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【レポート】MIOKO個展 「たまにはヨソの布団の上@旅館 澤の屋 再び」 ー2024年12月7日(土)~12月22日(日)

投稿日:2025-03-05 更新日:

MIOKOはだいたい布団の上にいるらしい
だけど、たまに旅に出てヨソの布団にいるらしい
旅はそう遠くなくてもいい
ちょっといつもと違う場所のいつもと違う空気と土の感触
いつもと違う夜の静けさ
いつもと違う窓から差す朝の陽
いつもと違う鏡越しの自分の顔
ただそれだけでいい
それだけで旅になる

2022年の冬にMIOKO個展「たまにはヨソの布団の上」を旅館 澤の屋さんで開催してから3年が経ちました。3年前と状況は大きく変わり- – -しかもポジティブに- – -澤の屋さんにはコロナ禍で一度去ってしまった旅人たちが世界中から戻り、連日賑やかです。そんな中、澤の屋さんから、また何か一緒にやりましょう! と声をかけていただき、澤の屋さんでのMIOKOの個展第2回目として「たまにはヨソの布団の上@旅館 澤の屋 再び」を開催することになりました。だいたい布団の上にいるMIOKOにとって、「布団」がある旅館という環境はバッチリ合う! とはじまった「たまにはヨソの布団の上」企画。こうして、一度のご縁を次へと繋げる機会をいただけてとても幸せです。

前回の展示では客室内にMIOKOの漫画を張り巡らせて、パラパラ漫画風の動画の上映をしたのですが、今回は、個展開催前にMIOKOが実際に澤の屋さんに数日間宿泊し、漫画の滞在制作を行いました。ミニレジデンスのような試み。個展では、滞在制作をした漫画と、本個展にむけて新しく制作したZINE『だいたい布団の上』vol.04に収録した漫画の原画、さらに巨大漫画を展示し、会期中は数回にわたり巨大漫画のライブドローイングを行いました。

布団は不思議な場所。とても日常的でありながら、ゴロゴロしながら悩んでみたり、過去を想起してノスタルジーな気持ちをかきたてたり、未来を思い描いて不安になったりわくわくしたり、まどろみながら夢の世界に誘われたりする。ヨソの布団の上で過ごすひと時は、自宅のそれとまた違う。いたってインドアな空間で、どこか保守的な場所だけど、布団は別の場所に別の世界に連れ出してくれるよう。

ホリデーシーズンのため、澤の屋さんのエントランスにはクリスマスツリーが飾られていました。澤の屋さんはいつも季節に合った飾りつけをし、日々季節のお花を丁寧に活けられています。澤の屋さんがSNSでクリスマスツリーを出したよ、お雛様を出したよ、なんて投稿されると、ああ、もうそんな季節がやってきたのかと感じます(コンビニに桜デザインの缶ビールが出てきたら春が近いのかと、はっとさせられるみたいな…)。クリスマスツリーはとてもすてきで、いろいろなオーナメントの中に、折り鶴が舞っていました。なんだか大きさと形がぴったりだなと、MIOKOが作ったオリジナルキャラクターまめこのぬいぐるみをそっと枝にひっかけてみたら、まあ似合いすぎて、かわいすぎて笑(写真のどこかにいるよ、探してね!)。

クリスマスツリーでアガったテンションをそのままに、もっと中に進んでいくと正面の床の間に巨大漫画絵画のお出ましです。
漫画をF40号のキャンバスに描く、漫画を絵画化する試み。しかも巨大。読めるか読めないかの瀬戸際のことば。言葉としての形と意味を失いかけているその姿は、言葉が絵画になろうとしているような意思と動きを感じます。盛り上がった画面も絵画ならではの質感。サイズ、目から伝わる手触り、読めない言葉…は来場したお客さまを、日常から引きはがし、布団の上のような不思議な世界へと誘っていました。布団の上にようこそ。

メインの作品展示会場は普段食堂として使われているところ。ご宿泊のお客さまが朝食を食べたり、お風呂上りに休憩したり、談笑したりする憩いの場所。旅人の非日常と日常が溶け合う場所で、MIOKOの日常と非日常が溶け合う漫画が浸透していきます。


壁には、『だいたい布団の上』vol.04の原画を、飾り棚に滞在制作した漫画を展示しました。

滞在制作した漫画は《旅館の自販機》《お風呂の注意書き》《怖い話とかじゃなくて》《朝》の4点。
澤の屋さんになじみがある人は、嗚呼、これはあの場所か、ここを切り取るか!と共鳴し、澤の屋さんはじめましての方は一体どこを描いたのかと、描かれている場所を探しだしたり、この気持ちわかるわ~とシンパシーを感じていらっしゃるようでした。
MIOKOは、内に漂うなんでもない気持ち、得体の知れない気持ちを絶妙にすくいあげて言葉と絵に変換する力が心憎いほどうまいので、観る人の心にすっと入り込んでいくのだと思います。

左から《旅館の自販機》《お風呂の注意書き》《怖い話とかじゃなくて》《朝》

『だいたい布団の上』vol.04の漫画原画展示風

巨大漫画ライブドローイングも3回開催しました。いや、それにしても、あーた「巨大」が好きねえと思われることでしょう。2022年12月に北千住で「たまにはヨソの布団の上@家劇場」を開催した時にはじめたライブドローイング(それにしてもいろんな布団の上にお邪魔してます)。いつもどのように漫画を描いているかライブドローイングしたらおもしろいのでは? 漫勉のように(浦沢直樹さんが「マンガ誕生」の舞台裏に迫るドキュメント番組)!! しかし、何か今一歩足りない。もっとライブ感を出して、お客様に全身で楽しんでいただけるようなパフォーマンス感を出したい…と悩み、打ち合わせを重ね…「巨大化だ!」と相成った次第。

テーマも特に決めず、即興です。
下書きなし、フリーハンドでコマ割りをして、一コマ一コマに物語を描きこんでいきます。
瞬時にコマ割りを考えて、ちゃんとオチまでつける…すごい技術だと思います。オーディエンスも巨大漫画の誕生過程を真剣に見守ってくださいました。

そしてできあがった巨大漫画がこちらの3枚。
小学生の頃の記憶をたどったり、在廊中の妄想を描いたり、寒さに想いを馳せてみたり…。3枚とも全く違う雰囲気。巨大だと、なぜだか漫画の中に入りたくなります。澤の屋さんの日本地図壁画の上に、完成するたびに展示していくと、会場の雰囲気が刻々と変化して会期中に展示が醸されていくよう。

どんどん醸されていった展示も、あっという間に時はすぎ、撤収の日。
一枚一枚、ひとつひとつ作品が撤収されて、いつもどおりの澤の屋さんに戻っていきます。
もともととても静かな町、谷中。作品の気配が消えていくと、静寂が大きくなったように感じました。

今回もたくさんの方にお運びいただき、ありがとうございました。
みなさんも一緒に布団の上の旅をお楽しみいただけていたら嬉しいです。

次は、どなたの布団にお邪魔しようかしら。
MIOKOの布団の上の旅をこれからもご注目ください。

追伸
個展初日、澤の屋さんのフロントの奥に目をむけると、MIOKOのシルクスクリーン作品が展示してありました。前回の個展時に澤の屋さんが迎えてくださった作品です。こちらがお願いしたわけでなく…とても嬉しかったです。細部までのおもてなしの心、学ばせていただきました。ありがとうございます!


展覧会情報

MIOKO個展 「たまにはヨソの布団の上@旅館 澤の屋 再び」
会期:2024年12月7日(土)~12月22日(日) ※12月15日(日)のみ休み
時間:14:00~18:00  ※土&日は13:00~18:00
※鑑賞いただけるお時間は旅館 澤の屋の営業時間と異なります。ご注意ください。
ライブドローイング:2024年12月7日(土)、12月14日(土)①15:00〜②17:00〜
会場:旅館 澤の屋 1階(東京都台東区谷中2-3-11) 
アクセス:千代田線 根津駅より徒歩約7分 
入場:無料

これまでの「たまにはヨソの布団の上」

MIOKO個展 @旅館 澤の屋
「たまにはヨソの布団の上。」
2022年2月10日(木・布団の日)〜2月27日(日)
https://honyashan.com/welcome/mioko-soloexhibition-futonnoue/

ブログ
https://honyashan.com/2022/02/%ef%bc%bc%e9%96%8b%e5%b9%95%e3%81%97%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f%ef%bc%81mioko%e5%80%8b%e5%b1%95%e3%80%8c%e3%81%9f%e3%81%be%e3%81%ab%e3%81%af%e3%83%a8%e3%82%bd%e3%81%ae%e5%b8%83%e5%9b%a3%e3%81%ae/

MIOKO個展
「たまにはヨソの布団の上@家劇場」
2022年12月19日(月)~12月24日(土)
https://honyashan.com/welcome/mioko-soloexhibition-futonnoue02iegekijo/

レポート
https://honyashan.com/2023/01/report-mioko-soloexhibition-futonnoue-iegekijo/

MIOKOのZINEとシルクスクリーン作品

MIOKOのZINE『だいたい布団の上』とシルクスクリーン作品は本屋しゃんのECでご購入いただけます。ぜひご利用ください

https://honyashan.thebase.in/categories/4153820


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