中村翔子さま
1月20日(月)
お便りありがとうございました。
中村さんが山梨県甲斐市の敷島書房を訪ねてくださった日から、もう二か月になるのですね。遠方からお訪ねいただいて、本当に嬉しかったです。南方熊楠と本に導かれて知り合った、なんて言ったら恰好つけていると思われてしまうかな?でも、そう表現するのがいちばん適切でしょう。
はじまりはTwitterでした。中村さん( @shokoootake )も私( @jack1972frost )もTwitterのアカウントを持っているという偶然がありました。前のお便りの中で「超パワースポット的」と印象的な表現をされていた書店ガイド『街灯りとしての本屋』(雷鳥社)。中村さんが読後感のつぶやきの中で、同書で取材されていた敷島書房にも触れてくださっているのを眼にしました。私が博物学者・南方熊楠の大ファンである点に反応してくれていて「ああ、ここに同志がいた!」と感激。すぐに相互フォローとなり、私たちの直接の交流が生まれたのでした。距離が離れていても、それを飛び越えてつながりを得ることができるSNS。その恩恵を改めて強く感じます。
実は、敷島書房が『街灯りとしての本屋』で取材していただくことになったきっかけもSNSにあります。あれは2016年の春先、敷島書房がTwitterを始めてまもなくのことでした。タイムラインに流れてきた蔵前の「H.A.Bookstore」( @koya_books )さんのつぶやきで書店イベント「百書店の本屋祭」への参加募集を知ったのです。「あなたの店で10冊だけ売るとしたら、どんな本を選ぶか」という魅力的な問いかけで各自の選書リストを募り、都内の会場にて展示販売する企画でした。
このイベントに参加したご縁で「H.A.Bookstore」店長の松井祐輔さん、赤坂にある「双子のライオン堂」の竹田信弥さんと知り合いました。どちらのお店も『街灯りとしての本屋』で紹介されており、本の成り立ち自体にもお二人が深く関わっていますね。以前からのやりとりで、本と本屋に対する私の想い、南方熊楠研究会に入って勉強していることなどをお二人に伝えていました。そんな経緯で、刊行計画を立てるとき取材する店舗の候補に入ったようです。
ところで、中村さんはなぜ南方熊楠に関心を持ったのですか?日本史で習うわけでもなく、誰でも知っているという名前でもないので、どんなきっかけがあったのか気になります!
暖冬だと言われますが、ここ数日は山梨でも朝夕の冷え込みが厳しいです。でも、今回のお便りを書きながら人と人、本と人との結びつきを想い、じんわりとこころが温まるのを感じました。そんな機会を与えてくれた中村さんに感謝です。引き続きよろしくお願いします。
一條宣好
【往復書簡メンバープロフィール】
一條宣好(いちじょう・のぶよし)
敷島書房店主、郷土史研究家。
1972年山梨生まれ。小書店を営む両親のもとで手伝いをしながら成長。幼少時に体験した民話絵本の読み聞かせで昔話に興味を持ち、学生時代は民俗学を専攻。卒業後は都内での書店勤務を経て、2008年故郷へ戻り店を受け継ぐ。山梨郷土研究会、南方熊楠研究会などに所属。書店経営のかたわら郷土史や南方熊楠に関する研究、執筆を行っている。読んで書いて考えて、明日へ向かって生きていきたいと願う。ボブ・ディランを愛聴。https://twitter.com/jack1972frost
中村翔子(なかむら・しょうこ)
本屋しゃん/フリーランス企画家
1987年新潟生まれ。「本好きとアート好きと落語好きって繋がれると思うの」。そんな思いを軸に、さまざまな文化や好きを「つなぐ」企画や選書をしかける。書店と図書館でイベント企画・アートコンシェルジュ・広報を経て2019年春に「本屋しゃん」宣言。千葉市美術館 ミュージアムショップ BATICAの本棚担当、季刊誌『tattva』トリメガ研究所連載担当、谷中の旅館 澤の屋でのアートプロジェクト企画、落語会の企画など、ジャンルを越えて奮闘中。下北沢のBOOKSHOP TRAVELLRとECで「本屋しゃんの本屋さん」運営中。新潟出身、落語好き、バナナが大好き。https://twitter.com/shokoootake
【2人をつないだ本】
『街灯りとしての本屋―11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』
著:田中佳祐
構成:竹田信哉
出版社:雷鳥社
http://www.raichosha.co.jp/bcitylight/index
※この往復書簡は2020年2月1日からメディアプラットフォーム「note」で連載していましたが、2023年1月18日より本屋しゃんのほーむぺーじ「企画記事」に移転しました。よろしくお願い致します。