ARTIST BLOG RECCOMEND メディア掲載・出演 古賀学 展覧会

\ここはどこ、わたしは誰。って、心地よく騙されてー古賀学 個展「JCT/ジャンクション」〜2021/7/17/

投稿日:2021-07-17 更新日:

水の中を漂うニーソを履いた女の子たち。 
不思議なフェティシズムがつまった作品は、 美術家・古賀学さんの代表作「水中ニーソ」。

古賀学さんはガンダムのロゴなどを手がけるデザイナーでもある一方、2002年から人物の水中撮影をスタート。「水中ニーソ」は2012年に誕生し、写真集シリーズの刊行、国内外で展示を続けています。


本屋しゃんと水中ニーソとのファーストコンタクトは、写真集シリーズ『月刊 水中ニーソ』という本、そして写真作品という形、そう、平面作品として出会いました。

しかし、水中ニーソはもはや「これは本です」「これは写真です」「これは平面作品です」と、ひとつの枠に収まらなくなってきました。時間、空間、縮尺が再構成され、 水中ニーソは新しい道を切りひらいていっています。 

本屋しゃんは、水中ニーソがどんどん形を変えてくるのがとっても楽しい。

2019年、わたしが銀座 蔦屋書店で担当させていただいた古賀さんの個展「水中キュビスム」で発表された「cube」シリーズは新たな道のはじめの一歩でありながら、到達点でもあったように感じています。立方体に切り出した水の塊のように見える「cube」に漂う女の子。 立体作品をブツ撮りしたように見えますが、実は平面作品ですが、cubeに閉じ込められた女の子の様子は、まさにキュビズムです。そして、2020年に開催された個展「Buoyancy | 浮力」で発表された、バスタブに潜る女の子を1/5で再現した「Izumi」シリーズ。はじめモニター越しに拝見した時は、空間が把握できずに、本当に女の子がバスタブに潜っているところの映像作品だと思ってしまっていたのですが、いざ、作品に対峙すると、古賀さんが作られた小さいバスタブに女の子の映像モニターがはめ込まれている立体作品ではないですか!いや、これを立体作品ですと言い切ってしまうのも違うと思うのですが、騙されましたねえ。虚構なのか現実なのか。

そして2021年。個展「JCT/ジャンクション」が開催中です。本展では、「Izumi」に続く立体作品と新作の写真作品が発表されています。

本展の感想、メッセージを動画でお話しさせていただきました(赤面)。

古賀さんの作品は、ひとつひとつを切り取ってももちろんおもしろいのですが、上記のようにその変遷、流れを追って見るとさらにおもしろさが増すと感じます。本屋しゃんは、都度、「今度はそーきたかーーーー」と感動でジタバタしています。
古賀さんの作品と対峙すると、自分がどの時間に、どの空間に生きているのかわからなくなって、別世界にきてしまったような感覚に陥ります。平面かと思いきや立体、大きいのかと思ったら小さい……騙されまくりです。心地よい騙しです。
そして、延々と見ていられる。見入ってしまう。特に「Izumi」シリーズは、どんどんどんどん水の中に引き込まれていくかのようで、もはやこの没入かんは無の境地。この感覚は、何かに近い……と考えた結果、動画でお話しした「枯山水」というワードが出てきたのですねえ。枯山水を見ている時の吸い込まれる感覚と、極楽浄土に行けてしまいそうなトリップ感に似ている、と。枯山水は、実際に水を使わずに、石や砂で山水を表す見立ての庭ですよね。そして、禅の思想に基づき、それは仏教的世界観、宇宙観をも表現している。古賀さんの作品は、時間と空間が縮尺を変えて凝縮されているかのようで、それはまさに庭に宇宙を凝縮させた枯山水みたい。

さらに、映像だけど、手触りすら感じてしまう水面は、異界への入り口に見えてくるのも、枯山水を彷彿したきっかけなのかな。石でも砂でも水を感じると、あちら側を感じる。古賀さんが京都の浄土宗龍岸寺で開催された「南無阿弥陀佛 極楽浄土の水中ニーソ」でも感じました。水という境界線の不思議さ。




わたしのメッセージ動画だけでなく、錚々たる面々が本展、いや古賀さんの作品、活動にメッセージを寄せられています!!それぞれの立場、それぞれの視点でどのように古賀さんの作品を見ているのかがわかっておもしろいです。
その分、古賀さんの作品は、さまざまな文脈や層が絡み合い、かさなりあっている!
だからこそ、楽しくておもしろいということに気付かされます。

「JCT/ジャンクション」は、モニター越しに見て、現地に足を運んでと、ダブルで楽しむとなお楽しいと思います。
ぜひ〜。

展覧会情報

古賀 学 Manabu Koga
JCT / ジャンクション

会期:2021年6月25日〜7月17日
会場:CLEAR GALLERY TOKYO(〒106-0032 東京都港区六本木7-18-8 岸田ビル 2F)

※詳細はギャラリーのWEBサイトをご覧ください

https://cleargallerytokyo.com/manabu-koga-2021




-ARTIST, BLOG, RECCOMEND, メディア掲載・出演, 古賀学, 展覧会
-, , , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【レポート】「茶屋しゃんりん」夏 第一夜:桂九ノ一@アーリーバード・アクロス(駒込) ー2024年7月22日(月)

「今日7月18日(木)、気象庁は関東甲信地方・東海地方の梅雨明けを発表しました。いずれも平年より1日早い梅雨明けです」「茶屋しゃんりん 夏」の開催日を目前に、ニュースはそう伝えた。まさに「夏」の会にな …

\本屋しゃんの旅ー招き猫に招かれて「風のたね」が飛んできた/

帆雨亭から「おのみち小物招き猫工房」さんまではそんなに遠くなかった。坂道に息を切らしながらも、普段は味わうことのできない、美しい疲労感。そして、解放感。お店の入り口をひょっこり覗くと、元気のいいお姉さ …

【レポート】大道芸術館 落語会
笑福亭羽光 墨東「艶」噺ー2023年4月22日(土)

ピンク映画のチラシがびっしりとに敷かれたカウンターで、ひとりちびちびと瓶ビール「赤星」を飲む。生ビールをぐびぐびと飲むのは大好きだけど、最近、瓶ビールをゆっくり楽しむのもいいものだなと思うようになって …

長嶋祐成 作品展「bloom」@HATOBA・西荻窪~2022.7.16~7.24

久しぶりのハンサム食堂。アジアの雑踏を感じる小路を歩いていると、いや迷い込んでいると、思い出のお店に行きついた。上京してはじめて住んだ町は吉祥寺。吉祥寺だけでなく、東京の西側の雰囲気が好きで、近隣の町 …

\ご紹介いただきました:日本で唯一の演芸誌『東京かわら版』2023年1月 新春特大号ーZINE『笑福亭羽光 越後道中記』 /

日本で唯一の演芸専門誌『東京かわら版』2023年1月 新春特大号の「かわら版いろはにほへと」の演芸BOOKコーナーにて、拙書『笑福亭羽光 越後道中記』をご紹介いただきました。錚々たる演芸書籍とともに掲 …