現在、千葉市美術館では「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊覧」が2021年12月19日まで開催中。千葉市美術館のコレクションから、福田さん自らが選ばれた江戸から明治時代の美術をきっかけに、新たに創作された作品を中心に展示されています。福田さんと千葉市美術館のコラボレーションです!
むむむ。次の「ジャポニスム―世界を魅了した浮世絵」展が2022年1月12日開幕なので、福田美蘭さんの個展が2021年最後の千葉市美術館の企画展ですね。嗚呼、もう「今年最後」なんていう言葉が出てくるような時期なのですね。いやいやいや、月日が経つのは早いですね、なんて常套文句をかかげてセンチメンタルになっていてはいけませんね。2021年も最後まで楽しまないとです。
「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊覧」 は、まさにユーモアたっぷりで、楽しめる展覧会。さらに、ここ数年の日本、ひいては世界の大変な状況を俯瞰して考えることができるきっかけがちりばめられているので、年末に向けての時期に体験することで、みなさんにとっての振り返りや、時代との対話をする良い機会につながると思います。
本屋しゃんは、このたびも千葉市美術館ミュージアムショップのBATICAでの本展に合わせたブックフェアの選書をしました。千葉市美術館がリニューアルオープンしてから毎回、各展覧会に寄り添った選書をさせていただけることは光栄です。お客様にどうやったら「本を通じてさらに展覧会を楽しんでいただけるだろうか」、毎回その想いを土台に本を選んでいます。
まずは、今回も図録がかっこいいので、ぜひ手に取っていただきたいです。
福田さんの作品集などなどは、現在気軽に入手できるものがなかなかないので図録を逃すことなかれ!です。
そして、『ディズニー美術』(KUNST ARZT)も知っていただけたら嬉しいです。
本書は、2015年4月28日(火)〜5月10日(日)に京都のギャラリー KUNST ARZTで開催された、現代美術家 岡本光博さんがキュレーションの展覧会「ディズニー美術」の図録。「わたしたちは日々生活を送る中で、社会から発信されるイメージを一方的に受け取り、消費し続けることしかできないのか」という問題を発端に「アートの力を試す展覧会」として開催されました。その背景には、「アートこそが唯一社会にイメージをつきかえすことができる」という本展企画者の岡本光博さんの強い想いがあります。決して、特定の法人を批判する意図をはらんではいません。
福田美蘭さんも本展参加作家のおひとりです。「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊覧」にも出品されている《誰が袖図》《ぬりえ》は 「ディズニー美術」 に出品された作品です。きっと、本作へのが深まるのではないでしょうか。
そして、忘れていけないのが「千葉市美術館のコレクション」を活用した意欲的な展覧会であるということ。
コレクションで企画展を企画するのみならず、現代美術家とのコラボレーションが実現するというのはなかなか他に例がなく、おもしろく、美術館のコレクションの活用法、さらには美術館のこれからの可能性を作り、考える素晴らしい機会だと思います。まさに「千葉市美術館」でしか実現できない展覧会、ここだからこそ実現できた展覧会ですね。
そこで『tattva』を選書しました。島根県立石見美術館、青森県立美術館、静岡県立美術館の3人の学芸員が結成した視覚文化研究チーム「トリメガ研究所」が連載中。美術館のコレクションについても3人で熱く語り合われています。「コレクションの意義を見直す」ことを軸のひとつに掲げている「福田美蘭展」とともに、本書を通じて美術館のコレクションの意義や可能性について考えるきっかけにつながることを願います。
本展の作品のキャプションはほぼ福田美蘭さんご本人によるもの。展覧会会場に一歩足を踏み入れると、作品はもちろんですが、キャプションを読むと、どれだけ福田さんが千葉市美術館のコレクションと向き合って、丁寧にリサーチをされたかがビシバシと伝わってきて、本屋しゃんは一鑑賞者として鳥肌が立ちました。福田さんにインスピレーションを与えたコレクション作品たちも、コレクション展示室に展示してある時とは違った表情に見えてきました。福田さんの作品と言葉を通じて改めて鑑賞することで 現代と接続されて 、過去のものではなく、当時の今を映し出しているとても新鮮な作品として触れることができました。福田さんが浮世絵や明治時代の絵画の深淵を掘り出してくれているのですね。
「千葉市美術館ニュース C’n」(館内でGETできます)で、福田さんが以下のようにインタビューにこたえられています。
このコラボレーションが実現したのは、「千葉市美術館だから」というところが大きいです。歴代の館長や学芸員が気持ちを込めて収集した作品群は、ただのコレクションとは違います。これまでも、千葉市美術館の学芸員のみなさんが書かれた文章を読んでいましたし、日本美術のことを調べれば歴代の館長が出てきますし、とても心強かった。コレクションそのものも、日本美術独特の楽しさがあるものばかりです。ですから、過去の美術を理解する面白さで、こちらのイマジネーションも力強く湧いてきて、特別に親近感のあるコラボレーションになりましたね。
千葉市美術館ニュース C’n vol.100 「作家・福田美蘭さんインタビュー」より
嬉しいですね。千葉市美術館は、辻 惟雄さん、小林 忠さん、河合 正朝さんが歴代館長で、現在は山梨絵美子さんが館長です。確かに福田さんがおっしゃる通り、日本美術を学んでいたら絶対に出会いますよね。千葉市美術館歴代館長の著書が日本美術の入り口になったという方も多いのではないでしょうか。今回のフェアでは、歴代館長の著書も揃えました。といいますか、歴代館長の著書は常にBATICAにあるようにしていますので、それぞれの著書からさらに千葉市美術館の魅力を感じていただけたら幸いです。
ほかにも、福田さんのユーモアや遊び心を深堀するべく、遊びや笑いに関する本(本屋しゃんは展示室でニヤニヤニヤニヤしてました)、さらにシミュラークルについて、まねぶことについて考えることができる本などを集めました。
千葉市美術館でしか体験することができない展覧会。
本たちが、みなさんの体験をより楽しいものになるきっかけになることを願っています。
展覧会情報
福田美蘭展 千葉市美コレクション遊覧
会期:2021年10月2日(土)ー12月19日(日)
会場:千葉市美術館
※詳細は美術館のWEBページをご覧ください
https://www.ccma-net.jp/exhibitions/special/21-10-2-12-19/