広島では3月11日に桜の開花宣言がありましたね〜。
春がじわじわとやってきてますね。
上野公園では寒緋桜(かんひさくら)がたっぷり咲いていました。
寒い時期に緋色の花を咲かせるから寒緋桜。
空の青と鮮やかな緋色のコントラストがとてもきれい。
ぽってりした花の形も和ませてくれます。
普段は、なかなか街の樹に気を止めることはないけれど、やはり桜は気になりますよね。だけど、今年、忘れてはいけない樹があります!!
その名も「メタセコイア」
わたしがメタセコイアを知ったのは上京して間もない頃。だから10年くらい前かしら。当時、図書館で勉強をする毎日だったのですが、その図書館の入口に続く並木道の樹に「メタセコイア」とプレートが取り付けられていたのです。大地にしっかり根を張り、どっしりしながら、すっくと伸びやかな美しい樹。
「メタセコイア?」
わたしは思いました。
「何だか、戦隊ものか仮面ライダーに出てきそうな名前だな。かっこいいんですけど。きっとラスボスだよね。強いのよ」
頭の中で妄想は続きます。
「ついに出たな!メタセコイア!!」
「ははははは!俺の手下を随分可愛がってくれたようだな。今日はこれまで通りにはいかないぞ(にやり)」
「ぐぬぬぬぬ………覚悟ぉおお」
「おやおや、威勢がいいのお。どこからでもかかってこいー」
エイッ、トォーーーーッ。
はい。わたしは、その一本の樹からこんな妄想をして楽しんでいました。
すっかり「メタセコイア」に心奪われましたね。入口はかっこいい名前から。何がきっかけかなんてわかりませんね。ラッキーなことにそこは図書館。勉強の前に、メタセコイアがどんな樹かを調べたら「生きた化石」と書かれている。化石が生きている???興味は深まるいっぽうですが、それからメタセコイアはわたしの意識の水面下に潜り込んだまま、冬眠していました。
が、しかし、突然、メタセコイアに再会することになったのです。
企画展「東日本大震災から10年-あの日からの地震研究-」を見に訪れた、国立科学博物館。
震災の展示会場の隣で命名80周年記念 企画展「メタセコイア -生きている化石は語る」が開催されていたのです。
一旦は、冬眠していたわたしのメタセコイアに対する好奇心が水面からふあっと浮上です。「メタセコイア!!!久しぶりじゃないか」きっと、それまでにも、街でメタセコイアの隣を通り過ぎたりしていたのでしょうに。
2021年から遡ること80年前。
1941年に京都大学の三木茂(みき・しげる)博士が「メタセコイア」と命名しました。
そう今年はメタセコイアと命名されてから80周年。祝!
メタセコイアが発見されたきっかけは「化石」。
何でも、このきっかけとなった化石は、ヒノキ科に属するセコイアや、タクソディウム(ヌマスギ)と呼ばれる植物だと思われていたらしいのですが、実はこの化石はこれらの植物ではなくて、新しい種類の植物ではないか!!と三木博士が研究を進める中で気づいたのです。「お主はもしかして、セコイアではないな?!」と。ずっと勘違いされてきた化石なのですね〜。
そこで三木博士は、間違われていた「セコイア」に「後の」という意味をもつ「メタ」をつけて、「メタセコイア」と名付けたそうです。「よし、今日からお前はメタセコイアじゃ!」ふむふむ。こうして、間違いは払拭され、新しい種の発見にいたり、わたしがきゅんとしてしまったかっこいい名前が誕生したのですね。
さらに、化石がきっかけだから、もう絶滅している植物と思いきや、何とですね、三木博士がメタセコイアと命名してから5年後に中国の四川省(現在の湖北省)で生きているメタセコイアが発見されたのです!!ぬぬぬ、だから「生きている化石」と呼ばれているのですね。間違われていた化石から発見されて、しかも現代にも生きていることがわかった!という、発見の連続。
日本では消滅していたらしいのですが、中国で生きていることがわかった後、メタセコイア保護のために、核となる研究者の方々が動き、アメリカでメタセコイアの種子から苗を育てて、その苗が日本全国の大学や植物園に配布されたことで、日本にメタセコイアが戻ってきたそうです。
今では、それこそ図書館とか、学校の校庭とか、並木道とか様々なところで、私たちを見守ってくれているメタセコイアですが、こうして発見された経緯や、なぜ、今身近になっているのかを知ると、ロマンチックというか、数奇な運命というか、ますます好奇心をそそってきますなあ、メタセコイア。
展示は、三木博士がいかにしてきっかけとなった化石から新しい種類の植物と気づいたのか、さらにメタセコイアと日本の関係、なぜ、中国でメタセコイアは生きていたのか、などなど、ドラマチックに謎に包まれたメタセコイアを軸に、地球環境について、自然との共存についてを考えることができました。
決して、堅苦しい展示ではなくて、かわいいイラストレーションの三木博士が展示会場を案内してくれますよ〜。会場中に三木博士のナレーションがこだましていたのが、ナイスでした(笑)まさに木霊かな。
きっかけは、ずっと前に感じていた、かっこいい名前の樹だなあという、他愛もない好奇心。それが、偶然であった展示で深まるという奇遇な体験。いろいろな方向に無邪気にアンテナを張り巡らしておく大切さというか、楽しさをしみじみ感じました。
展示を見終わって……それまで、何となくラスボスっぽくキャラクター設定をしていたメタセコイアに、ごめん、今日から地球を守るヒーローの設定で物語を作り直すね、なんて思うのでした。
展覧会情報
命名80周年記念
企画展「メタセコイア -生きている化石は語る」
会期:2021年1月26日(火)~4月4日(日)
会場:国立科学博物館 日本館1階企画展示室
※東京都台東区上野公園 7-20
入場料:一般・大学生630円(税込)、高校生以下および65歳以上無料
※常設展示入館料のみで観覧可能。ただし入館事前予約が必要(2021.3.14現在)
※詳細は公式WEBページをご覧ください
https://www.kahaku.go.jp/event/2021/01metasequoia/