春のうららの隅田川〜♪
2月のそんな陽気の日に、両国のlighthouse galleryで開催中の内田ユイさんの個展「CEL DIVISION」に行ってきました。両国駅が近いと思うのだけど、わたしはお散歩がてら錦糸町から歩いて向かいました。
内田ユイさんは、アニメーションのセル画技術を引用して、透明な支持体で絵画を制作されています。わたしが、内田さんのことを知ったのは2016年に住吉で開催された「バラックアウト」。そこで、セル画を引用した技法と、場面の切り取り方、構図に心惹かれたのをよく覚えてる。そかから数年経ち、本屋しゃんのお店で取り扱っている杉本憲相さんの『何十年も前に死んだ。』に、杉本さんと内田さんの対談が掲載されていることに、少しの縁を勝手に感じて、この個展に伺える日をとても楽しみにしていたの。
今回の展覧会のタイトル「CEL DIVISION/セル・ディヴィジョン 」は、細胞分裂/Cell Divisionの「Cell/細胞」 を「Cel/セル画」へ変換した造語。 膨大な量のセル画=Celが連続することで動き、物語が作られるアニメーションと、生命における細胞分裂という現象、プロセスは同じ関係である、と。
なるほど、元となるひとつの画が差異を生じさせながら反復、そして増幅しながら重なり合い絡まりゆくような様子は、DNAの塩基配列を思い出す。
差異と反復。
セル画が重なり合うことでできた襞がとても美しかった。ギャラリーに差し込む陽の光が襞に影を落として、透明だけど陰陽が生まれて、立体感も増すの。
そして、これはわたしの体でもあり、生き様じゃないかと、ふと感じる。細胞分裂という言葉から、人の身体を思い浮かべてしまうからかもしれない。わたしの体を切って開いて、腸を覗けば無数の襞が現れるのでしょう。腸を覆うじゅう毛は栄養を吸収してくれる。一見、ストンとした一本の管に見えるかもしれないけれど、実は無数の個が集まって運動をし、腸としての機能と物語が紡がれている。セル画がアニメーションになるように。
襞。
と、人の体に引っ張られがちな感覚に陥りながらも、運動と時間への問いかけも忘れてはいけない。折りたたまれていくセル画をみていると、いつしか溶け合って、大きな塊になってしまいそうに感じた。ああ、それはきっと、一瞬一瞬という時間の蓄積によって形成されいるわたしを見ているかのようだった。
内田さんの作品を拝見しながら、彫刻家の金巻芳俊さんの作品が頭をよぎった。金巻さんの作品は、一つの絵に、一つの彫刻に複数の時間が同時に現れている。奇しくも、金巻芳俊さんの個展「空蝉センシビリティ」の後期展が八丁堀のギャラリー FUMA contemporary tokyoで開催中。
2つの展覧会を合わせてみることで、時間について、時間を表現することについて、より新たな発見が待っているかもしれない。
展覧会情報
内田 ユイ 個展「CEL DIVISION」
会期:2021年2月13日(土)~2021年2月28日(日)
※定休日 月曜・火曜・水曜
時間:12:00~19:00 ※最終日は17:00まで
処:Light house gallery
〒130-0021 東京都墨田区緑2丁目15−15 1F
※詳細はギャラリーのWEBサイトをご覧ください
http://lighthouse-tokyo.net/gallery_top.html
金巻 芳俊 「空蝉センシビリティ」
会期:前期:2月6日 (土) - 2月17日 (水) | 版画・ドローイング作品 終了
後期:2月20日 (土) - 3月6日 (土) | 木彫作品
時間:12:00 – 19:00
処:FUMA Contemporary Tokyo
〒104-0042 東京都中央区3 中央区入船1-3-9長崎ビル9F
※詳細はギャラリーのWEBサイトをご覧ください。
http://bunkyo-art.co.jp/press/Yoshitoshi_Kanemaki_2021.html