稲村ヶ崎の駅に降りると、すがすがしい空が広がっていた。
少し歩くと、道路の向こう側に海がひょっこり顔を出す。
空と海の境目がわかならいくらい、それらは溶け合って、ああ、ここは地球だなあと、ふと思い出したように感じた。
わたしの今回の鎌倉散歩の目的は、
康夏奈さんのアーカイヴ展「森のいろ、海のいろ」
2020年11月21日~2020年11月29日
Simple House
https://arttank.co.jp/events/1365
現在、東京都庭園美術館で開催中の「生命の庭−8人の現代作家が見つけた小宇宙」展で山口啓介さんの作品制作をお手伝いする中、同展出品作家の康夏奈(こう・かな)さんを知ったの。
以前は吉田夏奈さんのお名前で活動をされていて、2016年から康夏奈さんのお名前で活躍されていたの。今、思い返せば、あの時のあの作品、あの作品、あの作品も!夏奈さんのだったのかーと、合点がいくのですが、ちゃんとお名前を認識したのは、「生命の庭」展がきっかけでした。
「生命の庭」展で、作品を拝見し、めっちゃ好きだ!最高にパワフルな作品だ!そしてお茶目でもある!見ていて楽しい!作品の中に潜りたい!と、わたしのハートはまんまとズキュンと射抜かれた。2020年2月、同展の準備中に44歳で逝去されたことを知り、寂しくなった。
言葉に出会う前に、作品の説明をだれかから聞く前に、純粋に、目にも心に訴えかけてきた作品に出会えたことが、嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
言葉はいらない、作品の強度たるや。
そして、この度、夏奈さんが最期の日々を過ごされたという鎌倉市稲村ヶ崎にてアーカイヴ展が開催されることを知り、11月22日(いい夫婦の日!)、会場である稲村ヶ崎の海辺のギャラリー「SIMPLE HOUSE」さんにお邪魔したの。シンプルハウスかあ、わたしの部屋とは真逆だな……とか思いながら。
1階〜3階を使ってたーくさんの作品が展示されていました。寝室とかお風呂場にも!室内で見ているはずなのに、海の音が聞こえ、海風が聞こえて、潮の香りが漂い、山の暖かさと冷たさ、緑の青臭さと、石ころの重さ、そんな地球の感触が伝わってきた。
それもそのはずかもしれない。夏奈さんは、写真を見ながら描くことはせず、実際に山に登り、海に潜り、自分がそこでした「体験」を作品にしてい他とのこと。なるほど、景色や風景を模写しているのではなく、体験が形になっているから、作品がよりみずみずしくて、深呼吸をしたくなる感覚になるのかと、納得です。
嬉しいことに、夏奈さんのアシスタントさんに、生前の様子や生き様のお話をたくさん聞かせていただくことができ(多謝&嬉しい)、やはり、作品から滲み出るパワフルさ、そのままの人だったんだなあって、改めて感じましたな。精一杯生きた人だなって。
夏奈さんの作品に触れると、よしーーー生きるぞー宇宙にダイブするぞー、見えない世界を見に行くぞーーー、そして体がうずうずと、どこかに行きたくて仕方なくなる……超ポジティブに心も体も動き出す。
地球を宇宙を俯瞰する視点も、土の中に、水の中に潜っていく視点も、ヒト以外の生き物たちの視点も持ち合わせていた夏奈さん。時に望遠鏡のように、時に顕微鏡のように、この世界を見ていたんだなあ。
作品をひとつ購入しました。
大好きな作品。
大切にします。
そうそう、忘れてはならないのは、本展の作品販売により夏奈さんの作品集を制作する予定とのことです。すばらしい。アーカイヴとして遺すこととても大切だと思います。展覧会では、スケッチやドローイングも購入することができますよ。夏奈さんの作品がおうちにあると、いつでも地球にダイブできそう。
展覧会会場を出ると、そこにはさっきと変わらず稲村ヶ崎の海が広がる。
だけど、さっきよりちょっと深く、でっかく、輝いて見えた。
展覧会情報
康夏奈 (吉田夏奈)展
森のいろ、海のいろ
会期:2020年11月21日~2020年11月29日
会場:SIMPLE HOUSE
鎌倉市稲村ガ崎1-15-7
https://arttank.co.jp/events/1365/
展覧会情報
生命の庭 −8人の現代作家が見つけた小宇宙
2020/10/17(土)– 2021/1/12(火)
処:東京都庭園美術館
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/201017-210112_GardenOfLife.html