わたし、今、どこにいるんだっけ。
ふと、そんな気持ちが込みあがてきた。
いつもの道を歩いて空を見上げたら、自分がどこかにいるのか分からなくなった。
まぎれもなく、ここは東京の北千住。
昨日、故郷・新潟から戻ってきたところ。
そこの角を曲がると、元気なママの韓国料理屋があって(エゴマのキムチがおいしい)、その先には鰻の卸問屋があることも知っている。
だけど、不思議。
北千住にいるのに、すぐに、そう今すぐに新潟に行けてしまいそうな気持ち。
新潟だけじゃない。今まで旅してきた国や地域がすぐそこにあるかのような、今すぐにでも行けてしまいそうな気持ちだ。
故郷へ旅をしている感覚がまだ残っているのかもしれない。
移動するという高揚感と疲労感が身体に残っているせいかもしれない。
どこまでも広がる空のせいかもしれない。
学生の頃、無性に誰かに会いたいと想う時、ぼんやりと空を眺める、月を眺める癖があった。
きっと、同じ空や月を見ている。すると何となく、その人と繋がっている感覚になることができた。
もしかしたら、そんな気持ちに似ているのかもしれないけれど、それともやっぱりちょっと違う。
試しに、そこの角を曲がったら、ちゃんと韓国料理屋はあったし、鰻問屋もあった。
ここはやっぱり北千住。
だけど、今日は、その町の名前がわたしの中から消えて「どこか」になっている。
この不思議な気持ちの正体は未だ解決していないけれど、わたしはここにいます!という安定した気持ちより、常にどこかに行ってるような気持ちの方が性に合っているのかもしれないな、なんて思いながら、どこかの道をもう少し歩いてみる。