BLOG RECCOMEND 展覧会

ボテロ展ーふくよかな魔法@ Bunkamura ザ・ミュージアム~2022/7/3

投稿日:

夏に溶け込みたくて、真っ赤なカシュクールワンピースを着る。
腰できゅっとリボンを結ぶ。なかなかうまく蝶々を作ることができた。
白い靴下に白いスニーカー。夏空の下、爽やかで軽い足取りでいられるように。

SHIBUYA109を横目に文化村通りを歩く。汗ばみながら、渋谷はすり鉢状なんだなと、その地形に思う。坂を歩く時こそ下腹に力を入れるように心掛けている。歩くたびに赤いワンピースがふんわり揺れて楽しい。着て、動いた時にその服の本当の美しさが現れると思っている。そして、纏う服によって、心持ちが変わるのは何とも不思議でおもしろい。「その日」に、しっくりこない服を着てしまった時は、身体が行き場を失ってしまうようで居心地が悪い。今日はきっと正解だ。

Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「ボテロ展ーふくよかな魔法」へやってきた。わたしにとってボテロは、どこかで見たことがある、名前も聞いたことがあるような…そんな距離感。まあ、つまり、ほぼ知らない人、である。ボテロは、南米コロンビア出身の美術家で、90歳の今も描き続けている。展覧会のタイトルにあるように「ふくよか」な作風が特徴で、人物のみならず、果物や静物たちもふっくらと膨らんでいる。

会場のはじめには、静物画が並ぶ。ふっくらした果物はジューシーで今にも弾けそうな生命力を感じる。バナナも発見! わーい。 オレンジ×ピンクとか、彩度高めの色の組み合わせは、わたしの趣味ど真ん中。ボテロは23歳の頃、メキシコ芸術と出会い、メキシコの大胆な色使いに触発されたとのこと。メキシコの色の使い方はまさに目にも鮮やかで、隣り合う色同士が溶け合うというより、それぞれの色が大きく主張ながらも、殺し合わず、立ち上がっているような潔さがあるように感じます。補色の取り入れ方も素晴らしいのでしょう。

そこから人物を描いた作品の章が続く。では、ふくよかな人物は、静物画と同じく、生命力を感じたかというと、不思議にも、それを感じなかった。いきいきはしているし、大胆な色使いから暗い印象もない。ここで気づくのは「顔の無表情さ」だ。どこを見ているかわからない、どんな感情なのかわからない、涙は流れているが、虚無を感じる。身体のふくよかさと無表情さの乖離に怖さを感じるとともに、だんだんと人間たちがハリボテに見えてきた。裏に回ると無数の木材で支えられている看板なのではないか、そんな心持ちがした。シミュラークルの世界。そう考えはじめると、ふくらんだ身体はジューシーなのではなく、欲や哀しみ、葛藤など人間らしさを溜め込んで浮腫んでいるようだった。水風船のように針を刺したらしぼんでしまいそうだ。人間の機微が描かれている、その点で、ものすごく生命力あふれる作品なのかもしれない、と目が合わない絵画の中の人を見つめながら思った。


日が暮れて、家路を急ぐ人より「さあ、飲みに行きますか!」というテンションの人で、町はいっぱいだった。そう、今日は金曜日。少し前まで、あんなにしーんとしていた町も、たいそう賑わいだしてきている。

わたしも少し、この人ごみに紛れることを楽しんでから帰ろうかしらと、方向転換をする。
くるっとスカートがついてくる。陽気である。その瞬間、結んだ蝶々が飛んだようだった。

展覧会情報

ボテロ展 ふくよかな魔法

会期:2022年4月29日ー7月3日
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム

※詳細は展覧会WEBサイトをご覧ください
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_botero/

-BLOG, RECCOMEND, 展覧会
-,

執筆者:

関連記事

笑福亭羽光 越後道中記ー4

2022年。田んぼにピンと水が張られ、青くて若い稲の苗が美しく整列している。これから来る夏を予感させる景色。そんな季節の新潟で、笑福亭羽光師匠の落語会が2つ開催された。 6月12日(日)今時書店落語会 …

\手紙が届いた。八谷和彦展「秋水とM-02J」@無人島プロダクション〜2021/4/18/

空を飛んでみたい。自分の体で、風に乗って。そんな妄想をたくさんしてきた。自分の名前に「翔」の字が入ってるからかしら。どうやったら飛べるだろう。翼を作ってみる?イカロスを想うと墜落してしまいそうだわ…… …

本屋しゃんの2023年のメモー5月編

twitterで投稿した内容をほぼそのままに「展覧会」「落語会」「本」の感想を一覧メモとしてまとめています。 5月3日ART & OBJECT MARKET Vol.02@SACSへ。ポル・マ …

\本屋しゃんおすすめ展覧会:秋山あい「スパイ手帳」作品展覧会~2021年12月14日@妙蓮寺 本屋・生活綴方/

とてもいい天気だ。こんな陽気の日に、はじめての町に出かけれらるなんて、とても嬉しい。少し遠出だから動きやすい服装にする。母から譲り受けた、タータンのパンツ。きっと母がわたしくらいの齢に履いていたものだ …

\命吹き込まれる展覧会「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」/ 

10月に入って、もう6日がたつのですね。美術館で作品制作作業を終え、外に出ると、あぁ日が短くなったなあと感じます。涼しいし、空気が澄んでいるから、作業後に深呼吸するのも気持ちいい。さてさて、東京都庭園 …