2024年3月16日にTRiPー落語×浮世絵ーの第4回 テーマ「にぎやか」を開催しました。
迎えた当日はここ最近のなかでも、とてもあたたかい陽気。桜こそまだ咲いていなかったですが、空はすみわたり、これから芽吹く春の予感を感じさせる良い日。まさに今回のテーマ「にぎやか」にぴったり、TRiP日和です。
今回は、《あお馬+本屋しゃんトーク→あお馬さんの落語「長屋の花見」→渡邉さんの浮世絵噺→あお馬さんの落語「らくだ」→TRiPメンバー全員でトーク》という構成。構成はいつもと同様でしたが、常に挑戦心を燃やすTRiPらしく、今回も新しい試みに挑みました。
開場時間中は渡邉さんによるミニコンサートさながら。JAZZピアノの演奏に加え、楽曲の説明まで入る贅沢なひととき。お客様も思い思いに耳を澄まし、開演までの時間をゆったりと過ごされている様子でした。
さて、みなさまがお揃いになったところで、いよいよ開演! はじめは、あお馬さんと本屋しゃんのトーク。渡邊さん作曲の「TRiPのテーマソング」が出囃子です。
今回はTRiP初参加の方が多かったので、トークでは「TRiP」の自己紹介要素を中心に話しました。トークをしながら、お客様のお顔をおひとりおひとり見渡すようにしているのですが、今回は、すでに目を輝かせていらっしゃる方が多くいらして、楽しみに来てくださったことがよくわかり、嬉しいな~と思うとともに背筋が伸びます。
まずはあお馬さんの一席。淡い黄色の着物に桜柄の手ぬぐいという、春らしい出で立ち。さり気ない気遣い、憎いなあ。演目は「長屋の花見」。酒肴(らしきもの) を持って花見にでかけた大家さんと貧乏長屋のご一行の噺。
桜のにぎやかな咲きっぷりが眼裡に浮かび、すでににぎやかな情景。そこに、貧乏長屋のシミュラークルお花見のやりとりがにぎやかなのなんのって。ガヤガヤと話す長屋の連中のやかましさはあお馬さんの手にかかると、ラップでいうフロウのようで会場も一緒にリズムに乗って気持ちのいい時間が流れます。特に大きな事件が起きるわけでもないけれど、市井の人々のほほえましくも、やけになっている様子に会場の笑いは絶えず、まさに「にぎやか」な一席でした。
続きまして、渡邉さんの一席「浮世絵噺」。渡邉さんのお話しぶりは漫談さながらのおもしろさ。単にお勉強のお時間ではなく、笑いが生まれ、そんな渡邉さんの「らしさ」をタイトルでも表すべく、「浮世絵噺」と名付けた次第。
高座→モニター設置の場面転換中はあお馬さんが森山直太朗の「さくら」をピアノで弾いて場を盛り上げます。3人総出のTRiPらしい一面がここに。
「にぎやか」をテーマに、祭や花火、宴などなど、さまざまなにぎやかな様子が映しだされ、江戸の活気がよく伝わってきます。にぎやかな場面を描いた浮世絵は群衆が描かれている事が多いですが、そこに渡邉さんらしい虫眼鏡視点で、群衆の中に紛れるおもしろい人、もの、ことにズームアップ。パッと見ただけでは、「ああ、いい絵だね」で終わってしまいそうですが、細部を見ると絵の魅力がもっとわかるということに気づかされます。渡邉さんの虫眼鏡視点のおかげで浮世絵師たちのユーモラスな視点をたくさん知ることができました。
しかし、にぎやかなことは楽しいことばかりではないようで、にぎやかすぎで迷惑を被る場面もあったり…。一口に「にぎやか」といっても、さまざまですね。次のあお馬さんの落語につながる浮世絵も忍ばせて、水面下でお客様の想像力を掻き立てる、さりげない、次へもバトンタッチはさすが。渡邉さんが降壇する際は本屋しゃんがピアノで「第3の男」を演奏(お酒を想起してもらいたくて、こちらを選曲)。にぎにぎしく会は進みます。
仲入りをはさみ、あお馬さんがもう一席。「にぎやか」をテーマに選んだもうひとつの演目は「らくだ」。
「長屋の花見」とは対照的でちょっと怖さすらある噺です。馬という名前で、らくだというあだ名の乱暴者が死んだ。それを発見したらくだの兄弟分と、脅され巻き込まれた屑屋が、大家や八百屋を訪ねて通夜の準備を進めようとするのだけれど……。話はどんどんサイコパスな方向に進んでいきます。あお馬さんのドスの効いた声の兄弟分の横暴な態度、それに怯え服従するひ弱な屑屋の対比の演じ分けは怖さと可笑しさが入り混じり、さらに息の間も絶妙で、より狂気的で不気味なさまが研ぎ澄まされます。もはやあお馬さんの噺ぶりそのものが狂気をはらんでいます。お客様は固唾を呑んで、高座にすこぶる集中を向けていられることが伝わってきました。
この噺には、民謡「カンカンノウ」が重要なモチーフとして出てきます。カンカンノウに鳴り物を入れる挑戦をすることに。渡邉さんがピアノ、本屋しゃんがツケで参戦。ここでも3人総出のTRiPらしさを発揮しました。兄弟分に脅されっぱなしの屑屋が、終盤になって酒を飲むにつれどんどん酩酊しながら、気が大きくなっていく…その変貌ぶりの表現はお見事。お酒が飲みたくなった―という声もたくさん聴こえてきました。観る人の心を動かすほどの噺ぶりは、それだけお客様の想像力を掻き立てている証だなと思います。全体的にひんやりする旋律の演目でも、笑いも各所でおきました。しっかり笑える空気を作るところも、あお馬さんの手腕であり、会場と一緒に落語会を創っているという意識の現れだと感じました。
いやはや、「にぎやか」をテーマに「らくだ」を選らぶという変化球。良い意味で期待を裏切る一席となり楽しんでいただけたと感じています。
最後は3人揃ってトーク&じゃんけん大会。最後まで勝ち残った方に「にぎやか」をテーマに描いたあお馬さんの原画をプレゼント。
今回もたくさんのお運びをありがとうございました。どんどんマッチョになっていくTRiP。
次回もたっぷりお楽しみいただけるように前進してまいります。
また、会場でお会いできますように!
お知らせ
第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」の応援プログラムに参加します。
仲町の家での公演とは一味違うTRiPをお楽しみください。
TRiP-落語×浮世絵-野草興行!ヨコトリップ!
日程 :2024年6月2日(日)
会場:ル・タン ペルデュ/Le Temps Perdu
料金:投げ銭制
https://www.yokohamatriennale.jp/2024/support-program/3
第4回の詳細
「TRiP ー落語×浮世絵ー」
第4回 テーマ:にぎやか
出演:柳家あお馬、渡邉晃、本屋しゃん
開催日 2024年3月16日(土)
時間 18:00開場、18:30開演〜20:30終演予定
会場 仲町の家 (〒120-0036 足立区千住仲町29-1)
参加費 2,500円(税込)
詳細↓
https://honyashan.com/%e4%bc%81%e7%94%bb/20240316trip-rakugo-ukiyoe-04/
アーカイブ
これまでの会の詳細やレポート、写真をまとめました。
ブログ
「TRiP」メンバーの柳家あお馬、渡邉晃、本屋しゃんが一体どんな人なのか、普段はどんなことをしているのかなど、メンバー三人のそれぞれの活動やなんでもない日常をお届けしています。