ふと、リビングにいけていたチューリップに目をむけると、ぱらぱらと花びらが落ちてきた。昨日まで、元気だったのに。
はかなさを感じながら、むしゃむしゃといつも通りバナナを頬張る。
むしゃむしゃと、である。この咀嚼は生きている証ね。
今日も、下北沢に行く。間借りして「本屋しゃんの本屋さん」を開いている、BOOK SHOP TRAVELLERに納品に行くため。「本屋しゃんの本屋さん」は一箱大の小さなほんやさんだけど、やはり「棚」は手入れをしないと死んでしまう。よくよく面倒をみることが大切だ。
幸いなことに、私が今住んでいる北千住から下北沢は、千代田線―小田急線の直通に乗れば、1本で行けてしまう。少々時間はかかるけど、好アクセスと言えるかもしれないね。無事納品をした後、井の頭線に乗り込み「駒場東大前」を目指す。わたしが上京してはじめ住んだ町は、吉祥寺だった。だから、通勤でもとってもお世話になったし、わたしの生活に寄り添った路線だったから、今でも、乗るとなんだか安心する。「駒場東大前」は急行が止まらない。駅名の通り、目の前は東大。
さて、時間がありません。駅からぴょこぴょこ小走りです。納品した分、ひいてきた本もあり、両手には本がいっぱい。本好きとしては「両手に本」なんて幸せなシチュエーションですが、小走りするのには向きません。ぴょこぴょこ、なんとか走ります。
目的地は「日本近代文学館」。
目的は冬季企画展「詩のありかに触れるささやかな試み」。
閉館は夕方4時30分。最終入館は4時。現在、3時50分。
ね、小走りしなくちゃでしょ。
なんとか、最終入館時間に間に合って、展示室に向かう。しかし、息は切れ切れ。ギリギリガール。
まず、展示室内の入口においてある白い「詩集」を、1冊手に取り進みま
す。詩集を片手に巡る展覧会。
展示は大きく「橋」「海」「道」「空」の4つのキーワードにで別れて、詩人の顔と、プロフィールと、詩が掲載されている本が展示してある。そこに「詩集◯◯ページ」って掲示してあるから、入口で手に取った詩集の、そのページを開くの。すると、その詩人が書いた詩が、そこには記されているのです。
顔を見て、
生い立ちに触れ、
本を開いて
詩を読む。
こんな顔の人が書いているんだ。
こんな生い立ちの人から、こんな詩が生まれるのか。
ただ、詩集を開き、紙の上の言葉と間に向き合うだけでなく、詩人のパーソナリティと個人史が重ね合わさって、詩が立ちあがってくる。すると、その詩が誕生した瞬間を感じられるような気さえしてきた。
パネルを見て、詩集を開き詩に触れるを繰り返していたら、詩を私が読んでいるんだけど、なんだか詩人が「語ってきている」ような感覚に陥った。
耳をすましているような、そんな気持ち。
さらに、展示を進むと、実際に詩人たちの朗読の音声が流れていた。
超貴重。まさに、ここでは声に耳をすます。ますます詩が体にこびりついてくる。
詩を読み、耳を澄まし、語りかけられ・・・全方位から詩を感じられるすばらしい展示でした。詩集を片手にめぐる展覧会。ぜひ体感していただきたいなあ。
この展示方法、体験はね、詩が好きな方、文学館という空間が好きな方はもちろんだけど、よく美術館に行くよ!インスタレーション作品が好きだよ!という方にもきっと響く展示!だと思った。文学とアートファンを展示方法によって繋げちゃう展示だと思う。
文学の展示って、パネル展示と原稿の展示が中心だと思うのだけど、これは、もう1回言うけど、全方位から詩を体感できる、文学の展示方法を考えるうえでも大きな1歩だ!!って、強く感じ
と、あつく語っている私ですが、この展示、明日で終わっちゃうんです!2月22日(土)で終わっちゃうのです。だけど、ぜひ、みなさんに見ていただきたくて、今こうして、書いています。すみません、やっぱりギリギリガール。
詩に全身を覆われて帰宅したら、チューリップの花びらがまた1枚落ちていた。春まだかなあって思ってるけど、春もすぐ終わっちゃうのかなあ。
今日は、詩を落とさないように、そっとお風呂に入ろう。
《関連情報》
冬季展示「詩のありかに触れるささやかな試み」
場所:日本近代文学館
期間:開催中〜2020年2月22日(土)
最寄駅:井の頭線・駒場東大前 徒歩7分
https://www.bungakukan.or.jp/cat-exhibition/cat-exh_current/12240/