「今日7月18日(木)、気象庁は関東甲信地方・東海地方の梅雨明けを発表しました。いずれも平年より1日早い梅雨明けです」
「茶屋しゃんりん 夏」の開催日を目前に、ニュースはそう伝えた。まさに「夏」の会になるなあと嬉々としていたが、梅雨が明けてからというもの、突然の雷雨に見舞われる日々。カッと晴れていたかと思いきや、モクモクッと不穏な空気が立ち込めて、ピカっと光ったと思うと、ザーッと振り出す。これも夏らしいと言えば夏らしいか、とじめっと肌にまとわりつく空気をひと撫でする。
だけど、やはり、しゃんりんの当日は、晴れているといいなと願いつつ、いや、待てよ、「野良」なわたしたちは、野草のように、雨に打たれてこそたくましく成長できるのかもしれないなんて思ったりもする。
2024年7月22日。いよいよ「茶屋しゃんりん 夏」の本番だ。朝はカラッと晴れ渡りたり太陽の光が痛いほど照り付けてきた…ニュースに耳を貸すと、どうやら今日もゲリラ豪雨がやってきそうだ。まあ、仕方ないよなと、自然のことだ、季節のことだ、抗えない。しかし、問題はそれだけではなく、いやそれ以上にヒヤッとする情報が飛び込んできた「東海道新幹線 運転見合わせ」。今日の主役である、九ノ一さんは、今日大阪から東京にお越しいただく予定だ。まさに、九ノ一さんが乗る予定の新幹線が止まってしまった…足止めである。おやおやおやおや、一瞬ヒヤッとして、大丈夫かしら…と思っていると、「新幹線止まってるんやて! おもしろくなってきたで!」とXにポストしている九ノ一さん。この力強いマインドでいてくださっているなら、きっと別ルートでお越しいただけるに違いない、むしろ九ノ一さんが今日、高座にあがっている様子をありありと想像できたから、不思議と不安は消えた。なんだか、とても信頼をしている。あとは、道中のご無事を祈るばかり。野良ちりんも、九ノ一さんの無事を祈りつつ、何やら初回からドラマチックで伝説ができそうですね、と同じマインド。あたたかくて強い心を持ち合わせている人と創る会。いい会になるぞと改めて思った。
まずはわたしが会場入りして会場づくりをはじめ、続いて野良ちりんがお酒と酒菜とともに会場入り(この瞬間から、おいしい気配がむんむんでたまらないのですよ~)。しばらくすると、九ノ一さんが登場! 赤富士のアロハシャツに短パン。ご陽気で素敵。約束の時間にいらっしゃるとはさすが。少なからずお疲れの様子でも、いつもどおりの元気な九ノ一さんで一安心。役者がそろい、会場のテンションが上がってくる。厨房では、新潟から直送の枝豆を野良ちりんが茹ではじめ、青くて夏らしい良い香りが会場に漂い、高座では九ノ一さんと照明や音響、会の流れの最終確認を。準備OK、いざ開場!
ぞくぞくとお客様がいらっしゃって、開場まで、野良ちりんの酒と酒菜をのんびりと楽しんでくださった。まずは、前菜としてゆでたての枝豆に枝豆の濃厚ゼリー寄せ。おいしい~おいしい~という声に、わたしもお腹が鳴りつつ、お客様に喜んでいただいている様子にすでに幸せさを感じる。程よく、酔いがまわってきたところで…いざ開幕! 満員御礼! 感謝!
出囃子とともに颯爽と高座にあがる九ノ一さん。この瞬間、会場の空気が変わりますよね。待ってました! と一気に高座に会場の気持ちが集中することがビシビシ伝わってくる。
さて、まくらは、やはり、東海道新幹線が止まってしまったお話から。飛行機もすでに満席…さてどうしたものかと調べに調べて、大阪からサンダーバードで敦賀まで行って、敦賀かから北陸新幹線で東京入り……というルートを探り出され、日本海を横目に実に722km、8時間かけて、本当にはるばる「茶屋しゃんりん」にお越しいただきました。もはや大冒険。
しかし、長旅の疲れを微塵も感じさせず、まくらからドカドカと笑いを誘う。
一席目は『へっつい盗人』。友人が宿替えしたお祝いに、へっついを贈ろうとするのですが、タイトル通り、そのへっついを道具屋から盗もうとする…。上方落語で、初代桂春団治師匠が得意としたらしい。大きな台所が印象的な会場なので、あ~今日はこれ話したい~という気持ちになったのだそう。なるほど、台所を前に、お料理を食べながらへっついの一席は乙なもの。
盗人するのに静かにしなくてはいけない状況でのドタバタぶりが、九ノ一さんのパワフルさで助長される。『へっつい盗人』にちりばめられている印象的な音の数々、ヨッとサッのヨ~イ、ヨ~イというかけ声から、竹垣の音、石灯籠が崩れる音、三輪車のラッパの音、小便をする音……が、九ノ一さんの手にかかるとひとつひとつ楽器を持ち換えて演じているのか?!というくらい生き生きと奏でられ、落語を音とリズムの視点から聴く楽しさを味わえた。
さて、ここでお仲入り~。お仲入り時間も、みなさまに野良ちりんのお酒と酒菜をお楽しみいただいた。今回の酒菜は、九ノ一さんが好き!という「桃、旬の野菜」からヒントを得て野良ちりんが献立を考案。九ノ一さんからラザニアが好き!という回答もいただきましたが、それはまた今度笑。
数年前「野菜と日本酒と落語の会」という落語会をちりんと共催した時に、ちりんの御燗酒と落語のリズムがよく合うことに驚いた。こうして、「茶屋しゃんりん」で、お客様に、野良ちりんのお酒と酒菜を楽しんでいただいている様子に触れると、きっとお客様もそのリズムに乗っていただけているんだなあとしみじみ。
ちなみに、わたしは、ここで九ノ一さんの楽屋に野良ちりんの料理を持っていくという…。なんというタイミング悪さよ…反省。
仲入り後、もう一席、九ノ一さんの落語をお楽しみいただきます。
タイミング悪く持って行っていしまった酒菜も楽しんでいただけたようで一安心。まくらでの話題は九ノ一さんが愛する桂ざこば師匠と 笑福亭仁福師匠の話。ツッコみどころ満載の愛らしい師匠方のエピソードに、会場も爆笑で、和むわ~という空気に包まれます。
後半は『青菜』。仕事を終えた植木屋に青菜を出そうとする主人だが、奥さんが隠語でを青菜を切らしてることを伝える。その様子に感動した植木屋が帰って自分の家でも同様のことを試みるけれど…。
前半より、九ノ一さんのエンジンが振り切っていることが伝わってきます。
帰宅してから植木屋が奥さんと一緒に実践してみよ~というくだりが夫婦漫才のようでチャーミング。大工のエッジの効いたツッコみも相まって、ポンポンポンッと噺が進み、会場はまんまとその調子に巻き込まれ始終前のめり状態。ヒートアップ青菜!!
九ノ一さんは、元気、エネルギッシュ、パワフル、そんな言葉が似あいますが、それだけではない。
登場人物一人一人の「らしさ」を丁寧に描きわけ、落語全体を心地よく聴かせるビートを生み出して、何より会場との距離が近くグルーヴを作り出す。
今日も、力を抜いていこうと思います~とおっしゃっていたが、まさにそれで、エネルギッシュではあるけれど、押しつけがましくなく、ゆるく聞けるのがとてもいい。構えなくて聴けるからより没頭できる。「落語はおもしろいだけじゃつまらない」という九ノ一さんの想いが良く伝わってくる一日でした。
九ノ一さんの落語をたっぷりお聴きいただき、野良ちりんの酒と酒菜もご堪能いただき、ご来場のお客様に一週間をご陽気に過ごしていただけますようにと祈りつつ、閉幕のお時間。あっという間ですね。
すると、どこからともなく雷の音が響きだし…ザーッと雨が。
おやまあ、天気予報はあたったようで、最後までまさにドラマチックな「茶屋しゃんりん」夏。
最後は残られたお客様とスタッフで、雷雨の音をBGMにお酒を片手に酒菜を楽しみ、落語のこと、関西弁のこと、フジロックのこと、お酒のこと…と他愛もない話をゆるゆる楽しみました。
ご来場いただいたみなさま
桂九ノ一さん
アーリーバード・アクロスのみなさま
手伝ってくれたみなさま
広報にお力添えいただいたみなさま
当日、取材いただいた東京酒カレンダーさま
枝豆を送ってくれた我が実家
そして、野良ちりん!
関わってくださったすべての方に心から感謝をお伝えします。
たくさんの笑い声と、「おいしい!」の言葉に出会うことができ幸せでした。
また、みなさまの月曜日の夜を、一週間を彩れるようにがんばります。
次は「茶屋しゃんりん 秋で」お会いしましょう!!
茶屋しゃんりん 夏 詳細
「茶屋 しゃんりん」 夏
第一夜 :桂九ノ一
日程:2024年7月22日(月)
時間:19:00開場、20:00開演
場所:アーリーバード・アクロス(〒170-0003 東京都豊島区駒込1丁目40−14)
木戸銭:2500円 ※前菜付き! 新潟の枝豆の塩ゆでと濃厚ゼリー寄せ
※事前にチケットをご購入下さい
ドリンク+フード:キャッシュオン 500円~
https://honyashan.com/welcome/shanrin01-katsurakunoichi/
次回! 茶屋しゃんりん 秋 お知らせ
落語 日本酒 酒菜「茶屋 しゃんりん」秋
第二夜 :春風亭弁橋
日程:2024年10月21日(月)
時間:19:00開場、20:00開演
※公演は21:30頃終演予定。多少前後する可能性があります
場所:アーリーバード・アクロス(〒170-0003 東京都豊島区駒込1丁目40−14)
木戸銭:2500円 ※前菜付き!
※事前にチケットをご購入ください
ドリンク+フード:キャッシュオン 500円~
https://honyashan.com/welcome/shanrin02-shunputeibenkyo/