さなほんやさんだけど、やはり「棚」は手入れをしないと死んでしまう。よくよく面倒をみることが大切だ。

幸いなことに、私が今住んでいる北千住から下北沢は、千代田線―小田急線の直通に乗れば、1本で行けてしまう。少々時間はかかるけど、好アクセスと言えるかもしれないね。無事納品をした後、井の頭線に乗り込み「駒場東大前」を目指す。わたしが上京してはじめ住んだ町は、吉祥寺だった。だから、通勤でもとってもお世話になったし、わたしの生活に寄り添った路線だったから、今でも、乗るとなんだか安心する。「駒場東大前」は急行が止まらない。駅名の通り、目の前は東大。

さて、時間がありません。駅からぴょこぴょこ小走りです。納品した分、ひいてきた本もあり、両手には本がいっぱい。本好きとしては「両手に本」なんて幸せなシチュエーションですが、小走りするのには向きません。ぴょこぴょこ、なんとか走ります。

目的地は「日本近代文学館」。
目的は冬季企画展「詩のありかに触れるささやかな試み」。
閉館は夕方4時30分。最終入館は4時。現在、3時50分。
ね、小走りしなくちゃでしょ。

なんとか、最終入館時間に間に合って、展示室に向かう。しかし、息は切れ切れ。ギリギリガール。

まず、展示室内の入口においてある白い「詩集」を、1冊手に取り進みま
す。詩集を片手に巡る展覧会。

展示は大きく「橋」「海」「道」「空」の4つのキーワードにで別れて、詩人の顔と、プロフィールと、詩が掲載されている本が展示してある。そこに「詩集◯◯ページ」って掲示してあるから、入口で手に取った詩集の、そのページを開くの。すると、その詩人が書いた詩が、そこには記されているのです。

顔を見て、
生い立ちに触れ、
本を開いて
詩を読む。


こんな顔の人が書いているんだ。
こんな生い立ちの人から、こんな詩が生まれるのか。

ただ、詩集を開き、紙の上の言葉と間に向き合うだけでなく、詩人のパーソナリティと個人史が重ね合わさって、詩が立ちあがってくる。すると、その詩が誕生した瞬間を感じられるような気さえしてきた。

パネルを見て、詩集を開き詩に触れるを繰り返していたら、詩を私が読んでいるんだけど、なんだか詩人が「語ってきている」ような感覚に陥った。
耳をすましているような、そんな気持ち。

さらに、展示を進むと、実際に詩人たちの朗読の音声が流れていた。
超貴重。まさに、ここでは声に耳をすます。ますます詩が体にこびりついてくる。

詩を読み、耳を澄まし、語りかけられ・・・全方位から詩を感じられるすばらしい展示でした。詩集を片手にめぐる展覧会。ぜひ体感していただきたいなあ。


この展示方法、体験はね、詩が好きな方、文学館という空間が好きな方はもちろんだけど、よく美術館に行くよ!インスタレーション作品が好きだよ!という方にもきっと響く展示!だと思った。文学とアートファンを展示方法によって繋げちゃう展示だと思う。

文学の展示って、パネル展示と原稿の展示が中心だと思うのだけど、これは、もう1回言うけど、全方位から詩を体感できる、文学の展示方法を考えるうえでも大きな1歩だ!!って、強く感じ

と、あつく語っている私ですが、この展示、明日で終わっちゃうんです!2月22日(土)で終わっちゃうのです。だけど、ぜひ、みなさんに見ていただきたくて、今こうして、書いています。すみません、やっぱりギリギリガール。

詩に全身を覆われて帰宅したら、チューリップの花びらがまた1枚落ちていた。春まだかなあって思ってるけど、春もすぐ終わっちゃうのかなあ。

今日は、詩を落とさないように、そっとお風呂に入ろう。


《関連情報》
冬季展示「詩のありかに触れるささやかな試み」
場所:日本近代文学館
期間:開催中〜2020年2月22日(土)
最寄駅:井の頭線・駒場東大前 徒歩7分
https://www.bungakukan.or.jp/cat-exhibition/cat-exh_current/12240/

-BLOG, RECCOMEND, 展覧会

執筆者:

関連記事

\本屋しゃんの旅-おのおの倉敷の太陽に集まって。夕方のアンデルセン広場と早朝の美観地区(勝手に選書付)/

倉敷に着いたのは夕刻。尾道から倉敷は山陽本線で1時間ちょっと。学生さんやお仕事帰りの方たちに混ざって電車に揺られる。スタバの新作のなんちゃらフラペチーノがおいしいとか、テストの点数が散々だったとか、部 …

\アーティストを支える仕事:山口啓介「カセットプラント」/

本屋しゃんはどんなお仕事をしているの?とよく聞いていただけるのですが、「本とアート」を繋げ、溶け合わせ、この世界って楽しんだ!!と感じていただけるきっかけを作りたいになりたいという想いを軸に活動してい …

長嶋祐成 作品展「bloom」@HATOBA・西荻窪~2022.7.16~7.24

久しぶりのハンサム食堂。アジアの雑踏を感じる小路を歩いていると、いや迷い込んでいると、思い出のお店に行きついた。上京してはじめて住んだ町は吉祥寺。吉祥寺だけでなく、東京の西側の雰囲気が好きで、近隣の町 …

\小さいくて広い世界に漂って:吉田 和夏|beyond the night@GALLERY MoMo Projects 六本木〜2021/4/24/

夜、なかなか眠ることができない。ドキドキ、そわそわしてしまう。心配事が多いのか、何なのか。そのくせ、朝早く起きてしまう。空が白ける前に。早起きは苦じゃないし、夜は嫌いじゃない。だけど、自分の眠れなさと …

\本屋しゃんおすすめ展覧会-大山エンリコイサム 個展「SPECULA」〜2021年11月20日@銀座・RICOH ART GALLERY &「我に触れよ(Tangite me):コロナ時代に修復を考える」展~2021年12月3日@慶應義塾大学三田キャンパス/

とある11月の土曜日。久しぶりに銀座の街を歩いた。数年通った街だから景色も空気も懐かしい。ちょっと前は閑散としてしまっていたけれど、この日は人も多く、華やかな銀座が戻ってきていた。思い思いにおしゃれを …