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\本屋しゃんおすすめ展覧会:エリカ・ワード個展「盆栽」~2021年12月12日@高円寺・BLANK

投稿日:2021-12-09 更新日:

久しぶりの高円寺。
この間、柳家あお馬さんの「個展らくごの会」以来だな。つまり夏以来か。
吉祥寺に住んでいたころは、結構遊びに来ていた。
キタコレビルには通ったなあ。シベリヤをはじめて買ったのも高円寺だった。あのパン屋さんまだあるかしら。
徳島ラーメンをはじめて食べたのも高円寺だ。あれは、おいしかった。
ああ、円盤も高円寺だ。いいね、ごちゃっとしてて、生きてるにおいがする、好きな街だな。

そういえば、エリカ・ワードさんにはじめて会ったのも高円寺だ。
2020年夏。
CLOUDS ART + COFFEEで開催された「えんぎもの」展。第一回目の緊急事態宣言があけたころか。
しみじみそんなことを考えながら、改札を出て商店街を歩く。
相変わらず興味そそられる新旧のお店がたくさんある。楽しいたのしい。



今日、わたしがこうして高円寺にやってきたのは、

エリカ・ワードさんの個展「盆栽」

を見るため。

会場はBLANKさん。その名のとおり真っ白で中に入れるものでがらりと表情を変える「空欄な空間」。



わーい、到着!
今回の展覧会は「盆栽」を描いた新作27点の発表の場。

盆栽からカーブミラー?!
インスタント麺のカップで盆栽?!
お菓子の空き箱たちも借りだされ、コンビニエンスストアも盆栽に。


エリカさんの作品はいつも「かけ算」で楽しませてくれる。ひとつひとつは、日常にあふれている、ともすると見逃されがちなささやかなモノや風景かもしれない。しかし、それらがエリカさんの手によって、「絵」の中でかけ合わさると見たことがない刺激的なモノ、風景になる。しかし、不思議なことに「かけ算」を楽しむにとどまらず、かけ算の元である、ありふれたモノや、日常の何気ない風景たちのおもしろさと美しさにハッとされるのだ。そう、かけ算することによって素材ひとつひとつの存在感もぐっと増すの。


そして、見立てのおもしろさ。「盆栽」の起源は中国で、唐時代の「盆景」が平安時代に日本に入ってきたのだとか。盆景、そして盆栽は、盆や鉢の中で自然の風景を見立てる芸術。盆の上の景色ですものね。エリカさんの盆栽は、日用品が鉢や盆に見立ててあったり、建築物が鉢に植えられる木として見立てられていたりと、二重の見立てを楽しめる。シンプルに、え?! それを鉢に見立てちゃうの?! という意外性がたまらんのですが。 盆栽とインスタント麺のカップというのは、かたや自然で、かたや人工的というギャップも心をつかんでくる。

「盆栽」シリーズは、「人間によるデザイン」について考えるというコンセプト。エリカさんの「世の中の全てのものはデザインされていると思いますが、私たちは、あるデザインに対しては価値を見出すものの、あるデザインはデザインとして無視するのは何故なのか(本展ステイトメントより引用)」という疑問が着火点。

なるほど、だから、今回の「かけ算」は、これまでのシリーズの中でも、素材ひとつひとつのおもしろさや美しさが際立っていたのか、と合点がいった。盆栽は自然に見えるけど、人が見立ての美を追求して生まれたデザインで、カップ麺やお菓子の箱ももちろん人によってデザインされている。すると、一見、自然的、人工的という対立やギャップがおもしろいのだけれど、「デザインされたもの」という次元において共通しているという発見が醍醐味なのかもしれない。見逃されてしまいそうなデザイン、もはや日常に溶け込みすぎて無視されてしまっているデザイン。だけど、そこには誰かの手が入っている愛おしさが実はあるんだね。


「盆栽」を通じて「人間によるデザイン」を考察する。
エリカさんの作品の「かけ算」は、答えではなくたくさんの問いと考えるきっかけをくれる。

ZINEも!嬉しいね、これでお家でもじっくりゆっくり楽しめる~。
ステッカーやポストカードなど、グッズも盛りだくさんだったよ。

BLANKの近くに、 CLOUDS ART + COFFEE があるから、ここでコーヒーをたのしむのもおすすめだよ。

帰り道、日が暮れた高円寺。

赤提灯を横目に、ふらっと一杯を我慢して、電車に乗り込む。日々、人生に起きているかけ算を楽しもうと思ったりしながら。


展覧会情報

エリカワード個展「盆栽」

会期:2021年12月7日(月)~12月12日(日)
会場:BLANK(東京都杉並区高円寺北2丁目18-9)

※詳細はエリカさんのWEBページをご覧ください。
https://ericawardart.com/news-and-updates.html

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