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\旅館 澤の屋アート&ブックプロジェクト 「ようこそ『えんぎやど』へ」への道/

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2021年9月1日(水)~2021年9月30日(木)の1か月間、東京都台東区谷中の旅館 澤の屋さんを舞台にアート&ブックプロジェクト「ようこそ『えんぎやど』へ」を開催します。


今日は本企画の舞台裏というか、企画者としての想いをつづろうと思います。



わたし、本屋しゃんもたびたび、デイユースや宿泊で滞在させていただいている旅館 澤の屋さん。
創業70年という老舗旅館であり、約35年も前から、日本全国でも先駆的にインバウンドの受け入れをはじめました。世界中の旅人から愛されて、これまでに92カ国、20万人が滞在しました。一度訪れたら愛される理由はすぐわかります。澤の屋のご家族のあたたかく等身大のおもてなし、館内はホッとできる日本的なしつらえ。飾らない下町の日常に身を委ねられます。

はじめて旅館 澤の屋さんを知ったのは数年前。
アムステルダムの友人から「東京に旅をするのだけど、良い宿を知らないか」と相談を受けました。日本が大好きな彼がのんびり楽しくすごせる宿をさがしてあげたいなと調べていると「旅館 澤の屋」という海外からの旅人を積極的に受け入れてくれる宿がある、しかも、とても人気らしい!という情報を得て、さっそく友人に教えて、宿泊予約のお手伝い。なかなか予約が取りづらいらしいのですが、友人の希望日がちょうど空いていてラッキーでした。友人が来日した際に、日暮里まで迎えに行って、一緒に澤の屋さんまで谷根千散歩を楽しみました。うんうん、千という立地も魅力的ですね。後日、友人から「澤の屋さん、超よかったよ~、ありがと~」と大満足なメッセージが届きました。そりゃあ、よかったよかった。そう、海外の友人のお手伝いが、わたしと澤の屋さんとの出会い。

友人が澤の屋さんにとても喜んでくれたので、「どんなお宿なんだろう」と気になっていたものの、わたしは、リサーとして澤の屋さんまでアテンドしただけでしたし、宿泊する機会もなく、澤の屋さんは、わたしの思い出の1ページに刻まれた場所、アルバムをめくると写っている場所という距離感でした。




ちなみに、こちらの記事は友人との出会いをつづっています。

情熱を注いでみんなを楽しくするべきだ!
ーVanja Rukavina&Karel van Laere・BOKKO /ボッコ/복고/復

https://note.com/honyashan/n/n40ae5097664c




時は経ち、2020年。
新型コロナウイルスが猛威を振るいはじめます。
そんなある日、わたしのtwitterのタイムラインに澤の屋さんのつぶやきが流れてきました。「デイユース、日帰り貸切風呂はじめました!」 と。みんな、コロナ禍で大変な中、さまざまな工夫をして頑張っているんだなと、いち情報として入手したら、あとはいつもどおりスクロールして次へ次へと流してしまいそうになったのですが、「いや、待てよ。澤の屋さんって聞いたことあるな。そうだ、あの澤の屋さんだ!」 と、友人との思い出がよみがえってきました。友人がとても喜んでいたお宿、とってもお世話になったお宿、わたしにとってもステキな思い出の1ページに刻まれているお宿。次の瞬間には、 行かなくちゃ、そんな直感が働き、「よし。デイユースしてみよう」と、予約をしていました。

デイユースは最高でした。和風の部屋で仕事。昼ごはんは、受付時にいただいた周辺マップを片手に、谷根千を散歩して気になったお店でテイクアウト。仕事に疲れたらお風呂に入らせていただき、そのあとは畳の上でしばしゴロゴロ。なかなか外に出ることができない日々、心身ともに大いにリフレッシュすることができました。

帰り際、来た時から気になっていたある壁をしばし鑑賞。日本地図が真ん中に描かれ、その周辺に日本中の観光地や宿のパンフレットが所狭しと配架されているのです。すごい迫力。すると、澤の屋の澤 新さんが「この壁は館主が、これまでに講演などをして訪れた先の海外の方向けのパンフレットです」と教えてくれました。谷根千や東京に関するパンフレットが置いてあるのはわかるけど、なぜ、日本地図? なぜ、北海道から沖縄までの情報がこんなに集まっているんだろう? と、気になっていた壁。それに、このパンフレットの量!! 紙の本が好きなひとりとして、パンフレットやフリーペーパーにもテンションがあがります。一体何なんだ、このステキな壁は!! その疑問が解けました。なるほど、先ほどお伝えしたように、澤の屋さんは海外からの旅人の受け入れを日本でもいち早くはじめられた先駆者です。だから、日本全国の観光地や旅館が、海外の方の受け入れについて澤の屋さんのノウハウを学びたい! お話を聞きたい! と講演のオファーが後を絶たなかったようです。ここに集まっているパンフレットは講演した先々が海外の方むけに作ったパンフレットだったのです。ぜひ澤の屋さんにパンフレットをおいてほしいという、みんなの想いに応えてこられた結果です。もはや、澤の屋さんの歴史、地層ですし、海外の方向けの観光情報のアーカイヴであり、ライブラリー! いろいろパンフレットを手に取ってみてみると、海外に向けて観光地を紹介する方法、どこを切り取るのか、何をおすすめするのか、どんな写真を使うのか、言葉の選び方など、「外へ発信する視線」を知ることができて、逆に今まで知らなかった日本の「内側」に出会えます。

しかし、コロナ禍において、毎日、旅人でにぎわっていた澤の屋さんからも、旅人の姿が消えてしまったとのこと。予約はキャンセルが続き(というか、そもそも来れない!)、予約表はだんだんと空白のページが増えていく…。しかし、そんな状況を察してか、常連のお客様や、これまでに訪れた旅人たちから応援のメッセージがたくさん寄せられたことも相まって、落ち込んでいてはいけない、この状況において何ができるだろうと考え、新しい挑戦としてデイユースや日帰りお風呂をはじめたと、お話を聞かせていただきました。わたしは、そんな新しい挑戦によって、今こうして澤の屋さんとの縁がふたたびつながったわけです。

わたしだけではありません。デイユースなどの新しい挑戦をはじめられてから、これまで澤の屋さんの暖簾をくぐったことがなかった人が訪れてくれるようになったようです。お仕事の方、趣味の時間を過ごす方、中にはお人形の撮影やぬいぐるみのツアーで訪れる方も。それぞれ滞在の目的が違っても、自然と澤の屋さんに集まり、口コミが広がり、新しい縁がゆっくりと広まっていきます。この新しい縁の連なりは、世界中の旅人を魅了した理由と同じでしょう。澤の屋のご家族のあたたかいおもてなし。

澤さんのお話を伺いながら、澤の屋さんの前向きな姿勢に心打たれたとともに、今までにここで培われてきた「ご縁」を絶やすことなく繋げていきたい、素敵な宿があることを知ってほしい、そんな思いがふとおこりました。おこがましいかもしれない、しかし、実際に滞在させていただいて澤の屋さんには素敵な気配がたくさん漂っていて、わたしのようにアートや本が好きな人にきっと響くのではないだろうか、そう直感しました。アートと本と宿を通じて、コロナ禍でむずむずしている人たちに、心と体をのびのびとしていただくきっかけを作ることができるのではないだろうか。 会えない、行けない、近づけない、触れられない…そんな日々が続く中で、澤の屋さんには手触りのある縁がある。



このような想いから今回のプロジェクトを企画しました。企画書を作り、いざ澤の屋さんのもとへ。 新しい挑戦として快く企画に賛同をしていただきました。嬉泣。



もうひとつ、大切なきっかけがあります。わたしが、トリメガ研究所さんの鼎談連載の構成を担当しているポストコロナのビジネス&カルチャーブック『tattva』(ブートレグ刊、季刊です)です。2021年の4月に創刊した本誌のvol.2(2021年7月刊)の特集テーマは「にほんてきって、なんだ?」。

澤の屋さんは「にほん」を発信する場でもあり、世界中の旅人からみた「にほん」への視点が育っている場だと思います。澤の屋さんで本誌を販売することで、内と外の視点から「にほんてきって、なんだ?」を考えることができるきっかけになると考えました。さらに、本屋さんではないところで本を販売することの挑戦でもあります。この場所だからこそ売りたい本、澤の屋さんだからこそお客様に手に取っていただきたい本、それが『tattva』です。どこでもよいわけではなくて、ここであることが大切。

そして忘れてはならないアーティストのお2人。エリカ・ワードさんと境貴雄さんです。
澤の屋さんの魅力である「縁が起こる場所」そして「にほんてき」を惹き出すというコンセプトから、お2人にお声がけしました。エリカさんと境さんは、 「にほん」の魅力をそれぞれ外側と内側の視点で見つめているとともに、 お2人には「縁起」をテーマに作品を制作されているという共通点があります。お2人の作品を澤の屋さんに展示することで、より「縁起」につつまれ、前向きな縁がどんどんつながっていくと思いました。


エリカ・ワードさんはカリフォルニア出身、東京在住のアーティスト。
浮世絵やアールヌーヴォーにインスパイアされたと語ります。「内」と「外」の間に挟まれた文化的な背景を持つエリカさんの作品には、日本人も日本人以外にも親しみを感じさせながら、普段気づくことができない日本に出会うことができます。コロナ禍に描いたシリーズ『えんぎもの』は、不安に襲われるこの世界の軌道が好転する願いが込められています。ダルマや招き猫など、日本で縁起がよいとされるものたちと想像の東京風景があわさることで、まるで街が守られ、幸運を引き寄せるかのようです。




境 貴雄さんは、小さい頃からのあんこ好きが高じて、小豆や和菓子をモチーフとした作品を制作されています。日本では古来より、小豆は赤色という特徴から邪気を払う魔除けとしての役割を担い幸福をもたらす食べ物として用いられてきました。今回も小豆たっぷりな作品で、澤の屋さんから世界中を襲う大変な状況の終息を願います。

こうして、みなさまの理解とご協力のもと、もう間もなく、「ようこそ『えんぎやど』へ」が開幕します。エリカさんも、境さんも、澤の屋さんならではの新作を制作中です!!お2人が澤の屋さんからどんなアイディアを着想したのかお楽しみに。本プロジェクトを通じて、みなさまのもとに素敵なご縁が訪れますように願っています。


大変な状況が続く中での開催です。
体験しにいらしていただけたら嬉しいという想いが一番正直な気持ちですが、やはりそれはなかなか声を大に言うことはできません。しかし、このブログを読んで本プロジェクトを知っていただいたこともご縁です。とてもうれしいです。そんな一つ一つのご縁を大切に、1か月間、丁寧に運営していきます。

展覧会情報

本屋しゃんプレゼンツ
旅館 澤の屋 アート&ブックプロジェクト
ようこそ「えんぎやど」へ 

エリカ・ワード+境 貴雄

会場:旅館 澤の屋
会期:2021年9月1日(水)〜9月30日(木)
時間:月〜木 10:00~18:00、金・土日祝 10:00〜20:00
   最終日(9月30日):10:00〜18:00

※鑑賞いただける時間は澤の屋の営業時間と異なりますのでご注意ください。
※物販も上記時間内のみです。

入場料:無料 


※詳細は公式WEBページをご覧ください
https://honyashan.com/sawanoyaproject-engiyado

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