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【レポート】「TRiPー落語×浮世絵ー」第5回 テーマ:雪  2024年11月16日(土)@仲町の家・北千住

投稿日:2024-12-18 更新日:

どことなくまだ夏を引きずっているのじゃないかしら…前の季節の残り香を感じる11月。
だけど、よくよく肌の感度を研ぎ澄ませてみると、空気はどことなくツンとしていて、仲町の家の縁側にさしこむ陽は、あたたかくもどこか青みを帯びていて凛としている。

座布団を縁側に干す。お客様も演者もリフレッシュして気持ちよくすごせるように、夕刻の「TRiP」の準備は朝からはじまる。座布団が気持ちよさそうに日光浴をしていると、あお馬さんがやってきた。いつも早く会場入りするあお馬さんだが、今日はいつになく早い。「ピアノを練習します!」とのこと。そう、TRiPは毎回全員がピアノを弾く(あお馬さんと本屋しゃんは超初心者、それまでピアノをほとんど触ったことがないレベル)。本番に向けてこれから猛練習というわけ。

夏を引きずっているといいつつも、日が暮れるのはやっぱり早くて、TRiPの開場時間である18時にはすでに真っ暗。今日もエントランスに地口行灯をともして、TRiPの世界へとお客様をお連れするのですが、今日は、この夏に作っていただいた「TRiP」の名前が入った地口行灯をはじめて会場にかかげた。仲町の家の入口にぽわんとあたたかく光るTRiPの地口行灯。千住の大切な伝統文化のひとつの仲間になれたようなそんな心持がして、嬉しかった。ぞくぞくとご来場されるお客様も、地口行灯のあたたかさと美しさを楽しんでくださっているようで、ともるあかりのごとくあたたかい気持ちになった。

開場から開演の時間は渡邉さんがオープニングアクトとしてJAZZピアノの演奏をし会場をあたためます。ピアノの音が心地よく仲町の家に溶け込みます。お客様は耳を傾けながら、おのおの開演の時間をリラックスしてお過ごしいただいているご様子。こうして開演までの時間で、だんだんと仲町の家の空気と「TRiP」の空気とお客様の空気を交わらせて馴染ませていくのです。

今回のテーマは「雪」。立冬を迎える11月ですもの、「雪」は季節感もあってぴったりね、なあんて具合にテーマを決めたのですが、ここ東京では雪の気配もなく…いや、だからこそ、落語と浮世絵の力で、お客様には一足早く、「雪」を楽しんでいただこうじゃないかという気概で、幕を開けました。


はじめは、あお馬さんと本屋しゃんのアイスブレイクトーク。新潟出身の本屋しゃん。小学校の低学年くらいの頃の冬の日はスキーウエアを着て登校していたのだよ…などなど雪にまつわる思い出を話しながら、会場を見渡すとお客様がすでに目をキラキラさせて開演を待ち遠しく思われていることが伝わってきます。そうそう、お客様の中にちらほらと新潟出身の方がいらっしゃって、あら奇遇。

それでは、いよいよ、あお馬さんの落語からスタートです。
一席目は『雑排』。
ご隠居のところに、仕事が半日で終わったという八五郎がご隠居と話したい! とやってくる。最近、ご隠居は和歌・俳諧にこっているとのことで、それではいっちょ、八五郎もやってみたい、教えてもらいたいと相成って、季題を出して俳句を詠みあうことに…。ご隠居の年を重ねたずっしり感&のんびり感と、八五郎の元気で素直で一直線な性格の雰囲気が良く絡み合いリズミカルに噺が進みます。さすがのあお馬さん、落語の登場人物の人柄を見事に描きわけ、交差させます。「初雪や」を季語にポンポンポンっと俳句を読みをう様子は、言葉遊びの楽しさ、日本語のおもしろさも伝わってきます。会場も八五郎のすっとこどっこいな俳句に暖かな笑いが起こり、ほっこりした空気になりました。落語の中に雪がどのように出てくるのか、さらに、言葉でどのように雪を表すのか、落語と世界と俳句の世界と、2重に日本語の美しさが良く伝わる、楽しい一席でした。

お次は渡邉さんの「浮世絵噺」。高座から浮世絵噺への場面転換時は、気合を入れて早々と会場入りしたあお馬さんのピアノ演奏で場が盛り上がります。曲目は「ゆきやこんこん」。TRiPのメンバー全員でピアノを弾こうと決めた時、あお馬さんが「まちがってもいい、笑われてもいい」とバキバキのチャレンジ精神を見せてくれました。そんな、あお馬さんの姿勢と想いが、この日のTRiPでも突き刺さってきた次第。



さてさて無事に「浮世絵噺」の舞台が完成したところで、渡邉さんのお噺がかじまります。冒頭では、浮世絵の技術について、浮世絵の値段、出版社と浮世絵師などなど浮世絵のイロハからはじまります。普段、浮世絵に触れない人にもちゃんと導線が作られて、この後広がる、雪と浮世絵の噺の土台が築かれました。
たくさん雪にまつわる浮世絵を用意してくださった渡邉さん。雪景色を通じて江戸のいろいろな地域の裏話も出てきて、江戸の風俗の学びにもつながりました。さらに、忘れてならなのが、渡邉さんのズームイン!視線。今回もちょっと見ただけでは気づかない浮世絵のおもしろさを、渡邉さんの視点で拾って、拡大したり、新しい見方を紹介してくださいました。脇役たちも渡邉さんの手にかかると、いい味を出してくれている大切な要素として、生き生きと動き出すのです。この渡邉さんならではの視点はユーモアあふれ、会場からは笑いの声が絶えません。まさに、浮世絵講座ではなくてTRiPならではの、渡邉さんならでは「浮世絵噺」ここにあり、です。


渡邉さんが降壇する際は、本屋しゃんがピアノで「カントリーロード」を弾きました(お粗末様でした)。一応、選曲理由がありまして、先にお伝えしたように、わたしの故郷が「雪国」ゆえに、今回のテーマ「雪」にピタリと合うだろうという塩梅です。



仲入りをはさんで、あお馬さんがもう一席、『夢金』を。金のことばかり考えている船頭の熊蔵。雪
のしんしんと降る晩、船宿の二階でお金の寝言を言いながら寝込んでいると、浪人風な侍とお嬢さん風な娘を連れてやって来て、船を出してくれというのですが…。

一席目はご陽気で明るい雪のお噺でしたが、こちらはちょっと暗く重たい空気が漂います。
真っ黒な空にふぶく雪が会場にも立ち込め本当に手指の先まで冷えてくるかのよう、さらに櫓を漕ぐ時の水や雪の重たさとそれゆえの難儀さが伝播しこちらも朝晩でくるかのような、あお馬さんの見事な表現力。さらに、何か良くないことが起こりそうな不穏な空気が見事に醸され…会場のみなさまも固唾を呑んで、あお馬さんの『夢金』の世界に没入されていることが良く伝わってきます。一席目と二席目で、違う雰囲気の演目を選ぶことで、会全体にもリズムが生まれ、落語におけるさまざまな「雪」に出会っていただくことができたと感じています。渡邉さんの浮世絵噺で、『夢金』を彷彿させる浮世絵を紹介されたので、見事に浮世絵と落語の世界がつながっていきました。

最後は、3人のサインが入った恒例の色紙プレゼントタイム! ジャンケンで決めることが多いモノの、今回は「11月16日」に誕生日が近い人にプレゼントすることにしました。すると、なんとドンピシャ!今日この日がお誕生のお客様がいらっしゃって、みんなで「おめでと~~」とお祝いです。お誕生日にTRiPにご参加いただけるなんて光栄です。会場からのたくさんのお祝いの声を聴いて、あたたかいお客様のおかがで、TRiPは良い空気の中で開催できているんだなとしみじみ感じました。




今回は、はじめてトリ吉が描かれたあお馬さんオリジナルのドリップ珈琲の販売しました。「明日の朝に飲みます~」「珈琲大好きだから嬉しいです!」という声とともに多くの方にコーヒーを手に取っていただけて嬉しかったです。


これからも三人だからこそできる攻め&前進して、ますますお客様に楽しんでいただける機会に
育てていきたいと思います。


2024年もTRiPをありがとうございました!!
次回は、2025年3月を予定しています。
来年もみなさまも楽しい旅にご案内できるようにTRIPメンバー一同、頑張ります!

では、良いお年を!

落語会詳細

「TRiP ー落語×浮世絵ー」
第5回 テーマ:雪

開催日 2024年11月16日(土)
時間 18:00開場、18:30開演〜20:30終演予定
※18:00~開演時間までOPENING ACT 渡邉晃によるJAZZピアノ
会場 仲町の家 (〒120-0036 足立区千住仲町29-1)
https://honyashan.com/welcome/20241116trip-rakugo-ukiyoe-05/

演目
一、雑俳 あお馬
一、浮世絵噺 晃
一、夢金 あお馬

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