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【レポート】2023→2024 年越し落語会
笑福亭羽光「長屋の年越し」@ザルツ北千住

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「2023年の大晦日もみんなで夢を見られますように。また、みんなの「私小説」の1ページに残る会ができますように。今度はわたしから羽光師匠に大晦日の落語会をご提案させていただきたいなと思っていることを、こっそりとここに宣言しておこう」(2022→2023年越し落語会 レポートより)。



2022→2023の年越し。はじめて、笑福亭羽光師匠の年越し落語会を企画・開催し、まだその余韻冷めやらぬ中、レポートを書いた。そこに留めたわたしの気持ち。気持ちや想いなんて、結構簡単にこぼれ落ちていって、いつの日か忘れてしまう。そんなことの繰り返しだ。むしろ残ることの方が圧倒的に少ないのかもしれない。だからこうやって、言葉にして留めておくことは、とても大切だと思っている。たった一言のメモでも、ほんのちょっとした一節でも、それを糸口に記憶が蘇ってきたりする。

2023年の年末が迫る中、2022→2023の年越し落語会のレポートを読み返し、過去のわたしの言葉と気持ちに背中をおされるように、「今年もみんなで集まろう」と、2023→2024の年越し落語会の企画をはじめた。

さて、では、今年はどんな会にしようかしら。
羽光師匠と打ち合わせを重ねる。

落語は季節を先取りするのが粋とされていると教えてくださったのは羽光師匠。
年越し落語会は、参加者のみなさまにも飲み物や食べ物を持ち寄っていただく、ホームパーティーのような雰囲気も大切にしている。
落語の粋な表情と、年越し落語会の雰囲気を足し算でいないかしら。
春らしくて、みんなで飲食持ち寄りでわいわいする雰囲気を落語でも表現できないかしら。
と、考える中で、「貧乏花見/長屋の花見」が話題にあがり、それで行こう!と、師匠とわたしの気持ちがピタリと一致して、会の方向性が決まった。

落語会のタイトルも演目を文字って「長屋の年越し」とした。

数カ月前から準備していても、あっという間の年末、大晦日。
あれよあれよと本番の日を迎えた。

会場は北千住の築60年の古民家。もともと今のオーナーのおばあさまが住んでいたお家をリフォームして、さまざまな人が集まり、思い思いの過ごし方をする場所に生まれ変わり、多くの人に活用をされている。

開場すると、思い思いの食べ物や飲み物を片手に、参加者のみなさまがぞくぞくといらっしゃった。入るや否や、「はじめてきたのに落ち着く」「懐かしい」と、すんなりと会場の空気に溶け込んでくださったご様子。なるほど、「いらっしゃいませ」というより、「ただいま」「おかえりなさい」という言葉のかけあいが合いそうだ。

羽光師匠は「貧乏花見/長屋の花見」と「天神山」を口演。
「貧乏花見/長屋の花見」も「天神山」も春の噺。桜色が脳裏に浮かぶ。
わたしは、羽光師匠の新作落語はもちろんですが、実は師匠の古典落語はとても魅力的だと思う。
言葉を選ばず言うなら、大好きだ。
登場人物の人間味が滲み出ているとともに、憎めない茶目っ気がはじめている。そして、生活感の色気がある。婀娜っぽさとかそういうことではなくて、生きていることの色気、生命力だ。さらに、羽光師匠が噺すと演目のコンセプトがよく伝わってくる。この演目から何を学べるのか、落語をさらに一歩深く楽しめる。そんな要素が相まって、師匠の落語はじんわり心を温められるし、本を読み解くような知的好奇心もくすぐられる。

春らしい賑やかな奮起に包まれながら、新作落語とは違うしっとりとした空気が流れ、穏やかなステキな時間だった。



落語の間に、羽光師匠と本屋しゃんの「2023年振り返りトーク」を挟んだ。師匠と一緒に作らせていただいた落語会をひとつずつ辿っていく。

一、2022→2023 年越し落語会
https://honyashan.com/%e4%bc%81%e7%94%bb/20221231syoufukuteiukou-toshikoshirakugo/

一、笑福亭羽光 墨東「艶」噺
https://honyashan.com/%e4%bc%81%e7%94%bb/shofukuteiuko-bokutotsuyabanasi-20230422/

一、月亭太遊+笑福亭羽光「拡張する落語」京都編
https://honyashan.com/%e4%bc%81%e7%94%bb/20230520tsukiteitaiyu-shohukuteiuko-rakugo-kyoto/

一、BOOKSHOP TRAVELLER落語会 笑福亭羽光 「SFトラベラー」
https://honyashan.com/%e4%bc%81%e7%94%bb/shofukuteiuko-sftraveller-20230616/

一、野菜と日本酒と落語の会 第3弾 笑福亭羽光+月亭太遊「拡張する落語」東京編
https://honyashan.com/%e4%bc%81%e7%94%bb/20230722tsukiteitaiyu-shohukuteiuko-rakugo-tokyo/

一、まちの本屋さんで、まちの落語会 笑福亭羽光 「本から生まれた落語」 新潟
https://honyashan.com/%e4%bc%81%e7%94%bb/shofukuteiuko-sanjopublishing-20230924/

ひとつひとつ振り返ると、それぞれにドラマもあったし、事件も珍事もあったなとしみじみ。そして、師匠と落語について、落語会について、一緒にたくさん考えながら、さまざまな会を作らせていただけたことに、感謝しかない。2024年も師匠の魅力を惹きだせる会づくりを頑張りたい。そして何より、お客様に楽しい時間を過ごし、おもろい体験をしていただけるように精進精進。

本屋しゃんがチラシのデザインディレクションをさせていただいた、羽光師匠の主任興行「新宿末廣亭 3月下席 夜の部」「浅草演芸ホール11月中席前半 夜の部 」についても話した。チラシデザインから新宿末廣亭と浅草演芸ホールの相違点などにも言及。デザインから見る落語の舞台裏だ。

会の最後には羽光師匠と本屋しゃんの今年の漢字一文字を発表。
羽光師匠は「親」、本屋しゃんは「光」。
「親切」から「親」をとった羽光師匠。本屋しゃんは、羽光師匠はじめ、たくさんの方に光をさしていただいたという感謝と、羽光師匠のめくりをいつかかけるようになるぞという想いも込めた。本屋しゃんの字は、そりゃもう拙すぎなので…これまた精進精進。


落語会のあとは、みんなで懇親会。ピザに寿司に生春巻き…それに加えて、みなさんが持参してくださった、長屋の花見にちなんでの沢庵やかまぼこ、たまごやき、地元のお酒やオススメの酒の肴など、食卓はずいぶんと賑やか。羽光師匠の落語を楽しみに集まったみなさん、自然と話に花が咲き、食卓のあたたかさが増していく。たくさんの差し入れありがとうございました!

間もなく年が明ける。みんなでテレビのある部屋に移動して「ゆく年くる年」をみながら、カウントダウン。2024年1月1日0:00にクラッカーを鳴らした。もはやクラッカーを鳴らすことが恒例だ。結構乗りあがるの。



それからみんなで近所の千住本氷川神社に初詣へ。茅の輪をくぐってからの参拝。
2024年がみなみなさまにとって、健やかで、おもしろい一年になりますように。
お神酒をぐいっと飲み干して、みかんに福豆にお札をいただいた。


初詣を終えると、不思議とぐんぐんと夜が明けていく。
空が明るくなって、カラスの鳴き声が飛び交う。
新年の朝焼け。
朝まで残ってくださった方と片づけをして(感謝)、それぞれ帰路へ。
羽光師匠は三島でのお正月の落語会へ。
それぞれの道へ。

みんなが気兼ねなく集まれる場所の大切さ。
一緒に笑ったり、食卓を囲む優しさ。
2年続けて年越しの会を開催して、改めて感じた。
落語会は誰かにとっての居場所になるんだ。
また、今年の大晦日も、みんなで集まって過ごしたいなと思う。

落語会詳細

アーカイブ

【追記:記録しておきたいから書いておく】
本屋しゃんは朝マックをキメてから、しばし眠りについた。
せっかくのお正月、寝正月にはしたくないと、布団にねっとり絡みついている身体をむりやり引きはがし、散歩に出かけた。隅田川沿い。好きな散歩コースだ。

今回の年越し落語会もよかったな、みんなで集まれて嬉しかったな、次はもっとどうしたら良い会になるだろうか…そんなことを考えながら、キラキラ光る川面をぼんやり眺めつつ歩みを進める。

そうだ、親にも新年の挨拶をしようと散歩しながら,、故郷・新潟に電話をかける。電話口の母にぼんやりした声で「あけましておめでと~」と言うと、「おめでとう。たった今、大きな地震があったのよ、知らないの?! だからちょっとそれどころじゃないの。とても怖い。落ち着いたらこっちからかけなおすわ」と母。電話は切れる。ツーツーツーと無機質な音が耳をさしてくる。

すぐに地震のことを調べると、耳をさしていた音が心にも突き刺さってくる。どうかどうか心身を守って、無事でいてくださいと、祈りながら、家に帰った。

わたしはわたしの生活が続く。しっかり生活しようと思う。

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