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\「外の目で中から見る日本」−Erica Ward Solo Exhibition@Atelier485 柴又〜2021年6月20日/

投稿日:2021-06-20 更新日:

アーティスト エリカ・ワードさんとの出会いは、わたしがエリカさんの作品集『路線図色』に惚れ込んだことがきっかけでした。

本書は、銀座線、丸ノ内線、日比谷線、東西線、浅草線……など、東京の生活で欠かすことができない地下鉄の「それぞれの色=ラインカラー」を用いた女性を描いたシリーズ。女性たちがラインカラーを纏うことで、いつもと違う地下鉄の表情に出会えるとともに、ラインカラーという意味から解放された「色」の、「色」としての純粋な美しさを堪能できる一冊。

この本を手に取り、ページを開いたら…地下鉄から「色」が抽出され、女性たちと溶け合うことで、無機質だと思っていた地下鉄に生命が宿ったかのような感覚になりました。それに、地下鉄の「色」に注目したことってなかったから、こんなに身近に生活に寄り添った美しい色があったんだなあと発見です!『路線図色』との出会いで、自分がお世話になっている地下鉄がとてもカラフルに動き出して楽しくなったの。

こちらは、2020/7/28 ~ 8/2に、高円寺の CLOUDS ART + COFFEEの個展で展示された最新シリーズ「えんぎもの」の作品集。わたしは、本展ではじめてエリカさんの作品を間近で拝見できて、とても嬉しかったことを覚えています。

本シリーズはコロナ禍中に描かれた。不安に襲われるこの世界の軌道が好転する願いをこめて「えんぎもの」をテーマにしたとエリカさんはお話しされます。このテーマからエリカさんのあたたかい人柄をも感じ取れますよね。ダルマや招き猫など、日本で縁起がよいとされるものたちと想像の東京風景があわさることで、まるで街が守られ、幸運を引き寄せるかのよう。

わたしは、「えんぎもの」シリーズを拝見して、この街にはきっと隅々に神様が宿っているんだ、そんな気持ちになりました。八百万の神様かなあ。知らないうちに、わたしたちを見守ってくれているのかもしれません。何気ない風景、何気ない毎日が愛おしくなる。ちょっとした嬉しい出来事がもうひとまわりハッピーになるなあ、とそんな気持ちに包まれました。

カリフォルニア出身のエリカさん。
浮世絵やアールヌーヴォーにインスパイアされて、ペンのはっきりした輪郭と水彩の優しい色で美人画を描かれています。2016年からは拠点を東京に移され、高層ビル、路線など大都会の風景が作品に現れはじめたといいます。東京に来るまでは、都市や建築物はほとんど描かれてこなかったとのこと。東京に来てから、たくさんの建物に圧倒されたとともに、そこにおもしろさを感じて、いつしか高層ビルをはじめとした、都市の姿を描いていたんだって。なるほど、地下鉄の「色」のおもしろさや美しさになかなか気づことができないように、もっと東京を俯瞰した時のおもしろさや魅力も、住み慣れてしまっているゆえに、見慣れてしまっているゆえに、生活圏内すぎるゆえになかなか気づけていないかもしれません。そんな中、カリフォルニア出身のエリカさんの「外の目」から見た日本、そして東京は、「内の目」だけでは発見できない「らしさ」を語りかけてくれるのだと感じます。エリカさんの言葉を借りると「外の目で中から見る日本」を描いているのです。

現在、エリカさんの個展が、柴又のギャラリー「Atelier485」で開催中です!6月20日まで。寅さんの町、柴又だ!

東京都の英語版雑誌”Tokyo”春/夏2021の表紙のために描かれた作品《Tokyo in Bloom》

今回の個展で、エリカさんがなぜ、無機質な都市に、有機的な人や動植物、そして月をかけ合わせて描くのか、その深淵を改めて知ることができました。

2016年東京に移り住んで以来、「東京」がなんであるかを問いかける作品を描くようになりました。いろんな層が重なり、数えきれないほどの部分でできているのに一個体としてうまく機能するこの都市。
メタファーを描くことで、東京の本質に近づけられるのではないかと思いました。

例えば、東京の風景と人物を一緒に描くことで、東京を人格化し、都市にも性格があり、また人間の様に循環器官を持つ生物だということができます。

それとも、東京を生き物ではなく月に例えた場合はどうでしょうか?東京は月と同じく、生きてはいないが日々、少しずつ変化します。

最近、東京は「盆栽」ではないかという説が気に入っています。盆栽のように東京は人間の手によって形を決められているが自身も生命を持ち、成長していく生き物である。

作品は私の中の想像の断片であり、「東京」の要素を明らかにしようとする試みのメタファーです。展示を通して、皆さんも都市に関する新しい視点が見つけられたら嬉しいです。

Erica Ward Solo Exhibition at Atelier485 エリカ・ワード ステイトメントより

そっか、東京は生きてるんだ。
東京は日々変化する月のような存在。
東京は人の手によって作られたものかもしれないけれど、それ自体が生命を持ち、成長をくりかえす盆栽のような存在。
エリカさんのそんな東京への眼差しは、ただ住んでいるだけではなかなか気づけない、東京のおもしろさを改めて気づかせてくれると共に、東京とは何か?を考えるきっかけをくれる。今まで、エリカさんの作品は新しい視点をもたらしてくれておもしろいな〜と思っていたのだけれど、今回の個展で確信したのは、エリカさんは、その新しい視点を通じて、東京の「本質」を見せてくれているんだ、ということ。


疲れて地下鉄とか乗っていると、あ〜〜もう都会なんて嫌っ!と思ってしまうことがあるのが正直なところ。だけど、エリカさんの作品をみると、東京がますます不思議でおもしろく、なんだか愛おしくなるんだな。

「Atelier485」は柴又駅からすぐ近く!目の前におもしろそうな模型屋さんもあるよ。下町お散歩も合わせて、ぜひ?

展覧会情報

Erica Ward Solo Exhibition

会期:
Jun. 12(Sat.)12:00〜22:00  Jun. 13(Sun)13:00〜17:00
Jun. 19(Sat.)13:00〜17:00  Jun. 20(Sun)13:00〜17:00

場所:Atelier485
〒125-0052 東京都葛飾区柴又4丁目8−5

※詳細はギャラリーのWEBサイトをご覧ください

https://atelier485.weebly.com/

関連情報

本屋しゃんのお店でも、エリカ・ワードさんの作品集を販売しています。
2021年6月20日現在、好評につき完売してます。近日、再入荷予定ですので、楽しみにお待ちください!
 

https://honyashan.thebase.in/

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