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すっごい生きてた:逢坂憲吾「枯花」@JamPhotoGallery・目黒~2020年3月1日

投稿日:2020-02-21 更新日:

もう梅がふっくらしてきたなあ。いや、待てよ、近所の道路沿いの桜はほぼ満開じゃないか。なんだか順番がおかしな気もするけれど、春はもうすぐそこなんだなあ。って朝は、意気揚々と出勤していたのに、夕方になったらいきなり雨だ。こんな天気予報だったっけ?と思ったけど、多分、わたしは、今日の天気をチェックしていなかったかも。それか、聞き逃していたわね。毎朝、ラジオを聞いているからさ、天気予報は否が応でも耳に入ってくるものなんだけどね。

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仕方ないから、コンビニに立ち寄って傘を買った。ビニールのやつね。すけすけの。こうやってビニール傘って増えていくの。あるある。あれは、わたしが幼稚園の頃だったと思うのだけど、台風がキターという時に、その時、一番のお気に入りの虹色の傘を持って、外に出たんだ。親の目を盗んで。骨と骨の間の布の色が違うの。それでレインボー。かわいいでしょ。どんよりした雨の日にも、虹色の傘はわたしの心を浮き立たせてくれるアイテムだった。むしろ雨の日が楽しみだった。その傘がさせるから。さて、だんだんと風が強くなってくる。そりゃそうよね、台風来てるんだもん。そこで、今だ!と傘を開く。パッと虹が現れる。一番のお気に入りの傘で、この台風の風に、うまく乗れれば、メリー・ポピンズになれるに違いない、傘で空が飛べるに違いないと思っていたのだ。そう、メリー・ポピンズが大好きで、憧れていたのね。だけど、結果は残念なことに、お気に入りの傘が壊れ、泣く泣く帰宅。今や笑い話だけど、当時のわたしにとっては、一大事よ。お気に入りの傘が壊れて、次の雨の日はどうやって楽しめばいいのって、泣いたわ。雨の日に傘をさすと、いつもメリー・ポピンズになれなかった日のことを思い出す。Supercalifragilisticexpialidocious!

ビニール傘片手にやって来たのは、目黒。目黒は、弟が働いている場所ということもあって、たまに遊びにくる場所。寄生虫博物館も好きよ。そういえば、いつだったかの、天一の日(10月1日)は、目黒の天一に並んだっけ。

方向音痴なわたしは、駅から徒歩5分の場所でも、mapを見ながらではないとたどり着けない。ビニール傘とスマホ片手にキョロキョロウロウロ。たどり着いたは「JamPhotoGallery」。おいしそうな名前。いや、「Jam」には、リラックスする/愉快なことといった意味もあるらしく、同ギャラリーのオーナーさんが写真の素晴らしさと楽しさを実感できる居心地のいい空間にしたいという想いから、この名前になったみたい。すてきだなあ。写真の楽しさと魅力で満たされる場所ね。

今日はね、逢坂憲吾さんの個展「枯花」を見に来たの。
展覧会のタイトルだけ聞いた時、しんみりとした悲しい雰囲気の展示なのかしらと想像してた。だって、お花が枯れているんでしょう?

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展示会場に入っていきなり、在廊されていた逢坂さんに「なんで枯れたお花なんですか」と質問をした。いや、してしまった。「まずは、ご覧くださいな」と返される。そりゃそうだよ。野暮で失礼な質問をしてしまったと反省。展示空間はそんなに広くない。白い壁に、大型の作品が7枚展示されていた。7つ違う種類のお花たち。共通点は枯れていること。まずは展示室を俯瞰して、それから1枚1枚の作品を見て回った。するとどうだろう。枯れゆく花々なのに、わたしは逆にそれでもなお美しい花たちの生命力を感じずにはいられなかった。すっごい生きてるのよ、お花たちが。まだ、死ねないね、と言わんばかりに。命って強かなんだね。

写真の細部に目をこらすと、葉脈とか、色が変わってきた花びらとか、トライコームまでが繊細に写っていて、肉眼でお花に向き合う時以上に、花々の身体を知ることができた。お花をいけているときの、ちょっと水臭い感じさえも、鼻のあたりをよぎったわ。しかも、葉脈は血管で、トライコームは産毛で、色あせた部分はシミのようで、だんだんヒトに見えてきた。不思議。

一周してから、逢坂さんに改めてお話を伺う。なんでも母上が、植物を育てるのがお好きな上に、お上手だったとのことで、逢坂さんは幼少期の頃から、植物が身近な存在で、花もそのだっひとつだったのだそう。それが、花を撮ることの土台になってるんだね。しかし、逢坂さんは、花の表層的な美しさのみを写すのではなく、生を受けた時から死に向かう、その抗えない時間の流れを、枯花で翻訳したんだとおっしゃった。写真って、一瞬を切り取るものだと思っていたけど、確かに、「枯花」を見ていると花がみずみずしかった頃から、もっと枯れが進んで完全に朽ちてしまっている未来の姿まで、そこには写っていないはずの時間までもが脳裏をよぎったわ。

そこで、ふと思う。わたしが、さっき、1つ1つの花がヒトに見えてくるなあと思ったのは、枯れているからなのかもしれないね。みずみずしい状態の花は、チューリップはチューリップだし、バラはバラ。だけど、枯れゆくそれらは、種類ではなく、今目の前で枯れゆく一個性としてのお花に見えるからかもしれない。枯れゆくまでにたくさんの時間を経て、たくさんの人からの視線とか、空気とか、吸い込んだ水とか、色あせてきてのぞく醜さとか、、、そんなのが混ざってきて、いうにいえない美しさができあがってきているから。それが、きっと、ヒトの人生と重なって見えてきてなあたんだと思う。

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って、作品を拝見できたことはもちろん、みんなでいろいろ考えることができてとても楽しかった。
往往にして、「アートは自由に見ていいんだよ」と、投げ出されてしまいがちですが、こうやって作家さんと、はたまたその場に居合わせた他のお客さんと自分の思ったことをぶつけ合って、考え合う場というのはとても大切だと思った。見る目と考える頭と、伝える言葉が育って、鑑賞することがより楽しくなるなあ。

そんな目と頭と心をフル回転させて、やっぱり一番強く感じたことは「すっごい生きてる」だった。

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伺うのが遅くなってしまったことも相まって、結局閉廊時間までお邪魔してしまった。そろりそろりとJPGを出ると、雨はほぼ止んでいた。傘買ったのに、止むのね。これもあるある。

なーんだ、今日もメリー・ポピンズになれなかったじゃん。しぶしぶビニール傘を丁寧にたたみなおして駅に向かう。だけど、逢坂さんの写真のおかげで来たときよりもちょっと元気になれたから、少しくらいは、ふわーって、地面から浮いてたかもしれない。スプーンの一杯の砂糖が魔法をかけてくれたように。

《関連情報》
逢坂憲吾「枯花」
JamPhotoGallery/JPG
開催中〜2020年3月1日(日)
最寄駅:目黒駅(徒歩7分)
https://www.jamphotogallery.com/

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