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\本屋しゃんおすすめ展覧会:小瀬古文庫個展「擬態するデザイン #2」@下北沢・BOOKSHOP TRAVELLER〜12/20→12/22(勝手に選書付)/

投稿日:2020-12-18 更新日:

本屋しゃんも間借りでお世話になっている、下北沢の本屋のアンテナショップ BOOKSHOP TRAVELLERは2020年7月にバロンデッセの3階に移転してからギャラリー活動も精力的で、ガシガシと魅力的な展示が続いています!

本屋しゃんも秋山あいさんの個展「スカートの中、夢の中」を開催させていただきました。謝謝。

そんなBOOKSHOP TRAVELLERで現在開催中の展示は小瀬古文庫個展「擬態するデザイン #2」です。

擬態デザイナー・小瀬古智之さんが「『もの』が擬態することで、視覚の想像力を掻き立てる」をテーマに発行をしているアートブックマガジン「gitai」。本展は、本シリーズの最新刊『gitai #01 ハムの惑星』に掲載されている「ハムに擬態する惑星」を中心に、肉!年輪!雪!と、「gitai/擬態」シリーズを俯瞰することができます!

展示されている「ハム」に近づいてみると………。
この「お肉」は、フィ、フィンランド?!
ん………「年輪」に見えるけど………地図記号?
雪華模様の細部に目をこらすと、地形の模様。

何かが何かに擬態をし、何かと何かに偶然の一致が勃発している。

日本人は古くから「見立て」の遊びが巧みだと感じる。
和歌や俳句、歌舞伎、浮世絵。落語。枯山水などの日本庭園。
庭で宇宙を表現しようとしたんだもの。龍安寺の庭園なんて、いつ伺っても、
本当に宇宙に漂っている気持ちになるものなあ。ああ、無常。

小瀬古さんのgitai/シリーズは「見立て」の文脈で考えることもできると感じるんんだけど、それとはちょっと違う。「見立て」は人にしかできない、作ることができないことだけど、「擬態」はそもそも生き物たちが自衛や攻撃のために、そう、生き延びるために周囲と同化すること。「見立て」は積極性を帯び、ポジティブな感覚で、「擬態」は隠れる、潜めるという視点から能動的で消極的な感覚かもしれない。と書くと、擬態がネガティヴに聞こえてしまうかもしれないけれど決してそうではない。むしろ、擬態は創造的視点から美しいし、姿を消せるなんて羨ましい。「見立て」と「擬態」を受け取る側の態度も異なるように思う。

(余談だけど、宮崎夏次系さんの『あなたはブンちゃんの恋(1)』で、ブンちゃんは、ドラえもんの道具の中で、石ころぼうしが一番欲しいと言っていたなあ)

小瀬古さんの作品は、見立てではなく「gitai」だからこそ、わたしの知らないところで、この地球の反対側で、いや、もっともっと身近に、自分の足元で、宇宙のどこかで実際に存在している、わたしが気づかなかっただけで、ずっと前からそこにあったものに感じるのかもな。生き物の生きる術だから、どこかで生きているように感じるんだ。そして、気付いちゃった!知っちゃった!という気持ちがむくむくと湧き上がるんだ。

生憎、忙しさと情報過多を理由に、日常において様々な物事おに接する際、読んで字のごとく、スクロールするように表面をさらっとなでて終わってしまうことが多い。だけど、小瀬古さんの作品に触れると、注意深くこの世界を見ないと損しちゃうわっと、世界との対峙の仕方にも改めて気づかされるの。



わたしが、小瀬古文庫さんの「gitai/擬態」シリーズを知ったのは、日本ではなくて台湾!「田園城市生活風格書店」という台北の本屋さんで出会いました。

あれは、2019年の秋。国立台北教育大学北師美術館で開催されていたトリメガ研究所さんキュレーションの「美少女の美術史」展を見に台北にはじめての旅に出かけたの。旅先で、本屋さんに行くことが、わたしの旅にはとても大切な要素であり、楽しみにしていることなので、もちろん、台北でも本屋さんに行くことに。BOOKSHOP LOVER・和氣さんにおすすめ本屋さんをたずねると、「田園城市生活風格書店」を紹介していただいたのです。

さすが和氣さんのおすすめのお店。一歩入ったら、こりゃあ、数時間は出られないな、困ったなあ、という気持ちになってしまう、空間が広がっていました。ZINEのコーナーがとても充実していたの。そう!そこで発見したの!小瀬古文庫さんの「gitai/擬態」シリーズ。

確か最初に手に取ったのは「肉」。「なにこれかわいー、お肉だあ❤️」くらいの軽い、きゃぴきゃぴした気持ちで手に取ったんだけど、中を開いて目をこらすと「!!!」「お肉だけど、お肉じゃない。地図?!」と、びっくり仰天した次第。その後、BOOKSHOP TRAVELLERで再開をするなんて、奇遇。



先に書いたように「gitai/擬態」はアートブックプロジェクトです。
展覧会から「本」が生まれるのではなく、「本」から生まれた展覧会。
本と展覧会から、gitai/擬態する世界を是非、お楽しみください^^



展覧会情報

小瀬古文庫個展「擬態するデザイン #2」

会期:2020年12月14日(火)〜12月20日(日)→22日(火)延長!12:00~20:00
処:下北沢・BOOKSHOP TRAVELLER
155-0031 東京都世田谷区北沢2丁目30−11BALLOND’ESSAI ART GALLERY 3F 奥

※展覧会詳細はこちらをご覧ください
https://www.facebook.com/events/317708352643177/?acontext=%7B%22ref%22%3A%2252%22%2C%22action_history%22%3A%22[%7B%5C%22surface%5C%22%3A%5C%22share_link%5C%22%2C%5C%22mechanism%5C%22%3A%5C%22share_link%5C%22%2C%5C%22extra_data%5C%22%3A%7B%5C%22invite_link_id%5C%22%3A1092386887852340%7D%7D]%22%7D


関連情報

BOOKSHOP LOVER・和氣正幸さんによる「田園城市生活風格書店」に関するインタビュー記事。


本屋しゃんが選書を担当している千葉市美術館ミュージアムショップ BATICAでも、小瀬古文庫「gitai/擬態」シリーズ販売中です!

勝手に選書してみた。

誰に頼まれたわけでないけれど、本展からイメージを膨らませて選書をしました。絵本に漫画、日本美術……好奇心の枝がどんどん伸びますように。

『歌川国芳―奇と笑いの木版画』(府中市美術館 編集、東京美術 刊、2015)
『見立ての手法―日本的空間の読解 』(磯崎新著、鹿島出版会 刊、1990)
『半日の客 一夜の友』(丸谷才一&山崎正和 著、文藝春秋、1998)
『芸術と科学のあいだ 』(福岡伸一、木楽舎、2015)
『虫は人の鏡 擬態の解剖学』(養老孟司&海野和男 著、毎日新聞出版、2020)
『チキンライスがいく。』(はらぺこめがね 著、あかね書房、2018)
『あなたはブンちゃんの恋(1)』(宮崎夏次系、講談社、2020)

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