『塔を下から組むー北海道百年記念塔に関するドローイング展 記録冊子』が本屋しゃんのお店に新しく仲間入りをしました。
「塔を下から組むー北海道百年記念塔に関するドローイング展」とは、2018年11月1日〜11日にわたり、札幌のギャラリー門馬にて開催された「北海道百年記念塔」の解体議論を契機とした7名のアーティストのグループ展です。企画は美術家の佐藤拓実さん。
「北海道百年記念塔」
新潟生まれ、東京在住、北海道にはまだ行ったことがない本屋しゃんは、「北海道百年記念塔」の存在を知りませんでした。
「北海道百年記念塔」は、1968年、北海道百年記念事業の主要事業のひとつとして建設されたモニュメントです。高さは100年にちなんで100mで、雪の結晶を表現して六角形になっているんだって。すーーーっと空に向かって建つ姿は、突如、大地から生えてきた異世界の植物にも見えるし、近未来からやってきた人の基地にも見えてくる。ほら、妄想するって大切だよ笑。
展望スペースもあって、札幌市の街や石狩平野が一望できていたみたい。
「できていたみたい」、そうです、今ではそれは過去のことになってしまいました。2014年に老朽化が原因とされ立入禁止となり、2018年には、解体されることが決定しました。約50年、道のシンボルとして愛されてきた「塔」は、展望台としての機能を失い、今は解体の時を待つのみに……。
そんな、北海道百年記念塔の解体議論を契機に、アーティスト7名があつまって、塔に関する作品を製作し、「塔を下から組む」と題した展覧会を開催したのです。
展示タイトル「塔を下から組む」は、「物事に取り組むときは、まず基礎をしっかりと固めることが大切だ」という意味を持つことわざ「塔は下から組め」からきています。同展の企画者である佐藤さんは「この展示に集まったのは建築家ではなく美術家です。美術家は塔を建てずに作品を作ります。しかしそこでも『下から組む』というやり方無しでは作品も作れないのではないかと思うのです(記録冊子より)」と、展示タイトルに込めた想いを語られます。
作品制作、そして会期中に行われたアーティストトークなど、グループ展開催全体を通じ、社会問題と美術の関係やモニュメント、歴史の継承などのテーマを念頭に置いて議論を重ねてきたアーティストたち。どのように塔と向きあい、いかにして作品を「下から組」んでいったのでしょうか。
本書には企画者である佐藤さんによるコンセプトから、展示風景、各作家の作品が豊富な写真とともに紹介されています。そしてアーティストトークの記録や各アーティストの書下ろしエッセイ、さらに北海道百年記念塔に関する基本情報が収録されており、図録としてはもちろんのこと、資料として貴重な一冊。また付録として「北海道百年記念塔 年表ポスター」と、グループ展の出品作でもある短編小説『ひかりごけ』(白濱雅也:著)の小冊子がついてきます。
そういえば、本屋しゃんの地元・新潟市の万代にも「レインボータワー」という展望機能を持ったタワーがありました。ラーメンズが公演「TOWER」で新潟を訪れた際に、レインボータワーもいじってくれていたなあ笑。このレインボータワーもですね、悲しいかな、取り壊され過去のものとなってしまいました。名前の通り、レインボーカラーの塔で、展望スペースが昇降して、さらにくるくるっと回転するんですよ。小さい頃はよく乗っていたけれど、大人になるにつれ、幼き頃のキッチュな思い出として残るばかりで、いざ、レインボタワーの中へ!という気持ちにはならなかったし、横を素通りするだけで、もはや無視してしまっていたな。だけど、いざ、取り壊されてしまうと、塔の存在感はなかなかなものだったんだなあと感じました。失ってはじめて気づく……あの感覚。塔があったとあとにはぽっかりと空ができたようでした。ずっと無視してきた塔なのに、なんだかさみしいものですね。
日本海タワーというのもあったけど、こちらも展望スペースは閉鎖されているのかあ……。塔を発端に、いろいろ蘇ってきてしまった……。街のシンボルと個人の歴史。
佐藤さんは、小さい頃に北海道百年記念塔にご家族でピクニックがてらお出かけしたり、小学校の校外学習で訪問したり、見慣れた風景であるとともに、思い入れのある場所だったようです。そんな自覚からはじまった、塔へのアプローチ、そして作品制作。佐藤さんはじめ、各アーティストの応えに触れることで、塔だけではなく、さらに俯瞰して北海道のさまざまな歴史や文化も見えてくるかもしれません。本屋しゃんのオンラインストアと、下北沢のBOOKSHOP TRAVELLERで販売中です。ぜひ、お手にとってご覧ください。
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