わたしたちの南方熊楠 企画記事

【企画記事】手紙7:一條宣好さま「『本屋風情』は一條さんとの出会いを思い出す日記になりました」中村翔子より(2020年2月22日)

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※この手紙は、一條さんから2月16日にいただいたお手紙本屋の息子、『本屋風情』をきっかけにして南方熊楠と出会う、の巻へのお返事です。


一條宣好さま

2月22日(土)今日はいいお天気だなあと、いつもより背筋を伸ばして歩いていたら、梅の花が咲いているのをみつけました。上を向いて歩くのって大事ですね。春を見逃すところだった。


一條さんは、お手紙が苦手だったのですか!一條さんの字は整っていてすてきだし、お手紙を書くことが身近にある方なのかな~と思っていました。
わたしは、母が筆まめなんですよ、とーっても。わたしが上京してからというもの、食材やらなにやら送ってくれる時には必ず、一筆入れてくれますし、誕生日はもちろん、季節ごとにかわいいポストカードを送ってくれます。そんな母を見てそだったからか、小さいころから、わたしも手紙を書くことが好きでした。字が大きいのも母の教えです。「字はのびのび大きく書きなさい。」今でも、わたしは、罫線内に字を納めることができません(笑)


一條さんの南方熊楠との出会い方、「本」好きとして、うるっときてしまいました。

われわれは、不思議?なきっかけで熊楠に出会っているのですね。
学問の道を歩いていたら出会ったとか、粘菌の研究をしていたら知ったとかではなく・・・ほんとうにたまたま、ひょんなきっかけとでもいいますか、だけど、わたしは興味を持って受けた講義で、一條さんは、日常であった、書籍入り段ボール開封の儀にて、出会ったというのは、偶然のようで必然だったのかもしれません。

熊楠と「本」「読書」のつながりは、一條さんだからこそビビビっと感じられたんだろうなと思います。幼少期のお母さまからの民話やむかし話を読み聞かせしてもらっていて、お家は本屋さん。そこに、南方熊楠が風来坊のようにひょいと現れたのですね。
そして、いつしか、店内には売らないコーナーとして南方熊楠に関する本がズラリと配架されている様子は、風来坊だった熊楠が、敷島書房さんに住み着いているようにも感じました。
ここにいるな~~、熊楠!という感じです。

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そうそう、一條さんと熊楠の出会いを知り、先日、敷島書房さんに遊びに伺った際に『本屋風情』を購入いたしました。この本は、絶対にここで購入しないと!と。今、ゆっくりゆっくり読み進めています。

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本ってどこで買っても、中身は一緒かもしれないけれど、「どこで」、「どのように」買ったかという「体験」も含めて、「本」なのかなと感じる今日この頃です。
本を読む時って、買った時のシチュエーションや気持ちが呼び起こされませんか?本がそのまま日記みたいだな~って思うのです。
これから、この先ずーっと『本屋風情』を手に取るたびに、わたしは、一條さんとはじめて会った時のこと、そして、一條さんが熊楠に出会ったエピソードを思い出すんだろうなあ。

最後になりましたが、先日は『在野研究ビギナーズ』の刊行記念の荒木優太さんと田村義也さんのトークイベント「南方熊楠に学ぶ、勝手にはじめる研究活。」にご参加いただきありがとうございました!!!このイベントのために、下北沢にお越しいただけたなんてとっても嬉しかったです。それにもかかわらず、お察しの通り、あの日は絶不調で・・・みなさまにお聞き苦しい声と、お見苦しい姿をさらしてしまったと思うのですが、なんだか、トークの内容はもちろん、登壇者のお2人、関係者のみなさま、そしてお客さまがとーーーーってもあたたかくて、最後のほうは、体調不良なんぞどこへやらでした。たくさん元気をもらえました。一條さんにも楽しんでいただけていたら嬉しいです。


外が気持ちよさそうなので、お散歩でもしてこようと思います。
実は、近所の荒川沿いの土手からも富士山が見えるのですよ。
富士山を見ながらのお散歩とジョギングは格別です。

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なんだか、新型のウィルスで世界が騒然としていますね。
くれぐれもお気をつけてください。

中村翔子

【往復書簡メンバープロフィール】

一條宣好(いちじょう・のぶよし)
敷島書房店主、郷土史研究家。
1972年山梨生まれ。小書店を営む両親のもとで手伝いをしながら成長。幼少時に体験した民話絵本の読み聞かせで昔話に興味を持ち、学生時代は民俗学を専攻。卒業後は都内での書店勤務を経て、2008年故郷へ戻り店を受け継ぐ。山梨郷土研究会、南方熊楠研究会などに所属。書店経営のかたわら郷土史や南方熊楠に関する研究、執筆を行っている。読んで書いて考えて、明日へ向かって生きていきたいと願う。ボブ・ディランを愛聴。https://twitter.com/jack1972frost

本屋しゃん似顔絵

中村翔子(なかむら・しょうこ)
本屋しゃん/フリーランス企画家

1987年新潟生まれ。「本好きとアート好きと落語好きって繋がれると思うの」。そんな思いを軸に、さまざまな文化や好きを「つなぐ」企画や選書をしかける。書店と図書館でイベント企画・アートコンシェルジュ・広報を経て2019年春に「本屋しゃん」宣言。千葉市美術館 ミュージアムショップ BATICAの本棚担当、季刊誌『tattva』トリメガ研究所連載担当、谷中の旅館 澤の屋でのアートプロジェクト企画、落語会の企画など、ジャンルを越えて奮闘中。下北沢のBOOKSHOP TRAVELLRとECで「本屋しゃんの本屋さん」運営中。新潟出身、落語好き、バナナが大好き。https://twitter.com/shokoootake


【2人をつないだ本】

『街灯りとしての本屋―11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』
著:田中佳祐
構成:竹田信哉
出版社:雷鳥社
http://www.raichosha.co.jp/bcitylight/index

※この往復書簡は2020年2月1日からメディアプラットフォーム「note」で連載していましたが、2023年1月18日より本屋しゃんのほーむぺーじ「企画記事」に移転しました。よろしくお願い致します。

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