BLOG RECCOMEND 本/ZINE

\本屋しゃんの旅ー招き猫に招かれて「風のたね」が飛んできた/

投稿日:2020-12-15 更新日:

帆雨亭から「おのみち小物招き猫工房」さんまではそんなに遠くなかった。
坂道に息を切らしながらも、普段は味わうことのできない、美しい疲労感。そして、解放感。

お店の入り口をひょっこり覗くと、元気のいいお姉さんが「しょうこちゃんね!」と超WELCOMEしてくださった。突然の予約ですみませんと、改めて伝えると「叶えたいことがあったのね」と優しく笑ってくれた。

ちょっとドキッとした。

「突然ですみません。明日、招き猫の絵付けを体験させていただくことはは叶いますか」

「叶います!」

昨夜〜今朝にかけてのメール。自分でも気づいていなかったけど、わたし、もしかしたら「叶えたい」ことが無意識にあるのかも。なんだろう。叶えたいこと。招き猫を作っている間に、気づくかしら。

招き猫に絵付けする前に、招き猫について少しお勉強。

左手を挙げている招き猫はお人を招く。
右手を挙げている招き猫はお金を招く。

色にも意味があって、白は開運、金は金運、黒は魔除け、赤は病封じなどなど。

ここでは、「みなさんに福をもたらす良いご縁がありますように、そんな人とたくさん出会えますように」という願いを込めて、「左手」を挙げている猫ちゃんを用意してくれています。

色の塗り方などなどを丁寧に教えていただいたあとに、いざ、絵付け!!
久しぶりに目の前に「真っ白なキャンパス」。自由に楽しく描いてね、とお姉さん。「真っ白」「自由」の難しさに数秒固まった。招き猫に関する本や、お店には招き猫がいっぱ〜〜〜いだから、お手本はたくさんある!!招き猫って一口に言っても、いろんな子がいるんだなあと、本やら店内を見渡してしみじみ感じる。

もう1度、自分の目の前に置かれた真っ白い招き猫に目を落とす。
さて、どう描こう。思い切り、ハッピーな猫にしよう。ハッピー………そうだ、バナナ猫にしよう!どうやら、わたしは至極、単純脳なようである。大好物を描けば、ハッピーになれる。そんな安直な考えがすでにハッピーである。

黙々とバナナを真っ白い猫にちりばめていく。そこでびっくりしたのは、バナナの絵を描くのが難しい!!絵心のなさに凹みながら……ふと気づく。


あ、楽しい。


もともと絵を描いたり、工作したりするのが大好きな子どもだった。絵の教室にも通っていたし、わくわくさんを見ながらテレビの前で一緒に工作もした。はじめての夢は、ピカソになること。そんなわたしだったが、ずーーーーっと絵筆なんて持っていなかった。久々の絵を描く時間。下手が過ぎるけど、それに反比例するかのように楽しい。黙々と、本当に黙々とただひたすらバナナを描いた。


そして、完成。

「福招じゃなくて、招福だけどね、まあ、いいんじゃない(笑)」
お姉さんに指摘されて気づく。バナナに集中しすぎて、痛恨のミス(笑)
よし、としよう。

尾道の美しい空の下、心地よい風に吹かれながら、キラキラ輝く海にときめきながらの、招き猫作りはとっても気持ちよかった。

猫背なおしたい(笑)

そうそう、わたしが本に関わる仕事をしていると話すと、お姉さんが、こんな冊子をプレゼントしてくれた。

『風のたね』
発行者:大崎上島町観光協会
編集:風待ちの編集室

大崎上島の紹介誌。
紙質、写真、イラストレーション、文章……どれをとってもあたたかく美しい。

バナナ!!
わかる。旅先では、迷子になりたい。
イラストレーションが可愛いの。

大崎上島は瀬戸内海に浮かぶ、広島の離島。
1周約40kmで、人口約7,500人(2019本誌発行現在)。
橋は架かってないから船で行くしかない。

この冊子をいただいてはじめて知りました「大崎上島」。
本誌は、とある女性が、島を旅にしにきた時の日記のように進むの。フェリーに乗って、観光案内所「風待ちの時間」で情報を集め、島を回る。「岡本醤油醸造場」をはじめ、「お好み焼き 上杉」「明石ストアー」などなど地元で愛される場所が、旅人の視点で紹介されています。要所要所にコラムも挟んであって、なんだろう……島の魅力がいわゆるガイドブックの「情報」として入ってくるのではなくて、「体験」をすでに一緒にしている感覚になり、とても楽しい。

訪れた土地の暮らしや自然、人にふれて得たものを、また次の土地へと伝えていく。

旅人とは、まるでたねを運ぶ鳥のようです。

ここ大崎上島でも、瀬戸内海の潮の流れや風が運んできたものによって、人々の暮らしが育まれてきました。

そして今でも、その豊かさは訪れた人の心を動かし続けています。

この本があなたの良き旅のきっかけとなりますように。

『風のたね』より

なるほど。だから冊子のタイトルも『風のたね』なのか。
わたしも、いつも風来坊。ふわふわそよそよ風に身を任せる。
そして、招き猫工房に出会えて、こんな素敵な冊子にも出会うことができた。
窓全開の工房で、瀬戸内海の風を肌に感じながら、旅について思いを馳せる。

にゃ〜。
ぼんやりと手元のバナナ猫を見つめる。

左手を挙げている招き猫はお人を招く。

招き猫工房とのお姉さん、『風のたね』との思いがけない出会い。
そして、大崎上島という島をはじめて知ることができた。

すでに、わたしの周りにはステキな「お人」が集まっていて、「縁」が生まれていた。バナナ猫が早速、福を招いてくれた。そんな気がした。

わたしが叶えたいものはなんだろう。

結局、答えはすぐに思いつかなかった。だけど、こうして旅先でたくさんの出会いに恵まれている今、幸せなことは間違いなかった。一度きりの人生で行くことができる場所、出会える人の数はとっても限られている。その限りを尽くしたいなという想いは、叶っているのかもしれないな。

それにしても、絵を描くのは本当に楽しかったなあ。
この写真が、どれだけ、わたしが楽しかったかを物語っているでしょう笑。


今度は、大崎上島に行きたいな。

尾道駅方面に戻る道中、福福饅頭さんで、生地にヨモギが練り込んである大判焼きをひとおつ買って、海を見ながらパクリ。ん〜あんこぎっしりでモチモチでおいし。今日は甘いのばっかり食べてるなあ。幸せ。

お店情報

おのみち小物招き猫工房

処:〒722-0033 広島県尾道市東土堂町10-3(宝土寺 観音堂)
営業日時:平 日10:00〜15:30、土日祝9:30〜17:00
お休み:水・木曜日

※お店の詳細や、お知らせはWEBサイトやSNSをご覧ください。

WEB: https://manekineko-kobo.jp/
instagram: https://instagram.com/manekinekokobo

福福饅頭

処:〒722-0036 広島県尾道市東御所町3−5
※尾道駅から徒歩数分!尾道プリンのおやつとやまねこさんと同じ並びにありました^^

https://goo.gl/maps/mcg1yU4wHR4nSE3F6

大崎上島情報

島の情報と魅力が、盛りだくさんの観光ナビ。facebookは、より島の日常に寄り添った情報が得られるので、ぜひ〜。

http://osakikamijima-kanko.moon.bindcloud.jp/navi/index.html

-BLOG, RECCOMEND, 本/ZINE
-, , , , ,

執筆者:

関連記事

\きっとこの世界はそう簡単にあっちとこっちに分けることは難しくて。:大津萌乃 個展「靄の町 -もやのまち- 」〜2021/3/22@ondo 清澄白河/

あれ?ここって、きたことあるっけ。はじめて訪れたところのはずなのに、なんだか見覚えがある景色。夢で見たのかな、そんな気もする。だとすると、ここは夢の中?いや、正夢というやつ、か。そんな不思議な体験をた …

「広重おじさん図譜」展@太田記念美術館・原宿~2023年3月26日

ラフォーレ原宿の裏手。道を挟んでこっちとそっちで雰囲気がだいぶ違う。ドアが開く度に中からどぅんどぅんと低音が効いた音楽がここまで聞こえてくる。1978年に竣工されたらしいが、その前は一体ここには何があ …

\百島と尾道と倉敷と岡山の旅。記事をまとめたよ/

百島にはじまった広島&岡山の旅。アートと本を軸にたくさんの縁が生まれた旅でした。旅の記事を書き終えたので、時系列にまとめました。各所の魅力をお伝えできたら嬉しいです。早く、ぶらり旅ができる日が …

HAPPY ‘RE’ BIRTHDAY

3月7日は、あなたが生まれ変わった日。だから今日をHAPPY ‘RE’ BIRTHDAYと名付けよう。 突然のことだった。予期せぬ事態だった。 その日の夜、浅草で食事をしていたわたしのiphoneが鳴 …

牛木匡憲 『VISITORS, VISITORS.』刊行記念展「Visitors 代官山 EXHIBITION」@代官山 蔦屋書店~2023/2/13 

キャラクターデザイナーで、アーティストの牛木匡憲さんが日本では約4年ぶりとなる作品集『VISITORS, VISITORS.』(aptp books)を上梓された。本書の刊行を記念して2023年2月1 …