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牛木匡憲 『VISITORS, VISITORS.』刊行記念展「Visitors 代官山 EXHIBITION」@代官山 蔦屋書店~2023/2/13 

投稿日:2023-02-09 更新日:

キャラクターデザイナーで、アーティストの牛木匡憲さんが日本では約4年ぶりとなる作品集『VISITORS, VISITORS.』(aptp books)を上梓された。本書の刊行を記念して2023年2月1日~2月13日に代官山 蔦屋書店で個展が開催されている。


牛木さんは2016年より、日々、自身のinstagramに顔のみのキャラクターの絵/キャラクターの顔? をアップしている。その名も「VISITORS」。フォロワーのタイムラインに訪れる「訪問者」。モノクロで線画。なんだか懐かしかったり、いつの日かどこかで出会ったことのあるような親近感を感じたり、SFを思わせたり皮肉めいていたり、さまざまな顔が並ぶけど……基本、どの顔もユーモアたっぷりで、ちょっとイラっと、むかつく。本屋しゃんのタイムラインにも、ある日「VISITORS」が訪れたのだが、まず先にその線に惹かれた。流れるストロークは、まさに水泳選手がスーッと水を掻くかのような美しさ。そんな美しい線で描かれているのは、イラっとするやつら。そのギャップも良い。


普段、instagramで見るVISITORSとは違い、今回の個展では、VISITORSがキャンバスに描かれている。美しい線はそのままに、よくよく見ると筆致が見えるからおもしろい。VISITORSに質感が!!instagramのフィードのように、VISITORSのキャンバス作品がギャラリーの壁に列をなして展示されているけれど、キャンバスの大きさは大小さまざま。これもまた、展示だからこそできる「ならでは」の体験だ。VISITORSのキャンバス作品を購入したら、それは訪問者から家族になるのかな、なんてことも頭をよぎる。


『VISITORS, VISITORS.』でも、instagramとは違った雰囲気でVISITORSに出会える。2018年に刊行された『VISITORS.』に続きピンクが象徴的。今回はそこに緑も加わっている。『VISITORS.』は、装丁にピンクが使われていたが、本編はinstagram同様にモノクロだった。今回はピリッとスパイスを加えるように、絵の一部分-例えば、目とか髭とか-に色を入れて遊んでいる。この遊び方は本ならではかもしれない。VISITORSスピンオフのような感じがした。帯は太めで、表紙のVISITORSの顔を半分以上覆ってしまっているのが、なんだかシークレット感があって楽しい。instagram、キャンバス、本……同じ顔のVISITORSでも、メディアが変わると見え方も感じ方も全く異なる。

2月6日には、アーティスト 水野健一郎さんと牛木さんの刊行記念トークイベントが開催された。僭越ながら、本屋しゃんは本トークの構成と司会を仰せつかった。実は、わたしが銀座 蔦屋書店に勤めていた頃、『VISITORS.』の刊行記念フェアと牛木さんの似顔絵会を企画開催させていただり、VISITORSに関しての取材をして銀座 蔦屋書店のブログに取材記事を書かせていただいたこともあった。そんなご縁で、この度、お声がけいただいたのだ。とても嬉しくありがたい。そうそう、銀座 蔦屋書店での何度目かの牛木さんの似顔絵会開催中、牛木さんが「中村さんは本屋しゃんが天職ですよね」って噛んでくれたことが、本屋しゃん誕生のきっかけでもある。ますます感慨深い。

トークでは、牛木さんと水野さんの出会いと関係性からはじまり、線、色、キャラクター、継続、ムカつき、笑い……さまざまな角度からVISITORSについてお話しいただいた。心に残ったのは「飽きてからが本番」という言葉。飽きても描いて描いて描いて、続けること。だからこそ、牛木さんの絵は強度があるし、膨大な量のVISITORSが、あたかも昔から存在したような錯覚というか懐かしさを覚えるのかもしれない。すごい、マジック。さらに、牛木さんの作品に欠かせないユーモアや笑い。朝仕事に行く前にVISITORSを見て、ちょっとでも笑って、愉快な気持ちになってくれたら嬉しいという、牛木さんの気持ちには心打たれた。なんで、そんなにユーモアにこだわるんだろうと思っていたけれど、すごくシンプルに、いやはやそうだよね、笑うって大切だよなと改めて感じることができた。しかし、その一方で、誰かを笑わせたり、ハッピーな気持ちにするのはとても体力がいることだと思う。VISITORSは絵を生み出すとともに、笑いも生み出すという2つのクリエーションが同時に行われていている、とても力強い作品なのかもしれない。

落語会を企画主催しているわたしにとって「笑い」は大きな関心ごとのひとつだ。牛木さんの言葉で、笑いにつて、なんだか原点に帰ることができた気がする。


VISITORS。
きっとわたしは、明日からもVISITORSを見てにやにやするし、ハッピーな気持ちになる。そして、その背後にいる牛木さんのこともちょっと思い出して、ああ、また続けてるな、すごいなって尊敬して、わたしも作るぞ! 続けるぞ! って背中をおしてもらえるんだろうな。

peace.

展覧会情報

Masanori Ushiki solo exhibition『Visitors 代官山 EXHIBITION』

日程:2023年2月1日(水)~2月13日(月)
会場:代官山 蔦屋書店2号館1階ギャラリースペース (〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町17−5 代官山T-SITE)

https://store.tsite.jp/daikanyama/event/art/31188-1720110115.html

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