麻生知子さんの絵本『こたつ』(福音館書店)がとてもお気に入りになりました。
そこで、他にも絵本を読んでみたいな〜と調べていたら……麻生さんと武内明子さんが「ワタリドリ計画」というアートプロジェクトをされていることを知る。もはや風来坊タイプで、旅好きのわたしにとって「ワタリドリ」という名のプロジェクトに興味が惹かれないわけがない。
しかもですよ!!今、まさに東京都現代美術館の企画「MOT サテライト2020」で、ワタリドリ計画が展示中とのこと。同企画は、美術館が周辺の地域とつながって、街の魅力を掘りおこすぞ〜!というシリーズ。街の真ん中に美術館があって、そこを拠点に、さまざまななアーティストさんの視点で、方法で街の魅力が発掘、発信されていくって、ステキだなあ。その街に住んでいる人でも気づいていなかった街の表情にも出会えるんだろうなあって想像できる。
今回のサテライトのコンセプトは「ハイファイブ」そして「こころのこえ」。
嗚呼、なんてタイムリーなのでしょう。本屋しゃん宅から東京都現代美術館へは、東京スカイツリーラインを使ってひょいと行ける距離感だ。
次の瞬間にはすでに玄関のドアを開けて清澄白河へと向かっていた。
思い立ったらすぐに動いてしまう落ち着きのなさよ。風来坊よ。
麻生さんと武内さんのお2人は、展示の場所と作品の題材を求めて日本全国を飛びまわる。展示する場所が決まったら、その土地を旅して、そこでの体験をもとに、展示のテーマを決めて、作品を作って、展示をするんだって。そんな姿と様子は、まさに渡り鳥があたたかい場所や食べ物を求めて次々と飛んで旅するかのよう。だから「ワタリドリ計画」。
場所を大切にする作品制作のかたち。渡鳥の行く先はもしかしたら偶然かもしれないけれど、その偶然はいつしか、この場所で作品制作すること、この場所で展示することへの必然性に変わって、とても強くなると思う。いいなあ。
東京都現代美術館での展示は、美術館が位置する「清澄白河」をはじめ、深川界隈が舞台でありテーマ。ミュージアムショップ ナディッフのホワイエと、地下1階の情報コーナーの2箇所で展示されていたよ。
窓ガラスに一面には、深川界隈のカルタがずらり!!
読み札のイラストレーションとそこに書き添えられたお2人のつぶやきを読んでいると、まさに一緒に旅している気持ちになれちゃうの。旅先っていろいろ心の中でつぶやいちゃいますよねえ。わかる。ほっこりしてくる。
絵札も見逃すなかれ、というかよ〜く目を凝らしてほしいの。これは写真をパシャりと撮っただけではないのですよ。これは、「ワタリドリ計画」のお2人の共同制作作品「手彩色絵はがき」なの。モノクロで撮影した写真に油彩などで彩色をしているの!!
なんでしょうか。この気持ちは。写真と絵が溶け合って、過去と現代が溶け合って、いつのどこにいるのか不思議な気持ちになる。旅をしたのは過去だからモノクロの世界かもしれないけれど、旅を思い出しているのは今だからカラーの世界。旅をしている時は写真でパシャりと、その一瞬を記録をしたけど、絵を描くように、色や形、その時の空気なんかをゆっくりじっくり思い出す。あっちに行ったりこっちに来たり、渡り鳥だなあ。
カルタだけじゃないよ。木彫りもあるし、陶芸もあるし、お2人の絵画作品もあるし、いろんな素材を通じて、深川旅の思い出が立体的に浮かび上がってました。もう、楽しい楽しい。
地下にはこれまでに旅されたところで制作された「手彩色絵はがき」と「こたつ」!こたつ〜〜〜。わたしの地元・新潟も旅されていて、勝手に親近感。
ガイドブックを広げれば、深川の街のオススメを知るのに困ることはない。
だけど、麻生さんと武内さんの「こえ」を通じて、紹介してもらうことで「オススメ」は単なる情報ではなくなって、途端に生き生きとしてくる。血が通うかのよう。情報を編集する上で、個々人の「こえ」は不要なものとして、いらないものとして切り捨てられてしまうことが多いでしょう。だけど、そこにこそ、拾うべき感動とか、感触とかが漂っていて大切だよなって思った。
ちなみに……芭蕉そばが無償に食べたくなったので、お2人の足跡をたどりながら、また近々、深川界隈をお散歩してみようと思います。
最近、川柳をはじめたわたしですので、と言っても、今だに川柳と俳句との違いもわかっていませんが……芭蕉さんに挨拶します。
ナディッフさんで手彩色絵はがきと『ワタリドリの本』を購入し、お家でも旅の続きを楽しみます。
追伸
そういえばさ、麻生さんの絵本『こたつ』の隅々に目をこらすと「渡り鳥」がいるんだよねえ。にくいな〜〜〜。
展覧会情報
MOTサテライト2020
ハイファイブ-こころのこえ
会期:2021年1月13日(水)- 2月14日(日)
処:東京都現代美術館
入場無料
※詳細は美術館のWEBサイトをご覧ください
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-satellite-2020/
ワタリドリ計画について
ワタリドリ計画 公式WEBサイトはこちら
http://www.wataridori-keikaku.net/index.html
手彩絵葉書がズラ〜っと拝見できたりと、楽しいです^^