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【レポート】TRiPー浮世絵×落語ー
第2回 テーマ:空
2023年5月13日@仲町の家・北千住

投稿日:


2023年5月13日(土)朝から曇天で、昼近くになると雨が降り出してきました。
雨も美しい天候だけど、やはり「ああ、雨降ってきちゃったな」という気持ちにもなってしまいます。だって、今日は「TRiPー浮世絵×落語ー」の第2回目 テーマ:空 ですもの。五月晴れの空の下、開催できたらいいなと思ったいたもので。しかし、夕方近くになるにつれて雨は落ち着いてきて、ほっと一安心。お客様のお足元が荒れすぎずに良かったです。


雨上がりの北千住。仲町の家のお庭の緑がしっとりと艶やかでとても美しい表情を見せてくれました。
今回も仲町の家のスタッフさんが「地口行灯」を素敵に取り付けてくださり、さらにウェルカム黒板には会のタイトルとトリ吉を描いて待っていてくれました。素敵な演出をしていただきとても嬉しかったです。入口から会場までの道中で、これからはじまる「旅」の楽しみを加速していただけているのではないかなと思っています。

今回は、《あお馬+本屋しゃんトーク→あお馬さんの落語「道具屋」→渡邉さんの浮世絵レクチャー→あお馬さんの落語「鼠穴」→TRiPメンバー全員でトーク》という構成でお届けしました。今回の目標は、前回にも増して、お客様と出演者、そして会場のグルーヴ感を生み出すこと! そんな目標に向けて、それぞれのマインドも刷新するとともに、会の構成や進行にもいろいろなスパイスを効かせてみました。

冒頭のあお馬さん+本屋しゃんトークでは、あお馬さんの近況報告とピアノ練習の様子をざっくばらんにお話。前回、1人で前口上をした本屋しゃんの緊張っぷりを見て、今回からは2人で登壇することで、会場のみなさんと対話するようにのんびりした雰囲気でスタートしようと、あいなったわけです。


渡邉さんによるピアノ生演奏で出囃子「BlueMoon」流れます。あお馬さんのお名前にちなんだ曲。

あお馬さんの一席目は「道具屋」。伝書鳩屋で商いをしようと買った鳩を早速空に放ったら、鳩が鳥屋に帰って行ってしまったという与太郎を心配し叔父さんが大家の傍ら副業にしている商売「道具屋」をそっくり譲るというのだけど……という「道具屋」。次々と与太郎のもとにやってくる客の性格の描きわけが巧みとともに、軽やかなリズムですすみお客様の心をほぐします。客の掛け合いの度に出てくる、与太郎の「洒落」返しに、与太郎は実は頭がキレるではないかという気付きと、日本語のおもしろさにも気づかされる一席でした。

続きまして渡邉さんの浮世絵レクチャー。場面転換に少々時間がかかる故、今回は、その間もピアノの生演奏をお楽しみいただくように工夫をしました。演奏者は…あお馬さん! ほぼピアノ経験ゼロのあお馬さんでしたが、自ら「ぼくがピアノを弾きます」と宣言をして、TRiPメンバー全員でのピアノレッスンや、日々の自主練で、1か月ほどピアノを練習されました。そして、さあ、いざ本番、あお馬さんの新しい挑戦です。本屋しゃんが舞台をセッティングしている間、練習してきた曲を弾いてくれます。一緒にピアノを練習してきた身からすると、見違えるようなうまさに驚きました。もっと聴いていたかったので、わざとセッティングをのんびりしてしまったのはここだけの話しです。

無事に場面転換が終わり、おあ馬さんのピアノ演奏に落語と同じくらいの拍手喝采。
そこから渡邉さんのレクチャーがスタートです。浮世絵に描かれた空を、技法や技術、色や季節、時間などさまざまな観点からお話いただきました。渡邉さんならではの視点での浮世絵のお話は、普段、美術館で鑑賞するだけは気付くことができないような細部へと視点と意識を誘ってくれて、浮世絵を虫眼鏡で覗くような楽しさと発見をもたらしてくれます。絵の主題以外のところにも、さまざまな工夫やおもしろさ、かわいらしさが潜んでいるのですね。
浮世絵の空は実に表情が豊かで、現実とは異なる色や形でも、いや、だから江戸時代の人のセンスや美意識、世界の味方が手に取るようにわかるんだなと感じました。

仲入り後、あお馬さんにもう一席口演。
今度の出囃子は「SkyLark」。
あお馬さん最後の一席は「鼠穴」です。遊びに明け暮れて一文無しになった弟・竹次郎が、江戸で商売で成功した兄に助けを求めに行き、元手を借りて、竹次郎も商売を成功させるのだけど、鼠穴が原因で災難が降りかかり……。一席目の「道具屋」とは雰囲気ががらりと変わり、人間の怖さをまざまざと対峙することになる噺。時間を忘れさせる迫真の噺に、お客様が息を飲みながらくぎ付けになられていることが良く伝わってきました。あお馬さんの落語は、噺が進むにつれてどんどんどんどん引き込んでいく力があるので、長尺の演目で、その魅力が大いに咲くなと改めて感じました。

まるで落語の世界の人々が乗り移ったかのような、いや、人間の本能が底から立ち上がってくるかのようなあお馬さんの噺ぶりから、吉原に娘を売った帰り道に竹次郎が見た、薄紅を流したような赤く染まった空が、みなさまの眼前に浮かび上がったのではないでしょうか。

最後は、TRiPメンバー全員が登壇して締めのトークタイムです。噺終えたばかりのあお馬さんは、うっすらと汗を浮かべ、息はまだあがったまま。全身全霊で噺されたことが、隣に立っていてよく伝わってきました。トークしながら、お客様に目を向けると、2時間ほどの時間で、さまざまに心や頭を動かして楽しんでいただけたんだなということを感じて嬉しかったです。そう、グルーヴがたびたび生まれていたんだなと。


それにしても、空ひとつで、いろんな情景や人間の感情をも表現できるのですね。
自分の日々の生活の中でも、もっと空を見上げてみようかなと思うのでした。


次回は2023年秋頃を予定しています。
また、みなさまとお会いできますように。

第2回の詳細

「TRiP ー落語×浮世絵ー」
第2回 テーマ:空

出演:柳家あお馬、渡邉晃
開催日 2023年5月13日(土)
時間 18:00開場、18:30開演〜20:30終演予定
会場 仲町の家 (〒120-0036 足立区千住仲町29-1)
参加費 2,500円(税込) 
↓詳細↓
https://honyashan.com/%E4%BC%81%E7%94%BB/20230513trip-rakugo-ukiyoe-02/

1回目のレポートはこちら



ブログ「TRiPの人たち」はこちら

https://honyashan.com/category/feature-story/trip%e3%81%ae%e4%ba%ba%e3%81%9f%e3%81%a1%e3%83%bc%e3%81%82%e3%81%8a%e9%a6%ac%e3%83%bb%e6%99%83%e3%83%bb%e6%9c%ac%e5%b1%8b%e3%81%97%e3%82%83%e3%82%93/

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