青森で開催中の江口寿史さんの展覧会「彼女」へ。
本展では400点に及ぶ「彼女」たちの絵が集結しています。
監修は、美術評論家の楠見清さん。
青森はそれはそれはいいお天気でした。
青空にはためく「彼女」フラッグ。
かわいさが増して見えちゃうのは、なぜ。
江口さんの「彼女」たちの時間と場面の切り取り方に感動しました。
パッとみた時の「かわいーよーー」の深淵に潜む、彼女たちの優しさ、切なさ、強さ……がたちこめてくる。目があうたびにドキッとする。ため息が耳を撫でる。深い深い一瞬が切り取られていました。
さらにわたしが普段目にしているのは、漫画やイラストレーションとして、いわゆる「完成」された江口さんの作品。本展では、そんなわたしの目に届く前のスケッチやドローイングが展示されていて、江口さんの絵を描く軌跡を拝見することができてよかったです。深い深い一瞬はどのように描かれているのか、江口さんはどのようにその瞬間をキャッチしているのか、そんな作品のはじまりと道中に出会うことで、完成された作品が不思議と立体感を増すとともに、江口さんの美学がより伝わってくるのです。
とある尊敬する人生の先輩が「ぼくはこの漫画で当時のカルチャーを知って大人の階段をのぼったんだ」と『ストップ!!ひばりくん!!』を教えてくれました。未読だったので、展覧会場のショップで買いました。
帰りの新幹線の中で、早速、読みはじめました。
まさか、漫画の中で忌野清志郎に出会えるとは、夢に思わず驚きです(本屋しゃんはキヨシローさんが大好きです)。ひばりくんがキヨシローに扮するシーンがあるのですよ。キヨシローだけではありません。たくさん散りばめられた、ファッションや音楽……「当時」の雰囲気が鮮やかに伝わってきました。わたしは、いわゆるその「世代」ではないのだけれど、なるほど、こんな感じだったんだなあって。いやはや、ひばりくんは、ドキドキしちゃう教科書ですね。
展覧会では江口さんゆかりの吉祥寺もたくさん出てきた。
吉祥寺は、わたしが上京してはじめて住んだ街。
なんだか、懐かしくて嬉しかった。
彼女。
得体の知れない、甘酸っぱさ。
彼女。
誰の彼女であって、誰の彼女でもない。
展覧会情報
世界の誰にも描けない君の絵を描いている
江口寿史イラストレーション展 彼女
会期:2021年3月13日(土)~5月9日(日)午前10時~午後6時
※会期中無休
会場:東奥日報新町ビル3階New’sホール(青森市新町2の2の11)
※詳細はWEBページをご覧ください
https://www.toonippo.co.jp/list/event/eguchi