2022年11月19日、TRiPが誕生、第1回目を開催しました。
早いもので1年が経ち(そう、実は1周年!)、第3回目を迎えることができました。
これもひとえに応援してくださるみなさまのおかげです。ありがとうございます。
1年前の11月は、秋も深まり冬を感じさせる寒さで、みなさまにカイロを配ったのですが……なんと今年はまだ蚊が飛んでいるではないですか。蚊取り線香を焚きながら、1年での環境の変化をしみじみと感じつつ、こちらは1回目から変わらず「地口行灯」をエントランスに取り付けてお客様をお迎えします。ぽわっぽわっとふんわりと灯る行灯たちは、あたたかくこれから繰り広げられるTRiPの世界へと誘ってくれる道先案内人のよう。TRiPになくてはならない存在です。
第3回目のテーマは侍。11月は西向く侍だからという理由で選びましたが、「トリップ」「空」と、なんとなく詩的といいますか、抽象的といいますか……そんなテーマが続いていたので、ちょっとスパイシーなテーマでシリーズ全体のリズムとしても良かったかなと感じています。
今回もトークと落語と浮世絵レクチャー、そしてピアノでTRiPの世界を作りました。
開場から開演までは渡邉さんのJAZZピアノと曲目解説トークで盛り上がり、本編の開幕までじわじわと会場の熱気が増していきます。
冒頭はあお馬さんと本屋しゃんのトーク。今回は、本屋しゃんが新たな挑戦としてはじめた「寄席文字」について話しました。TRiPは全力でみんなの得意なことを発揮しあいつつ、挑戦心を忘れずに、3人でどんどん良い方向に会を更新していこう! という気概でいます。そこで、前回からあお馬さんと本屋しゃんはピアノをはじめたわけですが……あお馬さんと渡邉さんの表現者としての熱い姿勢が、本屋しゃんの表現欲と挑戦心に火を着けさせ、本屋しゃんは「毎回、TRiPのテーマを寄席文字で書く!」という目標を立てるに至ったわけです。「まだまだ細い!」と先生に指導いただきながら、練習を重ねて、なんとか当日に「侍」の一文字をお披露目することができました(と言いましても、数メートル離れてみていただきたいやつ)。「この字は、本屋しゃんに似てますね~」とあお馬さんに言っていただいたのがおもしろい発見でした。「字は人を表す」とはこのことか。
そうそう、TRiPでも毎回掲げているあお馬さんのめくりを書いた方が本屋しゃんの寄席文字の先生ということが発覚! いやはや繋がるものですね。
まずはじめにあお馬さんが「やかん」を口演。八五郎がご隠居にさまざまな物の名前の由来を聞いていき、隠居は次々とこじつけで言いくるめていく。隠居のとっさの洒落力と駄洒落のオンパレードにお客さんも八五郎と一緒に煙にまかれつつ大笑い。「やかん」の由来の問答になると、舞台は川中島の合戦へ。なるほど、侍に結び付いてきたぞ。そして、ここで、待ってました!あお馬さんの圧巻の言い立てがはじまり、空気がビシッとしまります。駄洒落と言えども侮るなかれ、洒落言葉の魅力、ひいては日本語のおもしろさに浸れ、言い立てまで堪能できる一席でした。洒落と言えば…「地口行灯」にも呼応しますね。
さて、お次は渡邉さんによる浮世絵レクチャーです。今回は、場面転換の際に、本屋しゃんがピアノで「きらきら星」を弾きました。夜な夜な練習を重ね、こちらもなんとか当日までにそらで弾けるようになり……弾く側はド緊張でしたが…拙いピアノをお客様が優しく見守っていただき感謝。
渡邉さんは、浮世絵に侍がいかにして描かれてきたのか、時代背景と共にお話してくれました。侍を描くことがグレーだった時代に絵師たちはいかにして描いてきたのか、気兼ねなく描いてよくなってからはどのように描かれてきたのか、浮世絵と侍の関係の変遷のレクチャーは笑いを誘いながらも、みなさまに江戸から明治への時勢や文化史を深く学んでいただけたと思います。侍の日常を描いた浮世絵が少ない中、歌川広景が描くユーモラスな侍の姿はばかばかしくも滑稽で愛おしく、どこか落語と重なり合うようでした。レクチャーの終盤では、あお馬さんが最後に口演する「井戸の茶碗」に通ずる題材や構図の浮世絵も匂わせながら紹介していただいたおかげで、最後の噺にうまく接続していきました。
仲入りを挟んで、最後はあお馬さんの「井戸の茶碗」の口演です。
浪人の千代田卜斎とくず屋の清兵衛、そして武士である高木佐久左衛門。立場こそ違えど、みんな素直でまっすぐな性格。それゆえに勃発する、卜斎と佐久左衛門の我の通しあい、譲り合い? 押し付け合い? そしてそれぞれの言い分に正直になり、翻弄される清兵衛。そんな、あっちにいったりこっちにいったりをあお馬さんはリズミカルに噺進め、聴く者をぐいぐい物語の中に引き込んでいきます。コミカルな三人の様子、場面転換がまざまざと眼前に浮かぶようです。ドカドカ笑いが起きながら、サゲもほっこりで会場のグルーヴ感は絶頂に!
いつも熱演のあお馬さん。もちろん今日も熱のこもった口演でしたが、今日はいつも以上に柔らかい空気が漂っていたような。あお馬さんが持つ力、演目の選び方というのはもちろんですが、回を重ねるごとにTRiPの空気も確立されて、会場全体の一体感が増してるのかな、なんて思うのでした。
最後は3人でトークをしながら、おなじみのプレゼントタイム。
今回はじゃんけんで勝った方に、あお馬さんが「井戸の茶碗」から着想を得て描いた絵と3人のサインが入った色紙をプレゼント。こうして最後に前に立って、みなさまの笑顔と向き合うと、ああ、楽しんでいただけたのかな、と幸せな気持ちになります。プレゼントタイムだけど、我々もみなさまからプレゼントいただいてるんだなと感じています。
今回もたくさんのご来場をありがとうございました。
2年目に突入したTRIP! ますますお客様にトリップしていただけるよう挑戦し続けます!
次回もお会いできますように。
追伸
毎回、TRiPがいかにして作られているのか。本来ならば舞台裏である作戦会議を表舞台でやってみよう!という実験、題して「落語会の舞台裏の表」を〈無為フェスvol.02 芸術のアブ〉参加企画として開催します。11月30日19:30~入場無料、予約不要なのでお気軽に遊びにいらしてください。
https://honyashan.com/%e4%bc%81%e7%94%bb/20231130trip-buoy/
第3回の詳細
「TRiP ー落語×浮世絵ー」
第3回 テーマ:侍
開催日 2023年11月4日(土)
時間 18:00開場、18:30開演〜20:30終演予定
会場 仲町の家 (〒120-0036 足立区千住仲町29-1)
↓詳細↓
https://honyashan.com/%E4%BC%81%E7%94%BB/20231104trip-rakugo-ukiyoe-03/