BLOG

キヌヤのおにぎりと太巻きー島根県・益田市

投稿日:

朝ごはん。昨日、松江泰治さんの展覧会に向かう途中にようやく見つけたぞ! と思って、益田の薬局で購入したラップに包まれた「カステラ風蒸しパン」(ヤマザキ)を一口ほおばる。もぐもぐ。これは果たして、panpanyaさんの漫画を読んでからずっと食べたくて仕方がない「カステラ風蒸しケーキ」(ヤマザキ)に近い食べ物なのだろうか。正解がわからなくて悔しいが、一歩近づいた気がして嬉しい。

今日は、朝から『tattva』の連載のため、トリメガ研究所さんとのリモート鼎談。今回は、島根県立石見美術館のトリメガ壱号の川西さんと実際にお会いしてお話することができた。やはり画面越しで話すより、グルーヴ感が出ることを噛みしめる。

鼎談終了後、益田駅まで川西さんが「送ってくよ~」とお声がけいただいたので、しばしドライブ。嬉しく、ありがたいことです。
夏の空がびゅんびゅんと後ろに流れていく。いつも歩いてばかりいるわたしには、車から見える景色が新鮮でおもしろい。歩かないと気づかないことはたくさんあるけれど、車に乗ることで見えてくる風景もあるのだ。「お腹空いたでしょ? 電車の中で食べるお弁当とか買う?」 と、川西さん。時刻は正午をとうに過ぎていた。確かにお腹が空いていることに気づく。「せっかくだから、コンビニじゃなくて益田のスーパーに行こう」と、車をさらに走らせてくれた。川西さんの優しい気持ちに感謝しかない。目的地は、スーパー「キヌヤ」。ドライブしてスーパーでデートなんて最高だなと、助手席で感慨深くなる。

わたしは、旅先で、その地域のスーパーに行くのがとても好きなので、必ず立ち寄るようにしている。地元の方の台所に、生活に、お邪魔するようで楽しいし、地の物の勉強になる。まさにガイドブックには載っていない、ネット検索では出会えない、生活に、日常がそこにはある。見たことのない野菜や魚、ドレッシングやご当地パン、あと牛乳なんかを見るのも楽しい。

「キヌヤ」に入ってびっくり。いきなり、キウイフルーツが入っていた箱で作られたアーチ型のゲートがポンポンポンっと設置されていた。しかも憎いのが、グリーンキウイとゴールドキウイの空き箱をうまく使っているから、色彩のリズムまで生まれている。さらに奥に進むと、キノココーナーには、紙で作られた巨大なエリンギやしめじやらがディスプレイされている。「おもしろいスーパーですね」と漏らすと、「そうなのよ。実は、youtubeチャンネルを開設しているのだけど…」「スーパーのyoutube?」 「そう。地元の生産者さんを、えびす様がお手伝いする動画」「ん? えびす様が生産者を手伝う? ん?」「おもしろいよ。動画制作は、益田のデザイン会社の益田工房さん、そして音楽はグラントワで演奏付きの講座をしていただいたこともある大口俊輔さんなの。ぜひ、後で見てみて」。なるほど、確かに、えびす様がさまざまな生産者さんや加工業者さんの元を訪ねて助太刀をしている。その様子を楽しみながら、島根の名産品、それぞれ生産者さんの顔を知ることができる素敵なプロモーション動画に仕上がっていた。映像も音楽も美しく、動画に関わったみなさんの島根/石見への愛を感じざるを得なかった。スーパーはみんなの生活に寄り添う場所だから、そうキヌヤさんだからこそ、背伸びしたりかっこつけたところではなくて、素顔の石見の魅力がより伝わってくるんだろうな。

塩むすびと惣菜がセットになったコンパクトなパックと太巻きを買った。

益田駅に着くと、駅の正面でteshが待っていてくれた。2日間、川西さんにはとてもお世話になった。久しぶりに会えたのに、もうお別れしなくちゃなのが寂しい。2人して深く頭を下げ、お礼を伝える。「また、益田で、東京で会いましょう!」 とお互いに大きく手を振り合う。川西さんの車が見えなくなってしまうと、ああ、再び寂しい気持ちになる。だけど、こうして「また会える」ことが幸せで、次会える日はいつかな~と楽しみが増えたと思おうと気持ちを切り替える。

これから、特急「スーパーおき」に乗り、出雲に向かう。人生ではじめての出雲だ。
車窓から、石州瓦の美しい街並みを堪能。電車のスピードによって線状に形を変える風景をぼんやり眺め、ここはもしかして松江さんが撮っていた場所ではないか? と、松江さんの作品と重ね合わせてみたりする。

「キヌヤ」で買った塩むすびをいただく。
太巻きはteshへ。
惣菜は2人でシェアした。ちくわの磯部揚げと唐揚げとゆで卵。
おいしい。とても。

塩むすびのしょっぱさが海のそれのようで、夏もろともぺろりと平らげた気分になった。

旅の情報

島根県芸術文化センター「グラントワ」
(「島根県立石見美術館」&「島根県立いわみ芸術劇場」)
 〒698-0022 島根県益田市有明町5−15
https://www.grandtoit.jp/museum/

キヌヤ
https://www.kinuya.co.jp/

※後日、panpanyaさんのブログを読んでいたらラップに包まれた「カステラ風蒸しパン」について言及されている!!やはり、ここにたどり着くのか。みなさんもぜひ、探してみてね~。

https://www.panpanya.com/2022/07/blog-post_16.html

-BLOG,
-, , ,

執筆者:

関連記事

\本屋しゃんの旅–尾道・山手の茶店「帆雨亭」で志賀直哉とピザトーストと珈琲と。/

そうだ、招き猫つくろう。そう思い立ったのは、昨夜。きっと、お酒を飲んでいたこともあって、いつもの「いらんことしい」気質に火がついたのでしょう。尾道の山手に位置する宝土寺観音堂にある「招き猫工房」で、招 …

\このまま飲み込まれてしまうんだ、わたし。:VOCA展2021-現代美術の展望─新しい平面の作家たち─@上野の森美術館~2021/3/30/

ソメイヨシノもちらほらとほころびはじめて、ぼんぼりが設置されはじめていた上野公園。今年の春はのんびりゆっくりお花見はできないけれど、桜を愛でたいという気配は変わらず漂い、心を穏やかにしてくれる。そんな …

本屋しゃん似顔絵

あけましておめでとうございます2021

昨年はとってもとってもありがとうございました。感謝の気持ちでいっぱいです。今年はますます、本とアートを通じて、みなさまの日々が楽しく、幸せになるような場を、時間を、機会を作ることができるよう精進してま …

\本屋しゃんの旅-おのおの倉敷の太陽に集まって。夕方のアンデルセン広場と早朝の美観地区(勝手に選書付)/

倉敷に着いたのは夕刻。尾道から倉敷は山陽本線で1時間ちょっと。学生さんやお仕事帰りの方たちに混ざって電車に揺られる。スタバの新作のなんちゃらフラペチーノがおいしいとか、テストの点数が散々だったとか、部 …

笑福亭羽光 越後道中記ー4

2022年。田んぼにピンと水が張られ、青くて若い稲の苗が美しく整列している。これから来る夏を予感させる景色。そんな季節の新潟で、笑福亭羽光師匠の落語会が2つ開催された。 6月12日(日)今時書店落語会 …