チン。
確かにエレベーターはわたしの目の前に到着しているはずなのだが、ドアが開かない。
集合場所は4階。まあ、階段を使ってもいいのだけど…とエレベーターの横に目をそらすと「手で開けてください」と小さく張り紙がしてある。
ふむ。
これまた小さい取っ手に指を入れて、ぐいっと左側に引いてみる。重い。見た目以上に重い。ギギギギギギとゆっくりゆっくりドアが動く。開いたと思ったら、もう1枚鉄格子のドアが現れた。こちらもギギギっとあける。ダイヤ型に編まれた鉄格子が折り重なっていく。ようやくエレベーターの中に入ると「しっかり閉めてください」と、また小さな張り紙だ。開けるのにこれだけ苦労したドア。開けたときとは逆に、まずは鉄格子を、続いて重たいドアを閉める。閉める時は、ちょっと力を入れただけで、ドアが自らギ―――っと閉まってくれたので、ラクチンだ……と安堵したのもつかの間、ばたんっと大きな音を立てて密室になり、急に不安が押し寄せる。狭いし暗い。果たして、わたしはこのエレベーターから脱出ができるのか…。
突起型の行先ボタンで、「4」を押す。上昇しているらしい圧を体が感じる。
海外では、この手のエレベーターはたまに乗ったことがあるけれど、日本でははじめてなので驚いた。
ガゴン。
どうやら4階に到着したらしい。
また重たい二重のドアをあける。なんとか、人ひとり出られるくらいの隙間ができるくらいまであけて、すっと脱出した。不安4割、楽しさ6割のエレベータの旅だった。帰りは階段だな。
後で調べたら、このビルは1962年にできたらしい。
きっとこの町の移り変わりを見てきたんだね。
今日は、出版社・木星社さんのPodcast番組「Thursday – Vocalizing Emotions」にゲストとしてお声がけいただき、このビルにやって来て、このエレベーターに出会えました。
木星社さんとの出会いは、MIOKOさんの個展「たまにはヨソの布団の上。」@旅館 澤の屋を、取材いただいたことがきっかけ。深いところを掘っていただけて嬉しい取材で、改めて感謝です。
→→https://www.mokusei.pub/series/honyashan
今回は、木星社のお二人とMIOKOさんと一緒に、本のこと、落語のこと、走ること、旅のことナドナドについてお話しました。いろんな掛け算が勃発した楽しい時間でした。本が好きだったり、走ったり…ちょっとずつ興味関心、好きなことはかぶっているものの、違いの方が大きくて、同じ質問にもそれぞれの良い感じにぶっとんだ回答が飛び交っています。さまざまな価値観が出会うのはおもしろいですね。
番組は「前半」「後半」の2部構成。
前半は、木星社さんの新刊、リッキー・ゲイツ『アメリカを巡る旅 3,700マイルを走って見つけた、僕たちのこと。』の翻訳を手掛けられた、川鍋明日香さんが登場。「キャラ」の話、最高。
そして後半に、MIOKOさんと本屋しゃんが登場します。
耳を傾けていただけたら嬉しいです。
聴く読書のような。
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https://podcasts.apple.com/jp/podcast/thursday-vocalizing-emotions/id1606301644?i=1000574571212