BLOG

変な歌

投稿日:2022-04-03 更新日:

花冷えですね。
花散らしの雨ですね。

朝、ラジオをつけるとパーソナリティーが、今日の寒さと天気について話していた。
白湯をふーふーと冷まして一口すする。ふと、雨に濡れながら花びらがひらひらと散っていく情景が頭に思い浮かぶ。儚さに、寂しさを感じながらも、こんな情景を想起させる日本語の美しさにはっと気づいて、なんだか、寒いのも、雨なのも、いいかもしれないと思った。

変な歌。
そう、わたしも、彼の歌をはじめて聴いた時そう思った。
記憶が曖昧だけど、確かその缶コーヒーのCMでは「変な歌」って、言うんだ。黒木瞳さんが忌野清志郎さんの歌に対して。愛をこめて「変な歌」って、ね。

わたしは、だんだんとその変な歌にのめりこんでいって、いつしかなくてはならない歌になった。変だけど。
まっすぐな日本語、素直な日本語、そのくせ恥ずかしがりやで等身大。見た目は派手だけど飾らない言葉。

昨日、4月2日は忌野清志郎さんの誕生日。小谷忠典監督の映画「たまらん坂」を見た。RCサクセションの歌に「多摩蘭坂」というのがあってだね、この映画を知った時、ただただ忌野清志郎ファンとして、「多摩蘭坂」好きとして見に行きたいと思った。だから、あらすじも読まずに出かけたんだ。本映画の原作は黒井千次さんの『たまらん坂』。映画は、「たまらん坂」という坂の名前の由来を探し求めながら、主人公・ひな子が自分の故郷を探しに旅する物語。土地の名前が気づかせる、呼び起こす、過ぎ去った人々の残像と自分の過去。本のページをたんたんとめくるように物語はすすむ。たんたんとと思っていると、急に本をめくる人が変わったりして混乱する。映画の鑑賞者でありながら、読者でもあり、読書をする人を鑑賞するようなことも起こり、とても不思議な体験だった。

東京に行くんだ! なんて気張って上京して早十年とちょっと。不思議なことに、だんだんと故郷のことが気になってきている。今の生活は東京にあっても、わたしのルーツは新潟にある。その新潟のことをもっと知りたいという気持ちになってきている。だから、ひな子の気持ちにちょっと寄り添えた。

ところで、わたしが通っていた小・中学校の近くには「どっぺり坂」という坂がある。これまた不思議な名前だから調べたことがある。昔、この坂の上には、旧制新潟高校(現新潟大学)とその学生寮があり、坂の下には、花街である古町がある。学生たちは繁華街に遊びに行きたいけれど、坂を上り下りして遊んでばかりいるとダブるぞ、落第するぞと言われてしまう。 落第することを、 ドイツ語の「二重」を意味する「Doppel」から文字って「ドッペる」と言っていたそうで、そこから「どっぺり坂」と坂にも名がついたそうですよ。ふむ、地名を旅するのはおもしろい。当時生きていた人たちの幻が浮かんできそう。ちなみに、わたしはどっぺり坂を上り下りするのが好きだった。坂を登りきると、まったく違う世界に行けそうな気がしていたんだ。急にひまわり畑でも広がっているんじゃないかとか想像にふけっていたんだ。

花冷え。
思いがけない寒さになじむことができず、やはりどうも苦手な季節。
それに新月だから月が見えなくてね。
だけど、そのうち君の口に似ているお月さまがのぞくから。








-BLOG
-, , , ,

執筆者:

関連記事

\世界の誰にも描けない君の絵を描いている 「江口寿史イラストレーション展 彼女」@東奥日報新町ビル New’sホール〜2021/5/9/

青森で開催中の江口寿史さんの展覧会「彼女」へ。本展では400点に及ぶ「彼女」たちの絵が集結しています。監修は、美術評論家の楠見清さん。青森はそれはそれはいいお天気でした。青空にはためく「彼女」フラッグ …

\本屋しゃんおすすめ展覧会:康夏奈展「森のいろ、海のいろ」@稲村ヶ崎・SIMPLE HOUSE〜11月29日/

稲村ヶ崎の駅に降りると、すがすがしい空が広がっていた。少し歩くと、道路の向こう側に海がひょっこり顔を出す。空と海の境目がわかならいくらい、それらは溶け合って、ああ、ここは地球だなあと、ふと思い出したよ …

2023年もよろしくお願いいたします。Be HAPPY

あけましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりました。2023年もどうぞよろしくお願いいたします!! 2022年は応援してくださるみなさまのおかげで、落語会や展覧会の企画開催に、はじめての本作 …

\季刊です。『tattva』vol.6 特集:生まれるうちあわせ。いい会議。/

季刊である『tattva』の最新号が届くと、常套句であるが、時が経つ早さを痛感する。あらあら、もうそんな季節なのね、夏か、と、封筒をハサミで切る。最新号はオレンジ色。封筒の暗がりから覗く好きな色に嬉し …

\階段をのぼると……そこは本屋さんでした/

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった」(川端康成『雪国』)。あまりにも有名な『雪国』の冒頭。本屋しゃんも、冬に、地元・新潟に帰省をする時、新幹線でトンネ …