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\本屋しゃんおすすめ展覧会:「柏飛行場と秋水 – 柏の葉 1945-2020」(企画:八谷和彦)@柏の葉 T-SITE〜12/20(勝手に選書付)/

投稿日:2020-12-19 更新日:

本屋しゃんが住む街「北千住」は、つくばエクスプレスが通っている。略称「TX」。ただし、わたしはあまり乗ったことがない。「つくば」へ、粘菌の標本を見に行くぞ〜〜〜!縄文時代の骨を見に行くぞ〜〜〜!という時に乗るくらいだ。粘菌の標本も、縄文時代の骨も、日常ではないので、なかなか乗る機会がないのです。


そんな、TXこと、つくばエクスプレスに乗って、降り立ったのは「柏の葉キャンパス」駅!初!



目的は、「柏飛行場と秋水 – 柏の葉 1945-2020」展。


わたしは、飛行機に乗るのは好き。離陸するときの「ふわっ」は、毎回儀式のようで、「ふわっ」をちゃんと感じなくちゃ!と、精神統一をする。みるみる小さくなる地上にわくわくと寂しさが入りまじる複雑な気持ちも好き。飛行機を何度体験しても、この儀式と気持ちは変わらない。

ふと、空を見上げる。飛行機の姿に見とれてしまう。かっこいいなあ。どこに行くんだろう。わたしもどこかに行きたいなあ。

わたしと飛行機の距離感はこんな感じ。つまり、のめり込むほど愛しているわけではないけれど、どちらかといえば好きで、好奇心を揺さぶってくる存在。そんな感じ。

今回の展示は、かつて柏の葉エリアにあった飛行場と、B-29を迎撃するために作られた「秋水(しゅうすい)」と名付けられた日本初のロケット有人機が主人公。「ねえ、ねえ、飛行機との距離感が先ほどのような感じのあなたには、いささかディープすぎる内容ではございませんの?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。ところがどっこい、とても楽しめました。


本展を企画されたのは、メーヴェの実機を作るプロジェクト《OpenSky》でおなじみのアーティスト・八谷和彦さん。そんな八谷さんが、ご自身の機体を保管していた倉庫が、もともと柏飛行場があった敷地内だった!という偶然がきっかけとなって、この展覧会のプロジェクトがはじまったとのこと。今、自分が立っているこの道、踏みしめている大地の歴史をたどると自分とつながる要素がある!なんて、ドキドキしちゃいます。そんな偶然を八谷さんは汲み取って、大切にして、「歴史の痕跡」をたどりはじめたのですね。

つまり、本展は、飛行機と飛行場を入口に、柏の葉エリアの歴史を知ることができるのです。当時のモノクロ写真をカラー化して展示をしていたり、小林エリカさんと柏飛行場と戦争跡地をぶらりめぐっている動画の上映など、とても親しみやすい展示でした。


写真のカラー化はびっくり!木村秀政さんが柏飛行場で撮影した飛行機やパイロットの方々、慰問に訪れた女性の写真などなどが、いきいきと蘇っていたの!モノクロだと、あくまでも「過去」はこんな感じだったよ〜、と展示されている「資料」のひとつとして触れていたのだけど、カラー化された写真を見ると、急に単なる「資料」ではなくなるの。当たり前のことなんだけど、「ああ、この人たち生きていたんだ」と気づく。すると、飛行機や飛行場も単なるモノではなくて、そこに関わった人々の想いや人生、ドラマが見えてきて、有機的な感触を帯びてきた。感動。写真をカラー化したのは「記憶の解凍プロジェクト」をされている渡邉英徳さん。片渕須直監督が監修。豪華。

街歩き動画は、内容は濃いくせに、ゆる〜くてのんび〜りした空気も流れていて、まったりと見ることができました。ぶらり旅はいいですよねえ。動画見てたら、同じ場所を散歩したくなってきました。



関連書籍や八谷さんの選書コーナーがありました。一般流通をしていない本も販売されていましたよ〜。貴重!展示を見てふつふつと沸いた興味関心を「本」でさらに深めることができる、最高の流れ!本屋さんで展示をする醍醐味ですね。

飛行機好きな方にも、歴史好きな方にも、そしてわたしのようにアートと本好きにも刺さる展示です。柏の葉はお散歩するだけでも気持ちいいエリアなので、展示を見て、この地の歴史に触れてから、ぶら〜りお散歩したら、違った景色が見えてくるかもしれませんね。ぜひ。



八谷さんのnoteに「超」がつくほど、本展に関する充実した記事が掲載されているので、展覧会の予習に復習に、また、柏の葉エリアの歴史について知りたい!という方は、ぜひ覗いていただきたいです。

https://note.com/hachiya

 

 

本展の帰り道。
ふと、祖父のことを思い出した。
祖父も戦時中は飛行機に乗っていて、なかなかの腕前だったとか。もしかしたら航空会社に就職をしていたかもしれないというエピソードを聞いたことがある。

わたしが知っている祖父は、大の読書家で、書道家で、小説家で、散歩の達人で、この世で一番かっこいい人だった。わたしが小さい頃に亡くなってしまったから、おぼろげな記憶しかないのだけど、大のおじいちゃんっこだった。今回の展覧会に触れたおかげで、《祖父の痕跡》を辿ってみたいなという気持ちがおこってきた。昨日までは、全く知らなかった柏の葉の歴史が、わたしの個人史を掘り下げるきっかけになる不思議さよ。

 

 

 


展覧会情報

柏飛行場と秋水 – 柏の葉 1945-2020
会期:2020年12月7日(月)〜12月20日(日)
時間:9:00〜21:00(最終日〜17:00) 
処:柏の葉T-SITE 1F(千葉県柏市若柴227-1)
※ワンちゃんOKなカフェ「Shiroinu cafe」の隣のスペースです。

https://www.kashiwa-no-ha-af.info/

勝手に選書。

誰に頼まれたわけでないけれど、本展からイメージを膨らませて選書をしました。

『ぼくがとぶ』(佐々木マキ、絵本館、2013)
『空の絵本』(長田弘&荒井良二、講談社、2011)
『きみが住む星』(池澤夏樹&エルンスト・ハース、文化出版局、1992)

『人間の土地』(サン=テグジュペリ、新潮社、1955)


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