ARTIST BLOG RECCOMEND 大山エンリコイサム 展覧会

\本屋しゃんおすすめ展覧会-大山エンリコイサム 個展「SPECULA」〜2021年11月20日@銀座・RICOH ART GALLERY &「我に触れよ(Tangite me):コロナ時代に修復を考える」展~2021年12月3日@慶應義塾大学三田キャンパス/

投稿日:

とある11月の土曜日。
久しぶりに銀座の街を歩いた。
数年通った街だから景色も空気も懐かしい。

ちょっと前は閑散としてしまっていたけれど、
この日は人も多く、華やかな銀座が戻ってきていた。
思い思いにおしゃれをして、思い思いの休日を過ごしている。


わたしは、銀座のシンボルである和光の時計台の相向かいにある、三愛ドリームセンタービル8階と9階にある「RICOH ART GALLERY」に伺いました。同ギャラリーは、2022年3月までの期間限定のギャラリー。RICOHの2.5D印刷「StareReapk」で制作された作品を直接見ることができる貴重な機会です「StareReap」は、 RICOH 独自の サイズ/色調/質感などを精密かつ自由に表現できるインクジェット技術を駆使して、アートを身近に感じることができる文化を提案する新たなアートブランドとして立ち上がりました。オリジナルアートのエディション作品の制作をはじめ、アーティストとの共創活動によるオリジナルアート制作も行っているとのこと。

現在開催しているのは、「大山エンリコイサム個展 SPECULA」。

大山さんはじめてのデジタル作品。コンピュータでさまざまな「クイックターン・ストラクチャー(QTS)」の画像を複製し、反転し、重ねて生まれた平面作品。

大きく腕を振って、全身で大胆に描く大山さんの姿が頭の中にいたのですが、会場に足を踏み入れると、まずはそれとは対極ともいえる緻密な画面に驚きました。身体性から解き放たれて、勝手にQTSが増殖をはじまたような感覚に陥った。QTSは増殖を繰り返してきたわけだけど、QTSの細胞としてのQTSがもぞもぞと動いているように見えた。きっと顕微鏡で覗いたらこんな感じなのかもしれない。


近づいてみると、なるほど! 2.5D印刷「StareReapk」 の技術にこれまたびっくり。まさに筆を動かしたかのような質感と凹凸。そして見る角度によって変わる光加減もとても美しい。これは、実際に見てみないと体感できない。

もう一度離れてみると、今度は模様が浮かびあがってくる。曼荼羅のような顕微鏡のようなものもあれば、傷のようなものもある。接近してみる時と全く違う表情だ。しかし、模様の深淵にうごめく細胞の気配は健在で、細胞も模様も眼前でどんどん動いて増殖しているようでクラクラしてきた。この動き、なんだか粘菌のようにも見えてくる。植物なのか動物なのか、不思議な生命体 粘菌。

9階にあがると、おお!和光の時計を目の前に見ることができる。
こんな景色を堪能できるのも、実際に現地に足を運ぶ醍醐味ですね。

「RICOH ART GALLERY」 では大山さんの新作を見ることができますが、現在、慶應義塾大学で開催中の「我に触れよ(Tangite me):コロナ時代に修復を考える」展では、大山さんが慶應志木高校を卒業する際に同校のブロック塀に描かいた作品の保存に関する資料を見ることができます。

同作は、高校に何かを残したいいう大山さんの想い、そして企画書に学校が応えて実現したといいます。長年、同校にたたずんでいましたが、経年によるコンクリート強度の問題から建て替え工事が必要となり、志木高等学校からの発信で作品保存プロジェクトがたちあがりました。ブロック塀という立体建造物でもあり、エアロゾル塗料で描かれた描画でもあるため、様々な角度から保存の方針を慎重に議論をしているようです。さらに、作品と場所との関係性、ストリートアートを保存するとはどういうことか、というさまざまな議題も浮上してきます。

今回の展示は、わたしたち鑑賞者も保存修復の現場を知るだけではなく、アート作品を保存する意味、モノとして残すのか、コンセプトを残すのか?、となるとアートとは何なのか、などアートの本質と向き合う良い機会だと感じました。

また、慶應義塾ミュージアム・コモンズ ケムコスタジオ内にある大山さんの《FFIGURATI #314》を特別公開する日もありますよ!特別公開日がねらい目ですね。


ぜひ、大山エンリコイサムさんの原点ともいえる作品と最新作に触れられる貴重な機会をお見逃しなく。

展覧会情報

大山エンリコイサム個展 SPECULA

開催期間:2021.10.23. Sat – 11.20. Sat
会場:RICOH ART GALLERY(〒104-0061 東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8F / 9F)

※詳細はギャラリーのWEBページをご覧ください
https://artgallery.ricoh.com/exhibitions/specula



「我に触れよ(Tangite me):コロナ時代に修復を考える」

開催期間:2021/10/18(月)~2021/12/03(金)
会場:

南会場:慶應義塾大学アート・スペース(三田キャンパス 南別館)
東会場:慶應義塾ミュージアム・コモンズ展示室(三田キャンパス 東別館)

※詳細はKeMCoのWEBページをご覧ください。
https://kemco.keio.ac.jp/all-post/20210819/

-ARTIST, BLOG, RECCOMEND, 大山エンリコイサム, 展覧会
-, , , ,

執筆者:

関連記事

\手紙が届いた。八谷和彦展「秋水とM-02J」@無人島プロダクション〜2021/4/18/

空を飛んでみたい。自分の体で、風に乗って。そんな妄想をたくさんしてきた。自分の名前に「翔」の字が入ってるからかしら。どうやったら飛べるだろう。翼を作ってみる?イカロスを想うと墜落してしまいそうだわ…… …

【2022.8.1Podcast出演】木星社Podcast番組「Thursday – Vocalizing Emotions」98分!夏休みスペシャル

チン。確かにエレベーターはわたしの目の前に到着しているはずなのだが、ドアが開かない。集合場所は4階。まあ、階段を使ってもいいのだけど…とエレベーターの横に目をそらすと「手で開けてください」と小さく張り …

本屋しゃんの2023年のメモー3月編

twitterで投稿した内容をほぼそのままに「展覧会」「落語会」「本」の感想を一覧メモとしてまとめています。 3月1日梅崎春生著、荻原魚雷編『怠惰の美徳』(中公文庫)。きっと誰もが持つ怠け欲。本書は滝 …

\本屋しゃんのお店に新しく仲間入り!『塔を下から組むー北海道百年記念塔に関するドローイング展 記録冊子』/

『塔を下から組むー北海道百年記念塔に関するドローイング展 記録冊子』が本屋しゃんのお店に新しく仲間入りをしました。 「塔を下から組むー北海道百年記念塔に関するドローイング展」とは、2018年11月1日 …

\鷲見麿の 画家として最後の個展の図録/

2020年8月21日〜30日まで京都のギャラリーKUNST ARZTで鷲見 麿 の画家として“最後“の個展として開催された「新・聖なるファティア/New Sacred Fatiah」の図録が、本屋しゃ …