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\本屋しゃんの旅 −「康夏奈/原口典之 追悼展」@ART BASE百島 in 広島〜12/13/

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これまでにも広島へは何度か旅をしました。
その目的のほとんどは、広島市現代美術館。
秋山祐徳太子+しりあがり寿 ブリキの方舟松江泰治 地名事典|gazetteer山口啓介 後ろむきに前に歩く。どれもわたしの心に強くのこっている展覧会で、ここの美術館の常設展も好き。

今回の広島の目的地は「百島」。
「ももしま」と読みます。昔、桃の木が多かったから「桃」島とされていたらしいけど、いつの日か、縁起が良いとのことで「百」島に改められたのだとか。
いずれにせよ、音がかわいい。ももしま。
はじめての訪問。
尾道の港からフェリーで約45分、高速船で25分ほどのところにある島です。

百島は瀬戸内海中部に浮かぶ芸予諸島の島。山陽道筋のほぼ中央に位置する。芸予諸島内の北方の天辺に浮かび、尾道港から鞆の浦の海道中間にある。中国・四国地方を全体に見渡すと、百島はほぼ中央に位置する。

wikipediaより

この百島に、アーティスト柳幸典さんがディレクターを務めるアートセンターでありアートプロジェクトである「ART BASE 百島」があります。島内の閉校になった旧中学校の校舎や映画館などを活用して、展示やワークショップなどなどを精力的に開催されているのですが、ここで、康夏奈さんの追悼展が開催されていることを知り、よし、旅に出ようと、決意したわけです。


東京都庭園美術館に続き、稲村ヶ崎に続き、康夏奈さんの軌跡をたどる旅です。

島について背伸びをするとなんて気持ちいいのでしょう。
時間の流れもなんだか変わったような気がします。
お、いいぞいいぞ、体も心も喜んでるぞ。
目的地までの、足は「足」!!

てくてくと、こんな道しるべをたよりに進みます。
道中にはみかんの木がいっぱい!
太陽の光をいっぱいに受けてツヤツヤ光っています。
ん〜〜おいしいんだろうな。



グーグルマップとかに頼って旅したくないなあと思っていたから、道しるべを注意深く見ていたつもりなのに……迷子です笑。
まあ、もともと方向音痴なので仕方ありません。



来た道を戻り、島民の方に道を教えていただいたりしながら、ついたぞーーー!
わたし以外、訪問者はいない様子。


今は、完全予約制なんだけど、到着するなり、「中村さんですよね?お待ちしておりました」と、あたたかく出迎えてくれました。


館内というか、校内にはディレクターの柳さんをはじめとするアーティストの作品が多数常設展示されています。ひとりじめ、いやん、贅沢。

柳幸典《バンザイ・コーナー》1991/プスティック人形、鏡
3階の柳幸典  奥《Mao(ET67686863)》2014、 手前《救難信号/Distress Signal》1996


夏奈さんは、ART BASE 百島の開館記念展の際に、カフェスペースに常設作品として壁画「十一眼レフちんかかと予期せぬハプニング」を制作されたの。今回の追悼展では、壁画制作時のアーカイヴ映像や写真、そしてカフェの壁の中にひっそりとしまいこまれていた小作品が展示されていました。

「体験」を描く夏奈さんは、もちろん、百島を歩き、海に潜り、島とその周辺の自然を全身に浴びて、その体験を通じて感じ取った世界を壁画に描かれました。そこで出会ったハプニングもそのまんま(笑)何がハプニングだったのかは、ぜひ、百島でお確かめあれ。自然に触れた時って、美しい!キレイ!というような言葉を並べなくてはいけない気持ちになるけれど、夏奈さんはそこで出会った、目の当たりにしたことをオブラートに包んだり、キレイな部分だけ汲み取ったりしないんだ。体験を通じて、ぐっと来た部分を、良い意味で「容赦なく」コラージュしていくんだよね。その強さと潔さがかっこいい。そしてユーモラス。

表層だけ見てるんじゃないの?
地球って、もっと深いんだぞ!!
と言われてるみたい。

もっと潜って潜って、そうすると、見えないものたちに感動したり、人間の仕業に反省したり……いろんな角度から生きることを考えさせられるぞ!って。

康夏奈《十一眼レフちんかかと予期せぬハプニング》2012-13/クレヨン、オイルパステル、水彩絵具

本展では、同じくART BASE 百島のオープン時の記念展で常設作品を制作された、原口典之さんの追悼展でもあります。夏奈さん、原口さんと、オープニングを飾ったお2人がもうこの世界にいないのか……と思うとさみしいのですが、お2人の写真や動画を拝見すると、とても楽しそうに写っているので、ああ、さみしい以上に、ありがとうございましたという気持ちになりました。

原口さんの常設作品は「オイルプール」。常設としては世界に2つしか現存しないそうです。オイルプールは、原口さんが、77年のドクメンタに日本人作家としてはじめて選ばれた際に発表した、廃油を満たした巨大な鉄のプールの作品。

原口典之《オイルプール・シリーズ》2012/鉄、オイル



しんとした会場に、真っ黒いプールがひとつ。危うく入ってしまったら、二度と出てこれなくなりそうな底なし沼のように見えた。覗き込むと、神妙な面持ちの自分の顔と、外の景色が映り込む。人間と社会、そして自然3者が溶け合い、かつ反発しているように見えました。原口さんの常設作品《布袋とロープの関係》は、GOEMON HOUSEにもありますよ。

柳さんの巨大なインスタレーションも。
1人でこの空間にいるのはなんだか怖さすら感じたよ。突然動き出したらどうしよ〜〜〜、次の瞬間私が、この中に閉じ込められてたらどうしよ〜〜〜って。妄想が過ぎます笑。

柳幸典《ワンダリング・ミッキー》1990/ドラム缶、車、スチール・メッシュ

帰りにはちゃっかり、みかんをいただく。
だって、道中の、おいしそ〜〜なみかんを見てたら、そりゃあ食べてみたいもの。うれしい贈り物。

ART BASEから歩くこと15分ほど。「GOEMON HOUSE」に到着です。こちらは古民家を再利用した施設。名前の通り、でっかい五右衛門風呂がありますよ。


ここにも、原口さんの作品が常設されているとともに、現在は、榎忠「LSDF 020」展 が開催中。本展は、榎さんがCOVID-19を通じて、改めて気づかれたというご自身の信念「Life Self Defense Force=LSDF 自分の生活は自分で守る」がものすごいパワーで現れていました。

我々にはそれぞれ等しく自由と想像が与えられています。
僕はこれまで自分の生き方や作品についてあまり思索しない人間でした。ところが今年、新型コロナウイルスという妖怪があっという間に世界中にはびこり、これまでの僕のやってきた芸術について、思っても考えた事もなかったことを反省する。外出自粛という「時間」が体中を痛めるほどに生まれました。

今年の7月頃、やっと百島へ作品を設営しに行くことになりました。神戸から尾道、そしてフェリー船で瀬戸内海にある美しい島へ。3日間かけて作品が思った以上に美しく出来ました。
そして、島の人々やART BASEの皆様と話していると気づいたのです。
「この島こそLSDF島だ」と。
この自由な島(世界)を本土の国家権力に汚されないよう(Liberty C2H2)と島の皆様で守っていこう。なんといってもこの島には警察がいないのだ。

みんなで守っていくしかないのです。Arttist of living!

2020年 榎忠

榎忠「LSDF 020」展 ステイトメントより

百島には、道祖神がたくさん祀られていた。
全てにしっかりと手入れがいきとどき、お供えがされていた。
わたしも見つけるたびに、そっと手を合わせた。



自分の生活は自分で守る。





あら、大変。帰りの船の時間が近づいています。
港に向かう。
ついた時より、風が冷たいなあ。

帰りの船を待っていると、そんなところで待っていたら海風で風邪引いちゃうよと、島民のおばあちゃんに声をかけていただき、避難。

帰りの船も、行きの船と同じ船長さんでした。
ちょっとシャイでぶっきらぼうだけど、本当は優しいんでしょと思わせるおじさん。



本当は、わたしは旅をしにきちゃいけなかったのかも知れない。
ぐっと我慢しなくちゃいけなかったのかも知れない。
だけど、恐れずにいえば、このタイミングで百島を訪れることができて、本当によかった。アーティストのみなさんがこの島で体験し、感じられたことを、生々しく体験できたことは、わたしの体を解放させたし、実際に体験することがいかに、自分の活力に繋がっているのかをしみじみと感じた。細胞がもぞもぞ動くのがわかった。



帰りは早く感じるのが常だけど、船でもやっぱりそうだった。
あっという間に、尾道港よ。


すっかり日が暮れて、
ん、ちょっとお腹すいた。
夕ご飯は何食べようかな。

ART BASEから百島を一望





追伸
いただいたみかんが、やっぱりめっちゃおいしかった!!!

展覧会情報

康夏奈/原口典之 追悼展
開催中〜2020年12月13日
開館日:土・日・月
時 間:10時〜17時(完全予約制、入場は閉館30分前まで)
観覧料:1500円(3箇所全て観覧可能)
@ART BASE 百島/旧百島中学校
http://www.artbasemomoshima.jp/exhibition/tsuito.html

榎忠「LSDF 020」展
開催中〜12月13日
開館日:土・日・月
時 間:10時〜17時(完全予約制、入場は閉館30分前まで)
@ART BASE 百島/GOEMON HOUSE」
http://www.artbasemomoshima.jp/exhibition/lsdf020.html

※予約をしたら全ての施設に入れるので、のんびり島巡りを楽しんでくさい^^

関連記事

展覧会は終了しています。


ART BASE 百島がオープンした際の様子が良くわかる記事に出会いました。
 


artscape キュレーターズノート
「ART BASE 百島」オープン
角奈緒子(広島市現代美術館)

https://artscape.jp/report/curator/10066460_1634.html

関連展覧会情報

康夏奈さんが参加されています。

生命の庭 −8人の現代作家が見つけた小宇宙
開催中– 2021/1/12(火)
処:東京都庭園美術館

https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/201017-210112_GardenOfLife.html


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